初めましてのご挨拶 びえり

皆様初めまして
本稿をお読み頂きありがとうございます。

30年前の作品である初代マクロスが大好きで、思い付きでSSブログを始めてしまいました「びえり」と申します。


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テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

『エデンの東』 目次

ニューエイジ達の小さな冒険

ハイ・スクールはダンステリア


 1 「早瀬総司令、あなたを逮捕します」

 2 惑星エデンは西暦2012年に

 3 「お兄ちゃん、こっちこっち!」

 4 エデンの首都へと向かうチューブトレイン

 5 惑星エデンの首都“アイランド・シティ”。

 6 学校というのは閉ざされた社会の縮図だ。

 7 次の授業のために教室を移動しようと

 8 新しい環境というものは

 9 クラブ・イエローがある区画は

 10 ノースポート校とサウスポート校は

 11 All the children say

 12 I don't want you and I don't need you

 13 

 14 

 15 


テーマ : 創作・オリジナル
ジャンル : アニメ・コミック

チョコと僕らの水曜日 4

輝は放課後の校舎でマックスを探し出すと、女生徒から預けられたチョコレートを手渡した。
当然のように隣りにいたミリアには無茶苦茶睨まれたが、マックスは「ありがとうございますと伝えてください」と堂々と受け取ってくれた。高校生のくせにティアドロップ型のサングラスなんかをしているキザ野郎だが、こいつのこういう所は俺でも惚れる。

「先輩もミンメイちゃんから貰いました?」

マックスの一言に、輝は怪訝な顔をした。

「は?ミンメイがくれる訳ないだろ」
「あれ?おかしいな」

マックスははてと顎に手をあてる。そのマックスの脇腹をミリアが肘で突付いた。

「なんだ?どうした?」
「あ、いえ、何でもないです」

マックスはニコリと笑う。その横で、いつもの様に無表情なミリアが「そうすると一条先輩はチョコレートなしか」と呟いた。輝は思わずムッとなる。

「おいおい、誰がチョコなしだって…」

言いかけた輝の肩をポンと肩を叩く者がいた。振り向くとそこには、巨体の男子が涙を流しながら立っている。

「ですよね!一条先輩!お、俺も、俺もゼロなんですぅぅ〜」
「か、柿崎?!」

厳つい四角顔に眉なしの三白眼。見た目だけなら立派なヤンキーの柿崎速雄は、マックスと同じ1年生の後輩だ。何故か最近輝はコイツに妙に慕われていて、それが微妙に気に掛かっている所だった。

もしかしてだが、俺はコイツに同類と思われているのだろうか?こいつは今、「ですよね」と言いやがった。つまり、コイツは俺のことをチョコなしの0個、“0の人間”だと思っているという訳だ。

はっきり言って心外である。俺だって決してイケメンという訳ではないが、お前クラスまで落ちぶれたくはない。
輝はそう思いながら冷たく柿崎を突き放した。

「柿崎、お前と一緒にすんな」
「ええ〜!先輩そりゃ酷いっスよ!」
「俺とお前、どちらかとキスしなくちゃならないような状況になったとしたら、きっと女子は『あなたの方がマシよ!』とか言って俺とキスをするに違いない」
「?何すかそれ??」
「いや、何でもない」

俺は咳払いをしながら、ポケットに隠していた赤い箱を取り出す。緑のリボンが掛かったその小箱を見て、その場の3人は目を丸くした。

「え、先輩がチョコ…⁈」
「どうだマックス、恐れ入ったか」
「それはどこで買ったのだ」
「…ミリア、お前顔しか良い所無いよな」
「そんな!先輩!!」
「そういう訳だ柿崎。悪いな」

輝は得意満面になると、「じゃあな」と肩で風を切って廊下を歩き出した。その後ろ姿をマックス、ミリア、ハンカチを噛む柿崎の3人が呆然と見送る。

「マックス、あれはミンメイのあげた物では無いのか」

ミリアがマックスに耳打ちする。東ヨーロッパ・スラヴ系のミリア・ファリーナは細身の超美人だ。まるでスーパーモデルのようなスタイルをしていて、日本の学生服を着ているとまるでコスプレをしているようにさえ見えた。
そのミリアの言葉に、マックスは不安そうに頷く。

