初めましてのご挨拶 びえり

皆様初めまして
本稿をお読み頂きありがとうございます。

30年前の作品である初代マクロスが大好きで、思い付きでSSブログを始めてしまいました「びえり」と申します。


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テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

残るもの、残されるもの

「キム」

呼び掛けると、彼女が振り向いた。青灰色の瞳が、どこか大人ぶった笑みを浮かべている。

「あら、今日は早いんですね」

早朝のMCC(マクロス指令センター)。セクション2の統括を務める彼女は、いつも誰よりも出勤が早い。交代勤務で入れ替わるスタッフの一人一人をチェックしながらフロアを回る彼女を、ビッグ・ウィンドゥから差し込む朝日がふわりと浮き立たせていた。


キム・キャビロフはアジア人の母とロシア人の父の元で育った。しかし幼い頃に亡くなった両親は養父母で、本当の両親は不明なのだそうだ。戦争の影響で正確な血筋や出身地までは分からない。
でも彼女の顔立ちを見るに、恐らく純粋なアジア系なのだろう。一見すると日本人の自分と大差ないようにも見える。

性格は明るい方だ。一言で表すならちゃっかり者だろうか。飲み会でいつの間にか支払いをせずに消えてしまうようなタイプ。合コンでは目立つものの、意外に撃墜率は低かったりする。
異性に求めるのはフィーリングよりも堅実さ。もっとも現実的に世の中を見ているようなOLタイプ。貯金も意外に多くて仕事の評判も良い。総じて世渡りが上手いキャラというのが、キム・キャビロフの大まかなイメージだと言える。

アップバングのショートヘア。本人のこだわりで、流行りに流されてショートボブにしたりはしないのだそうだ。
なのでいつもボーイッシュで強気な雰囲気を纏っている。我関せずといった不遜な態度。時折り見せる、人をからかう様なその笑顔。それら全てがキム・キャビロフらしいキム・キャビロフらしさなのだろう。

でも本当は強気なんかじゃない。その事は、あの日彼女に触れるまでまったく気が付かなかった。



シティのディスコ・クラブなんてのには大して興味はない。その日はたまたま、仲間に誘われて地下クラブに入っただけだった。爆音でファンキー・ポップが響き渡る空間に馴染めず、周囲から浮き気味の自分は仲間から離れてフロアの端っこに避難する。
そこで、彼女を見つけた。

キムは一人だった。ディープグリーンのパーティドレスに真っ白なロンググローブ。胸元には大粒のパールネックレス。ボリューミーで濃紺な髪には、小さなコサージュが可愛らしくちょこんと乗っている。
その彼女がカウンターで細長いカクテルグラスを口に運ぶ物憂げな表情は、男達の視線を釘付けにするのに充分な破壊力があった。まるでそこだけ切り取られた古い映画のワンシーンのようだ。
見ている間にも、次々と男が声を掛けに来る。しかし誰ひとりとして彼女の首を縦に振らせる事は出来なかった。いつものハツラツとしたイメージと違い、どこか退廃的な匂いを漂わす彼女に興味が沸いて、俺は思わず席を立った。顔見知りの気安さからか、遠巻きに見つめる男たちの輪の中を堂々と歩いて彼女の隣りに腰掛ける。
俺に気が付いた彼女は「Hi」と取り繕った笑顔で挨拶をしてくれた。ずっと取り付くシマもなかった彼女の反応に、周りの男達がざわつくのが分かる。俺は少しだけいい気分になって彼女に話し掛けた。

「素敵な衣装だね」
「ありがとうございます。こんな所に来るなんて意外ですね」
「俺も意外だ。言っておくけど、来たくて来た訳じゃないぞ」
「最初はみんなそう言うんです」

気持ち、彼女の表情が和んだような気がした。俺は手にしたグラスビールを呷ると、思い切ってこの不思議な空気に切り込んでみる事にした。普段とは違う空間に、ドンと背中を押されたのかも知れない。

「なんか元気ないな。君がそんな顔するなんて意外だ」

言われたキムは少しだけ苦笑いをする。細く泡の立つカクテルグラスを一口舐めて、カウンターに戻すと俺の方に向き直った。

「酷い言われようですね。私そんなにいつも能天気に見えます?」
「そうは言わないけど、暗い表情は似合わないよ」
「なんだか聞きようによっては口説いてるようにも聞こえますね」
「そんなに器用なタチじゃないさ」

それはたしかに、そう言ってキムは笑った。その明るい笑顔に俺も一安心する。今までプライベートな付き合いはなかったので、彼女の事を深く知っている訳ではない。しかし軍服にその身を包み、ピシッと背筋を伸ばしたいつものキム・キャビロフを知っていると、なんだか薄暗がりの中に消え入ってしまいそうな危うい雰囲気はとても放っておけなかった。

「何があったか知らないが、元気出せよ。気晴らしに飲みにでも行くか?あ、もう飲んでるか」

我ながらバカな事を喋っているが、聞いていたキムはおかしそうに笑った。良かった、俺も釣られて笑う。すると彼女は真っ白なロンググローブに包まれた手を伸ばして、俺の武骨な手のひらを掴んだ。

「笑ったら全部忘れちゃった。踊りましょう!」

キムは手を取ってフロアへ俺を連れ出した。周囲の視線が突き刺さる。こんなイケてない野郎がなんでこの子と…いやいや、君らの想いはよく分かるよ。正直俺も驚いてるところだから。
ダンスフロアではクラシックなファンキーポップを、DJが軽快なハウス・ミュージックでミクスチャーしている。良くは分からないが、ノリやすいテンポで身体は自然とスイング出来た。キムははしゃぐ様にパーティドレスの裾を翻す。彼女のダンスはとても決まっていて、オシャレでカッコいい。俺は一緒に踊りながら「こんな子が彼女だったら楽しいだろうな」とふとした考えが頭の片隅に浮かんでいた。
パンプスがローヒールだから、最初から踊るつもりで来たのだろう。でもいつも一緒にいる仲間がいないのはどういう訳だろうか。

「楽しいね!」

キムの汗ばんだ笑顔がカクテルビームに眩く弾ける。彼女の華麗なステップに翻弄されながら、俺は足元をもたつかせつつ、なんとかかんとか「そうだね!」と笑顔で頷いた。



シティの巨大湖岸。マクロスレイクのほとりは、広々とした公園になっている。
ひとしきり踊り疲れた俺たちは、酔い覚ましに外気を吸おうとマクロス・パークにやって来た。11月ともなればアラスカは雪の季節だ。今もチラホラと雪が舞っている。

「寒くない?」

俺は着ていたフライトジャケットをキムの肩に掛けてあげる。しかし今度は自分がかなり寒くなって身震いした。キムは笑って「入ります?」と大きめのフライトジャケットの片方を空けてくれる。俺はいそいそとそれを背中に掛けると、2人で並んでベンチに座った。

「昨日、友達が死んだんです」

マクロスの電飾に彩られた真っ暗な湖面を見つめながら、キムが唐突に独白を始めた。俺は声もなくただ頷く。キムは両手に顎を乗せて、じっと漆黒の湖を眺めながら言葉を続けた。

「病気ですって。血管からね、血が溢れて、その勢いで破れちゃうの。凄く痛いらしくて。きっと最後まで辛かったんだろうな」

キムの横顔を見る。青灰色の瞳はすぐそこにある。唇は、小さく噛み締められていた。こんな顔するんだな、といつものキムとの違いに、不謹慎ながら扇情的な気持ちを煽られる。

「せっかくあんな大きな戦争を生き延びて、お互いの無事を喜び合えたのに。古い付き合いのある仲間なんて、本当に残り少ない…」

キムは背を起こし、ギュッと両手を握り締める。俺はどう言っていいか分からなかったので、そっとキムの握られた拳の上に手を添えた。キムの小さな手はとても冷たかった。

「昔はよく一緒に悪さもしたんです。寄宿舎を抜け出して朝まで踊りに行ったりして。ミセス・マーガレットに見つかって丸一日食事抜きにされたり。あれはキツかったなぁ」

キムは薄く笑った。遠くを見るような目つきで淡々と言葉を続ける。
人にはそれぞれ歴史がある。キムにも、俺にも、その他大勢の人々にも。そしてきっとその亡くなったキムの友人にも。