「うん、多分違うと思うよ。…さて、どうしたものか」

思案顔のマックスなどに気付かず、人生で初めて貰った「バレンタインのチョコレート」に浮かれた輝は、鼻歌を唄いながら家路を急ぐのだった。




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チョコと僕らの水曜日 3

「悪いわね、待たせてしまって」

そう言って、早瀬未沙は輝に向き直った。彼女が静かにテストの採点に没頭する姿をボーッと眺めていた輝は、急に振り向かれて慌てて視線をそらす。

「お、おう」

妙に偉そうに返事をする輝。それを余裕のある笑みで受け止める未沙の顔を見て、輝はなんだか自分が恥ずかしくなるような想いだった。
我ながら子供っぽい態度だと思う。しかし、歳上の女性にどういう態度で接していいのかまるで分からない。

目の前にいる女性は、とても大人びた表情をしていた。落ち着いて、柔らかな雰囲気。たった2つ歳が違うだけでこんなにも自分とは違うものなのだろうか。
シンプルなライトベージュのスーツに、襟の広いホワイトシャツを着ている。細い首元がチラリと見える開襟タイプだ。タイトスカートに包まれた脚を、膝を揃えて斜めに置いている。とても綺麗な脚だった。

「呼び出された理由、分かる?」

未沙は幾分笑みを含んだような微妙な表情で輝に問いかける。輝は「さてね」とそっぽを向いたが、心当たりは有り有りだった。

「これの説明を聞きたかったの」

未沙が卓上の紙片を一枚手に取る。今日の午前中に行われた英語の小テストだ。

「英語の得意なあなたが、こんな解答を寄越すだなんて不思議だと思わない?」

未沙はテスト用紙を指し示す。テストの解答欄は全て未記入、白紙解答だった。
輝はとぼけて返事もしない。未沙は困り顔でため息を吐く。

「私はただの教育実習生で、長年あなた達を指導なさってこられた先生方には遠く及ばないわ。でも、だからと言ってこれは貴方のためにならないんじゃない?」

真剣な眼差しで問い掛ける未沙。本気で気に掛けてくれているようだった。
しかし輝は素直になれない。「別に、分かんなかっただけですよ」と顔をそらすだけだ。

海外生活が長かった輝にとって、高校の英語テストなど簡単なものだ。他の教科はほとんど赤点だったが、英語だけは成績が良かった。
しかし、今回は何も記入しなかった。理由は目の前にいる人だ。

「大体大袈裟でしょ?英語のテストなんて何の役にも立たないもんだし」
「そんな事はないわ」

鼻で小さく息を吐きながら、未沙は腕組みをした。袖から覗く尺骨が、何故か輝の胸をドキリと鳴らした。

「小さな日々の積み重ねが大切よ。こうした定期考査がある事で、自分の現状が把握できて進路修正が出来るの。得意な分野ほどそうした事が大事なのよ」
「でも俺、英語話せるし」
「正しい文法を学ぶのも重要なことだわ」
「いらないよ」

輝はあっさりと切って捨てる。この辺は、それなりに海外生活を送ってきた自分の経験が強気の原因となっていた。

「大体さ、学校の勉強って何なんだ?英語だけじゃない、微分積分やイオン結合の知識なんて将来本当に必要なのか?オタク、俺より歳食ってるけれど実生活で使ったことある?」

輝は未沙の鼻先に指を突きつけてそう問うた。今まで、この質問をされて明確な答えをくれた教師はいなかった。どいつもこいつも「それは屁理屈だ」とか「世の中がそう決まっているから」などと適当な返事で誤魔化そうとする。義務教育なら中学生までで終わっている筈だ。今、自分が日本の高校生として退屈な毎日を過ごすことに一体何の意味があるというのだろう?
それは、輝が常々疑問に思っていたことだった。しかし答えはどこにも転がっていない。
親父が事故死する直前に「輝、お前は日本へ帰って学校へ通え」と言い残していなかったら、今すぐこんな所はやめて海外でレース・パイロットになるために働きたかった。
輝には夢があったのだ。それは父親の跡を継いで、パイロットになる事だった。

輝の問いかけに、未沙は一瞬鼻白んだように見えた。しかしすぐに笑顔に戻り、輝の質問を反芻するかのように何度も頷く。そして、静かに口を開いた。

「一条君は、他の同級生たちよりほんの少し大人なのね」

ほっとけよ、と輝は思った。そりゃあ、両親を亡くし、天涯孤独の身になりゃあ誰だって大人ぶった生き方になるさ。だからこそ自分なりに今の境遇を納得させてくれる返事が欲しいといつも願うのだが、所詮誰もそんな都合の良い答えを持ち合わせてなどいないのだ。ましてこんな”女子大生もどき”に俺の気持ちが分かってたまるか…そう思った輝だったが、未沙は冷静に輝の疑問について語り始めた。