「もう、そんな昔の想い出すらあんまり残っていないんだなぁって。そう思ったら、凄く寂しくて。思い出そうって踊りに行ったのに、全然踊れなくて…」

キムはコトンと頭を傾け、俺の肩に乗せて来た。俺は初めて嗅ぐ彼女の匂いにドキドキして、話の半分も入って来なかった。酷いけれど正直な話だ。

「人ってなんで生きてるんでしょうね。楽しかった頃の事なんか、歳を取るとどんどん忘れちゃうのに」

彼女の問いかけに、明確な答えなんて出せる訳もない。そんな究極の命題、俺みたいな凡人が知る筈もないのだ。

「そうさなぁ…」

俺は思わずため息を吐いた。冷たい外気に、白い息がふわっと広がる。それを目で追っていたら、不意に気が付いた。そういや、今夜は妙に明るいなぁと思っていたのだ。

「なぁ、あれ」

俺の呼びかけに、キムは頭を起こす。俺が指差す方向を見ると、彼女も思わず息を飲んだ。

冬季のアラスカは四六時中厚い雲が空を覆っている。星の光は遮られ、月すら見えない。夜空には漆黒の闇がただ広がるだけだ。
しかし稀に晴れる日もある。そんな夜は、銀河の星々がまるで手の届くかのように瞬いているものだが…

今夜はレベルが違った。
夜空には、見渡す限りの光の奔流が満ち溢れていたのだ。

「オーロラだわ…!」

キムのつぶやきは感嘆に溢れていた。俺は黙ってそれに頷く。
それはあまりにも美しく、雄大で、荘厳な光景だった。まるで光がカーテンを広げたようにゆるやかに鳴動している。無数の色彩が生まれては消え、消えてはまた生み出される。聞こえない筈の光の音が、しんしんと聞こえて来るかのように錯覚さえした。

アラスカは立派にオーロラ帯に含まれる極域だ。太陽風のプラズマと大気の条件さえ揃えばいつでも観れる。しかし、実際にシティで目にしたのは初めてだった。
街の灯りが強いと、星空は見えなくなると言う。繁栄を取り戻したマクロス・シティでも似たような現象になっていた。
でも、それらを圧倒して天空に広がるノーザンライトに、少しずつシティの住人も気が付き始めているようだ。ひっそりと木陰で戯れていた夜の恋人たちも、街灯の下に現れて息を飲んで夜空を見上げている。

「凄い…凄い!あんなにキレイ…!!」

キムは興奮したように声をうわずらせた。いつになく弱気な彼女にどうして良いか戸惑っていた俺は、突然現れた救いの女神に感謝の祈りを捧げたい気分だ。なんて劇的な演出だろう。

「凄いよな。あれ、宇宙からも見えるんだぜ」

「え?そうなんですか?!」

「ああ。まるで光の帯みたいに、地球の曲線に沿って光るんだ。神秘的な何かが生まれてきそうな景色だよ」

俺はそう言いながら、キムがしっかりと俺の手を握り返している事に気が付いた。
それはとても気持ち良い強さで、俺はこの時間がずっと止まればいいと思った。

「宇宙って広いんですよね…」

夜空を見上げるキムはそう呟く。マクロスで太陽系を旅した頃でも思い出しているのだろうか。俺は小さく頷いた。

「何せ無限に広がってるくらいだからね。それに比べたら、人間なんてちっぽけなもんさ」

昔からある常套句だが、今の気分にはピッタリの言葉だった。キムの心にも刺さったらしい。彼女は光のパレードを眺めながら「宇宙は広い…人間なんてちっぽけ…」と小さく小さく呟いた。

「人間がどんなに泣こうが喚こうが、宇宙はただそこにある。空も、大地も、マクロスもね」

俺は湖にそそり立つ巨神を見上げた。それは自らの電飾と、夜空に広がるオーロラとを纏って古代神話のように神々しくそびえ立っていた。

「時間は流れ、明日は必ずやって来る。どんなに悲しくてもそれは止められない。だったら、思い悩むなんて無駄なんじゃない?」

少し戯けた調子でそう言った。キムは俺の顔を見る。青灰色の瞳は、少し穏やかな輝きになっていた。

「…良い事言いますね。似合わないですよ」

「ほっとけ」

「でもありがとう。少し気が楽になりました」

キムは立ち上がった。ヒラリと身を翻すと、オーロラを背にして俺に向き直る。少し身をかがめ、ベンチに座る俺と目線を合わせた。

「これはお礼」

一瞬だけ触れた唇は、柔らかくて艶かしくて、脳髄の底まで俺を痺れさせた。屈託無く笑う彼女は、姿勢を起こすと軽くステップを踏み始める。

湖のほとり、オーロラの光の下でダンスを踊る彼女。その光景は、本当にローマ神話の暁の女神アウロラの様にも見えた。もしかしたら大分贔屓目が入っていたかもだけど。


その夜は、シティが建造以来初めてのオーロラを観測した日として記録に残っている。
そして、俺と彼女の記憶にも、ずっと残っている。



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僕と私の誕生日 -後編-

かろうじてその日の任務を終えた輝は、疲れた身体を引きずって這々の体で帰宅した。
今日は散々な一日だった。検査と言われてあちこちのラボを引きずり回され、パトロール任務では慣れない女の体でバルキリーを操縦し、マクロスに戻れば好奇の視線に晒される。精神的にも、肉体的にもヘトヘトになって這うように家へと帰ってきたのだ。

「災難だ…」

輝はバタリとソファに倒れ込む。本当に最悪な日だった。松木たち部下連中のイヤらしい視線が、今でもまとわりついているようで気持ち悪い。こんな経験は初めてだ。あのバカ連中、俺をあんな目で見やがって…

「シャワー浴びないとな…」

口には出すが、もはや立ち上がる気力もない。そのまま動けずじっとソファに蹲っていると、エントランスのベルが鳴らされた。力なく「勝手にどうぞ〜」と返事をするが相手に聞こえる筈もない。
少しして扉が開く音が耳に聞こえた。そういえば鍵も閉めてなかったっけ。不用心だったかなと少しだけ気になったが、入ってきたのは輝のよく見知った顔だった。

「輝…」

その声に、輝は飛び起きる。入って来たのは未沙だった。
勤務を終えてまっすぐ来たのだろう。軍服にコート姿、肩にはうっすらと雪が積もっている。

「み、未沙…」

輝の目の前に立っている未沙は、驚いたような哀しいような複雑な顔をしていた。

「本当…だったのね…女の人になったって…」
「う、うん…」

それ以後、言葉が続かない。輝はモジモジとしながら「す、座ったら?」と未沙にソファを勧めた。未沙は黙って頷くとコートを脱いで輝の隣りに腰掛ける。

「原因は…分かったの?」
「いや、まだ何も…」
「そう…」

2人は並んで下を向いてしまう。とてつもなく重い空気だ。
輝はこっそり未沙の横顔を見た。未沙はショックのせいか軽く青ざめている。それはそうだろう、つい昨日まで「彼氏」だった相手が突然「彼女」になったのだ。本当なら今日は、2人で輝の誕生日をお祝いする筈だった。それがまさか、こんな想像もしなかった出来事が起こるだなんて…

「ケーキ…」
「え?」
「慌てて来たから、ケーキ、買ってこれなかったわ…」
「そ、そう」

未沙は気丈に振る舞おうと笑顔を浮かべてみせた。しかし紫色になった唇の端が引きつって震えている。輝はとってもいたたまれない気持ちになってしまった。

「輝、私…」
「え?」

形だけでも笑っていた未沙の表情がみるみる曇る。み、未沙、もしかして怒ってるのか?

「わ、私ね…」

未沙は瞳に涙を浮かべていた。輝は心が傷む。こんな風に彼女を悲しませてしまうとは、俺って何やってるんだろう。いや、別に俺が何かした訳じゃ無いけれど。

「私、たとえあなたが女性になっても…」

突然、未沙は輝を抱きしめた。輝は驚いて目を見張る。こ、これじゃあいつもと立場が逆だ。というか俺、身体の大きさも未沙とそんなに変わらなくなっている。なんだか情けない…

「未沙…」
「輝…」

未沙はそのジェイドグリーンの瞳を閉じた。薄くて繊細な唇をゆっくりと近付けてくる。輝は一瞬躊躇したが「べ、別に恋人同士なんだから変な事じゃないだろ。俺は元々男なんだし」と心の中で言い訳して未沙の温もりを受け入れる。
しかし今夜の未沙はそれだけでは止まらない。輝の肩に手を掛けると、グッと力を入れてソファに押し倒した。