「勉強は嫌い?」
「別に。必要性を感じないだけさ」
「じゃあ、あなたの言う”役に立たない”微分積分を誰がどういう理由で編み出したか知ってる?」
「は?そんなの知る訳ないだろ」
「そうよね」

未沙はクスリと笑う。

「積分法の原点はね、紀元前1,800年にまで遡るの。エジプトのピラミッド建設にだって使われていたのよ。信じられる?現代の高校生が四苦八苦している学問を、4,000年前の人たちはもう実生活の中で活用していたの」

えっと輝は顔を上げる。意外な話の内容に戸惑い気味の少年を、”女子大生もどき”は楽しんでいるかのようだった。

「西暦1,200年頃にはインドで微分法が生み出されたわ。今から800年前の事よ。800年前ってどんな時代か分かる?日本はようやく武家社会が生まれた程度の時代だわ。まだ源頼朝が幕府を開いたとか、そんな頃の話よ」

へーと会話の流れを忘れて輝は感心する。未沙はそんな輝の素直な反応が嬉しかったらしい。そっと手を伸ばすと、輝の両目をその細く白い両手で覆った。突然のことに驚いた輝だが、特に抵抗したりはしなかった。

「目を閉じて、想像してみて。この微分積分ひとつがあなたの持つ教科書に載るまで、一体どれだけの壮大なドラマがあったのかを。人類の歴史4,000年分がギュッと凝縮されたこの小さな計算式が生み出されるまでに、一体どんな人たちが努力し、研鑽し、想いを積み重ねていったのかを」

正直に言うと、輝としてはそんな事を想像するどころの話ではなかった。
自分の顔に触れる未沙の手のひらの感触に、17歳の少年の心臓は今にも爆発寸前の状態だったのである。
とてもすべすべしていて、ほんのりと温かい。そして少し良い匂いがする。
目を塞がれて視覚以外が鋭敏になっている輝にとって、歳上の女性のその感触はあまりにも刺激が強すぎた。

輝が密かに鼻息を荒らしくていると、ふいに視界が明るくなる。瞼を開くと、両手をどかした未沙の顔がすぐ目の前にあった。輝は心臓が口から飛び出すかと思った。

「人類の叡智というのは、とても長い年月をかけてようやく生み出されたものなのよ。それをたった十数年の学生生活で学べるなんて凄いことだと思わない?私はこれに気づいた時、感動して夜も眠れなかったわ」

未沙は笑った。前歯が白くて綺麗だ。
特徴的な翠緑色の瞳が輝を捉える。とても深くて、濃い光を湛えた双眸だった。

「だからね、一条君」

名前を呼ばれて我に返る。輝は真赤になった顔を背けた。

「勉強というのは、あなたが21世紀の現代人になるための儀式なのよ。これを経過して、初めてあなたは”現代人”になれるの。昔の人たちが多大な努力の末に作り上げてくれた『人類の英知』の後継者として、あなたはついに認められるのよ」

その話を聞いて、輝は不思議な高揚感に包まれる。もしかしたら話の内容よりも、この人の口から語られたからなのかも知れないが、今までこんなに真剣に自分の疑問に応えてくれた人は他にいなかった。

「だから、勉強頑張ろう?」

未沙がポンと輝の肩を叩く。輝は必死に自分を取り繕って「お、おう」とぶっきらぼうに答えた。
密かに心中で輝は反省する。今度から、この人の授業は真面目に聞こう。英語も、ちゃんと文法から学び直そう。

「分かってくれたなら大丈夫。次のテストは期待してるわ」

未沙はそう言って、輝のクシャクシャの癖っ毛頭を撫でた。輝はもう限界で、このままだと卒倒してその場にぶっ倒れるか、目の前の歳上の女性を興奮のまま抱きしめてしまいそうだった。

「わ、分かったよ」

そう言って、輝は逃げるように立ち上がる。床に置いていたペラッペラの学生カバンを乱暴に掴むと、足早に準備室のドアへと向かった。その後ろから未沙が「あ、一条君忘れ物よ」と声をかける。
振り向くと、未沙は右手に小さな箱を持っていた。グリーンのリボンが掛かった、平べったい手のひらサイズの赤い箱。

「みんなには内緒よ」

そう言って、未沙はウィンクした。輝は耳まで真っ赤になりながら、未沙の手からその箱を粗雑に奪い取る。
そのまま駆け出すように扉から出ていく。そんな男子高校生の後ろ姿をクスクスと眺めていた未沙が「さて、仕事を終わらせなきゃ」と机に向き直ったところで、輝が準備室に戻ってきた。