「え?未沙、ちょ、ちょっとちょっと?」

輝は慌てる。彼女を押し倒すのはいつも自分の役目だったが、まさか自分が押し倒される日が来るとは思わなかった。しかも今の自分は女の身だ。のしかかって来る未沙を押しのける力さえない。
未沙はゆっくり輝の首筋に吸い付くと、柔らかな唇を輝の柔肌に這わせる。まさかの彼女からの愛撫。しかも、き、気持ちいい。なんだコレ。
突然の事に輝が驚いている内に、未沙の手は輝の襟元に掛けられた。手際よく上着を剥ぎ取ると、アンダーシャツの上から輝の胸の膨らみに手を掛ける。

「うわ、ちょっと未沙まってちょっと」
「フフ、輝…」

未沙は怪しい笑みを浮かべた。見れば、目が完全にイっちゃっている。輝は未沙の突然の変貌ぶりが怖くて身を縮こまらせた。そんな様子が可愛かったのか、未沙は両腕を伸ばすと輝のくせっ毛頭を抱き寄せ、よしよしと幼子をあやすように優しく撫でた。

「怖がらなくていいわ。全部私に任せて…」
「ま、任せてって、な、なにを?」
「フフフ、お姉さまって呼んでいいのよ」
「み、未沙〜?!!」

固まる輝のアンダーシャツをめくり上げて、緊張に尖った乳房の先端にキスをする。輝は生まれて初めてその身を襲う感触に頭の中が真っ白になった。攻めるのは大好きだが、攻められるのは初めての体験だ。まして自分は女の体で…

「み、未沙、待って待って!なんか怖いよ未沙」
「平気よ輝…ハアハア、大人しく観念なさい」

鼻息も荒く、瞳に興奮の色を浮かべた未沙が迫って来る。輝はもはやヘビに睨まれたカエルの状態だ。
未沙の手が輝のアンダーパンツに掛かったかと思えば、鮮やかに一瞬で脱がされて宙に舞う。あられもない姿となった輝に、もはや抗う力は残されていなかった。

「き、キャ〜!」

小娘のように情けない声を上げる輝。未沙はそんな恋人の様子にむしろ益々興奮の色を隠せない。

「いっただっきま〜す」
「お、犯される〜!」

「いや〜!!」と涙目で叫んだところで、輝は唐突に目が覚めた。
ガバッと勢い良くベッドから飛び起きる。ハアハアと荒い息遣い。全身汗ぐっしょりで、両手は細かく震えていた。

「あ、あれ?ゆ、夢か…」

なんて酷い夢なんだ。輝はまだ心臓がバクバク言っているのを自覚する。自分の体を確認すると、胸はペッタンコだし、股間には…ある。いつものヤツが、ちゃんと居る。
恐怖のせいか小さく萎びてしまっているけれど、ソイツは確かに輝の股間にキチンとぶら下がっていた。
ホッと安堵のため息を吐く。良かった、俺は男だ。なんつーくだらない夢を見ていたんだ俺は。

隣りを見れば、いつものライトブラウンのロングヘアーが静かにベッドで眠っている。そうだ、昨夜は俺の誕生日で、未沙と二人きりのパーティーをしたのだった。ちょっと調子に乗って飲み過ぎてしまったらしい。まさかこんな訳の分からない夢を見るだなんて…

「夢で良かった…」

心からそう口にする。しかし思い返すと、ちょっとだけ惜しい気もした。怖いもの見たさというか、どうせなら未沙とのレズビアン・セックスも試しに経験してみたかったかも。しかもあの未沙が攻めだなんて…。
夢だと分かった途端に気が大きくなる。イヤイヤないわ〜とそんな考えを一笑に伏しながら、輝は朝日に照らされる恋人の髪を指で梳いた。

「未沙」

耳元に囁く。

「お寝坊さん、もう朝ですよ。あんまり寝てるとオオカミに食べられちゃうぞ」

輝の言葉に、未沙はムクリと反応する。さて、寝起きの姫君におはようのキスをしようか。そのあとはやっぱり自分が押し倒して、また昨夜の熱い夜の再開を…あ、勃って来ちゃった。

そう思って顔を近づけた輝の動きがピタリと止まる。笑顔は凍りつき、両の目は驚愕に見開かれた。

「あ、おはよう輝。早いんだな」

顔を起こした未沙の顔には…うっすらと青いヒゲが生えていた。

「まったく、昨日あんなに激しかったからまだ眠いぜ。このドスケベが」

笑いながら体を起こす未沙。野太い声に、蠢く喉仏。その胸は真っ平らで、逞しく発達した大胸筋がピクピクと蠢いていた。

「もう、朝っぱらからこんなに元気にしやがって!」

ギュッと輝のソレを握りしめる未沙。その手は太くてゴツかった。輝はキュッと玉が縮み上がるのを感じる。未沙はニタリと笑うと、白い歯を朝日に輝かせた。

「さあ、可愛がってやるぜ、ダーリン(はーと)」

「う、う、う、嘘だ〜!!!」

絶望の叫びをあげる輝。
そしてその瞬間目が覚めた。

「嘘だ、うそ…え……あれ?」

輝は泣きながら跳ね起きた。

「ゆ……夢か〜………」

お、恐ろしい夢だった。まるでこの世の終わりかと思った…

ハッとなって横を見る。隣りには、いつものライトブラウンのロングヘアーがスヤスヤと眠っている。
輝はゴクリと唾を飲み込んだ。

「み、未沙…?」

声を掛けるが反応はない。輝は恐る恐る手を伸ばすと、ゆっくりとベッドクロスをめくった。

するとそこには…





僕と私の誕生日 おわり


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僕と私の誕生日 -中編-

その日、マクロスは朝から輝の話題でもちきりだった。

「東部パトロール中隊の一条中尉が!」
「え、あの噂のエースパイロット?!」
「どこどこ、見せて見せて」
「あ、いた!あれあれ!」

人々は一斉に指さされた方角を見る。そこには仏頂面で医務室から出てくる噂の人物、一条輝の姿があった。
背は低くなっている。体全体のシルエットも明らかに小柄に見えた。しかしそれとは逆に、胸とお尻は膨らんで妙にブカブカに見える。それはそうだろう、輝がいま着ているのは男性士官用の軍服なのだ。

「隊長〜!」

パトロール中隊の部下達が駆け寄って来る。輝は「ハハハ」と乾いた笑いで仲間を迎えた。

「隊長、どうでしたか?!」
「う、うん。まあ、俺が俺だって事はDNA検査で証明されたよ…」
「で、なんで女になったんですか?!」
「…それはまだ分からんとさ。医者も首をひねってた」

輝は大きくため息をつく。そんな隊長の様子を、部下達は色んな表情で取り囲んでいた。


「聞きましたよ先輩」

昼になって隊長室にやって来たのは、含み笑いのマックスだった。輝は「お前もか」という顔でゲンナリとする。

「お前までからかいに来たのか。勘弁してくれよ」
「フフフ、朝から大人気だったみたいですね」

マックスはふてくされる輝をしげしげと眺めやる。興味本位で見られるのにウンザリしていた輝は、手のひらでしっしっと追い払う真似をした。

「先輩、ちょっと縮みましたね」
「何せ女になったからな。見ろよ」

輝は腕を伸ばして見せる。いつも着ている筈の自分の軍服は、袖が長過ぎて指先まで埋まってしまっていた。

「袖をまくってもまだ余るぜ」
「ハハハ、なんとも可愛らしい中隊長さんですね」
「言ってろ」

輝は舌打ちをして背もたれをギシリと揺らせた。元々童顔の輝だが、今は兵士らしい険が取れてもっとあどけない顔になってしまっている。いくら毒づいても何の迫力も感じない。

「しかし参りましたね」
「ああ、本当に参ったよ」
「いや、そうじゃなくて」

マックスは少し声を潜めた。部屋には2人しかいないが、口元に手をやって輝だけに聞こえるような小声で囁く。

「早瀬さんに、なんて言うんです?」
「う、うん」

輝は思わず口籠った。今朝はあまりの出来事になかなか頭が回らなかったが、冷静になればなるほど今後の自分の生活が心配になって来る。そしてそれは、現在パートナーとして公認されつつある彼女に対しても同じだ。

「もう連絡は入れたんですか?」
「今日から女になりましたってか?そんな事言える訳無いだろ」
「でもきっとすぐに耳に入りますよ」
「う、うん、そうだな」

輝は困り果てた顔になる。マックスも腕組みをして思案顔だ。そんな沈んだ2人の空気を裂くように、パトロール隊の部下達がドカドカとドアを開いて入って来た。

「隊長、もうじきパトロールに出発する時間ですよ」
「おう、もうそんな時間か」

輝は椅子から立ち上がる。バルキリーに乗るためにパイロットスーツに着替えなくてはならない。
マックスに別れを告げ、隊長室を出て通路を歩いて行く。その輝の後ろから、部下達がゾロゾロとくっ付いて来た。