「なあに、どうしたの?」

未沙が優しく聞くと、輝は少し口ごもった後に「その…テスト、悪かったよ」とそっぽを向いたまま呟いた。そして再び後ろも見ずに駆け出す。
一陣の風のように走り去る輝。そんな少年の言動が可愛らしく感じられて、未沙はしばらく顔から笑みが取れなかった。




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チョコと僕らの水曜日 2

「あ、一条君!」

放課後、教室を出ようとした所で、輝は同じクラスの町崎健一に呼び止められた。
町崎はいわゆるオタク系男子というヤツだ。勉強はそこそこ、運動はまったくの音痴という典型的なイケてない男子高校生である。
良くは知らないが、アイドルの追っかけなんかをやっているらしい。
特に仲が良い訳でもないのでそんなに話した事もない。意外な相手に声を掛けられて、輝は訝しそうに振り返った。

「なんだよ、町崎?」
「さっき先生が呼んでましたよ。外語クラスの準備室へ来てくれって」

町崎の言葉に、輝はゲンナリとした表情になる。一方、町崎はと言えば恍惚とした表情で両手を揉みしだいていた。

「ああ、あの清楚で可憐な先生が、この僕に声を掛けてくださったんだ。町崎くん、町崎くんって!この僕の名前を覚えていてくれただなんて…」

「はいはい、そりゃ良かったね」

輝は適当に片手をヒラヒラとさせてさっさとその場を後にした。
今日は最悪な一日だ。学園のアチコチで新しいカップルの誕生という嫌な瞬間を目撃してしまった。
こんな日は、とっととウチに帰って部屋でエアレース・チャンピオンシップのビデオでも見るに限る。
ただでさえ、夕食時はきっとミンメイの自慢話を聞かされるハメになるだろうし…

にも関わらず、帰路につく直前に教師の呼び出しを受けてしまった。教師と言っても、相手はいわゆる教育実習生だ。肩書きこそ先生なんて呼ばれてるが、実際はただの大学生である。聞けば自分と2つしか歳も違わないと言う。

「中高と飛び級したの。いま大学三年生よ」

あまりに若いので、生徒からその事を質問されるとサラリとそう言ってのけた。
よほど優秀なのだろうか。マックスら海外からの留学生とも普通に他国言語で会話していた。
留学生を積極的に受け入れているこの幕露須学園へ実習にやって来るくらいだから、それなりに外語学科の自信はあるに違いない。

「嫌味な女」

輝はフンと鼻を鳴らす。英語しか取り柄のない輝は、自分より英会話が下手な英語教師を授業中からかって良く遊んでいた。
それで予め目を付けられていたのか、教育実習生は初日から積極的に輝に絡んで来た。授業中の問題は輝に当てまくるし、小テストの採点も無茶苦茶厳しい。細かな文法もいちいち指摘されるし、現地のスラングを独学で学び育った輝にとっては何とも厄介な相手だった。

「つーか会話が成り立ってるんだから別にいーじゃん」

輝はそう思ったが、あまりに相手が綺麗なクイーンズ・イングリッシュで話して来るので、何となく気圧されていつも反論出来なかった。
この相手に比べたら、自分の英語など猿の鳴き真似のような気分にさえさせられた。


「呼び出して悪いわね、一条君」

準備室の扉をくぐると、教育実習生の先生は一人でテストの採点をしていた。

「少し座って待っていてくれる?すぐ終わるから」

教育実習生としてやって来たこの女子大生は、恒例のごとく男子高校生からは人気の的になっていた。
日本人としては珍しいダークグリーンのヘイゼルの瞳、色素の薄い天然のライトブラウン・ヘア。
そしてまるで陶器のように白く滑らかな肌は、まるでその人が異国の地からやって来た異邦人であるかの様に、興奮した少年たちの目には鮮やかに映っていたのである。

準備室の窓から差し込む夕陽を受けて、その異邦人…早瀬未沙は全身オレンジ色に染まっている。机に落ちかかる長い髪をかき上げ、指先で細長い耳へそっと掛けた。
その静かな仕草が、見つめる17歳の少年の胸を不思議な息苦しさで締め上げる。

人気のない放課後の学校。二人きりの準備室。テストを採点するサラサラとした赤ペンの音だけが、心臓の高鳴りを抑えられない輝少年の耳を優しく穏やかに撫でていた。




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