「まったく、毎日毎日パトロールばっかで嫌になっちまうよな」

口調は変わらず男子のそれだが、ルックスは完全に女子そのものになっている。輝の歩く後ろ姿、ゴツかったシルエットは柔らかな曲線に変わっていて、特に小さくなったヒップラインはぷりぷりと女の子らしい丸みを感じさせてくれる。
そんな輝を、何か期待を込めた眼差しで見守る部下達。輝はそれに気がついて不思議そうに尋ねた。

「??なんだ?お前ら」
「隊長、あの〜」

部下を代表して同じ日系人の松木が口を開く。

「ロッカールームは、やっぱり男子の物を使うんですよね?」

松木は通路の左を指差す。輝は指さされた方角を見た。
通路の左は男子用ロッカールーム、右は女子用のロッカールームだ。

「…は?」

輝は一瞬意味がわからない。しかしすぐに気が付いて顔を真赤にする。

「ば、馬鹿言ってないで早く着替えろ!」

怒鳴られた部下達は慌ててロッカールームに飛び込んだ。憤慨した輝は腕組みをしてそれを見送ると、周りに誰もいないのを確認してからほんのちょっぴり軍服の襟元を覗いてみる。
…ある。胸の谷間が。間違いなく今の自分が女である事の証明が、確かにそこに息づいている。

「まったく、バカどもが…」

そう呟きながらも、2つのロッカールームの間でオロオロとさまよう一条輝だった。




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僕と私の誕生日 -前編-

今日は一条輝の誕生日だ。

昨晩は前祝いとしてパトロール隊の部下達に下品な地下バーへと連れて行かれた。大勢で騒ぐのは嫌いじゃないが、女の人があられもない格好で迫ってくる店は正直苦手だった。女性がダメだという訳ではない。そういう雰囲気にあまり免疫がなかったからだ。

だからだろうか。酔いつぶれた輝はその晩、世界中が女だらけになった夢を見た。それはとても不思議な夢だった。何ともおかしな夢だった。

…そして朝起きたら女になっていた。

「…は?」

寝ぼけ頭にも、自分の体の変化はすぐに感じ取れた。輝は訝しんで自分の身体を見下ろす。寝間着代わりのランニングシャツの隙間から、見たこともないふくよかな肉が所狭しとはみ出していた。
胸が異様に重い。慌ててシャツを脱ぎ捨てると、そこにはしっかりと立派な乳房が力強く存在を自己主張している。

「いやいやいや!」

慌ててベッドクロスを跳ね除ける。アンダーパンツを脱ぎ捨てて、己が股間を覗き込んでよ〜く確認するが…。
無い。いつものアレが無い。男の象徴というか、我が魂の分身とも言える、尊厳の根っこそのものであるアレが無い。

真っ裸になった輝はバスルームに駆け込む。洗面台の鏡でようく確認する。顔は…いつもよりどことなく小さく幼く見える。髪だけはいつも通りのボッサボサのくせっ毛頭。しかし首から下はほっそりとした体になっていて、背も幾分縮んだように感じられる。そして何よりそのむき出しの胸には、母性の象徴であるはずのハリのあるおっぱいが一対、しっかりくっきりとくっ付いていた。

「な、な、な」

輝は前屈して自分の秘所を確認する。何度見ても無い。代わりに穴が開いている。どういう事だこれは、一体どういう…

「なんじゃこりゃ〜!」

大声を上げる輝。もっとよく見ようと手鏡を探すが、そんな物、男の独り暮らしの家にある訳がない。仕方なく適当なタブレットを持ってソファにドッカと腰掛ける。胡座をかき、タブレットのカメラ機能をONにしてよう〜く「女の子の部分」を観察した。
あまり詳しく書くとPTAに怒られてしまうので書かないが、女の体を手に入れたら男なら誰しもがやるであろう興味本位な事柄を一通り済ませた後、ようやく輝は深い深いため息を吐いて、この現状に対し途方に暮れた。

「俺って、男…だよな…?」

一条輝の受難はこうして幕を開ける。
今日は彼の誕生日だった。




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びえり 

Author:びえり 
iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

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