『おぼえていますか』 目次

過激化してゆくメガロード反対運動。人類に希望があるのは宙(そら)か大地か。

ねえ
あの時のこと、おぼえてる?



  1 君は想像しないのかい?

  2 一条輝が郊外のコテージを引き払い、

  3 シティの流行発信地、シュヴァンニュアベニュー。

  4 輝達は地下クラブに来ていた。

  5 あのヒカル坊やが統合軍准佐だなんて

  6 ボーリゾンに連れられて来たのは

  7 「最近はずっとこんな感じよ」

  8 ハイヤーの静かな揺れは

  9 ミンメイが暮らすマンションは

 10 ミンメイの自宅のリビングで

 11 ソファで寝ていたボーリゾンは

 12 杖を部屋に置いて二本の脚で散歩に出掛けた。

 13 「つまりテロって事ですかね」

 14 「まったく、何でウチが狙われたのか分からないよ」

 15 葛藤が、無かった訳ではない。

 16 食事は本当に美味しかった。

 17 「こんな事、意味あるんスか?」

 18 輝とミンメイは時間を忘れて食事を楽しんでいた。

 19 ミンメイが昔の様に

 20 先に言葉を発したのは、輝の方だった。

 21 翌朝、輝は不思議と早くに目を覚ました。

 22 それを見つけたのは

 23 『手間を掛け過ぎなんじゃないのか?』

 24 輝は履き古したジョギングシューズを引っ張り出した。

 25 『アポロと連絡が取れないって、どういう事だ⁉︎』

 26 胸を焼く焦燥感。

 27 その後、7回ヴァネッサに電話した。

 28 「ああ〜、これね」

 29 「ヒカル坊や、起きて。敵襲よ」

 30 ミンメイが指定された地下BARに到着した時

 31 タクシーを降りてエレベーターに乗り、玄関を開ける。

 32 翌朝、輝はミンメイのベッドで目を覚ました。

 33 「気をつけてね」

 34 輝を送り出した後

 35 バラエティ番組の生放送の終わりに

 36 胸をドキドキと激しく高鳴らせながら楽屋に飛び込む。

 37 その日の夜、輝はマクロス司令部に居た。

 38 未沙は時系列順に話をした。

 39 咄嗟には、言葉が出なかった。

 40 未沙はそのライバーさんをずっと追いかけてるんだろう?

 41 あれからミンメイは何度か電話をくれた。

 42 窓の外、雷光に浮かび上がる人影に驚いた輝だったが

 43 ミンメイの体は輝の抱擁を要求していた。

 44 「ミンメイ…」

 45 輝は薄暗がりの通路で、ベンチ椅子に座って待っている。

 46 4月20日 リン・ミンメイ緊急記者会見

 47 アラスカ、マクロスシティの夕暮れ。

 48 キム・キャビロフの日記(1月1日からの全文)

 49 「全てあなたの思い通りになったわね」

 50 「おぼえていますか」 校了にあてて




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君は想像しないのかい?

「君は想像しないのかい?この大宇宙に、彼女の歌が響き渡る感動的なさまを」

昇りゆくアラスカの朝日が、薄暗い室内をブラインド越しに照らし出す。
細身の銀縁眼鏡を掛けた男は、豪華な革張りの椅子に腰掛けながら、無垢なナラ材の重々しいプレジデントデスクに肘をついた。
その言葉に、部屋の隅に佇む短髪の男は不機嫌そうな顔をする。薄い蒼氷色の瞳を細めて、疑わしげな表情を作った。

「あなたが本気で言っているとはとても思えないけれど」

ククッと銀縁眼鏡は笑う。

「僕の事はどうでもいい。とにかくそれがスポンサーのご意向なんだ。我々のやるべき事は決まっている。君には責務を果たしてもらうよ」

壁に寄りかかり、腕を組んでいた短髪の男はいい顔をしなかった。
機嫌悪そうに身じろぎする。
それを確認して、銀縁眼鏡は少し表情を硬くした。

「…あまり入れ込みすぎるなと伝えておいたぞ?」

ふん、と短髪は鼻を鳴らした。

「あなたはあの子を知らないのよ。ずっと一緒にいてご覧なさいな、きっと考えが変わる筈よ」

「君個人の嗜好もどうでもいい」

中指で眼鏡のブリッジをクイッと押し上げると、銀縁眼鏡の男は背もたれに大げさに身体を預けた。
その様が居丈高に見えて、短髪の男はむしろ彼の様子を滑稽に感じる。

「君がやるんだ。嫌なら他の者を差し向ける。それは君の本意ではないだろう?」

少しだけ、危険な光を孕んで短髪の男は銀縁眼鏡を細く睨んだ。張り詰める空気にも、銀縁眼鏡は平然とそれを受け流す。

「君を信用しているから任せるんだ。期待に応えてくれ」

「信用なんて言葉で誤魔化すのは詐欺師の始まりよ」

「我々が詐欺師ではないとでも言うのかい?」

「あなたと私は違うわ。それだけは言っておくから」

ふん、と不満そうに応じる銀縁眼鏡に、この辺が潮時かと短髪は相手の意向を受け入れる旨を表した。

「ただし、今後も私以外彼女には近付けない事。それだけは守ってもらうわ。ロシアの赤い十字架にかけて」

その言葉に、銀縁眼鏡の表情が神妙になる。重々しく頷いた。

「いいだろう。やりやすい環境を用意しよう。何でも遠慮なく言ってくれ、クワッサリー(火喰い鳥)」

懐かしい名で呼ばれて、短髪の男は少しだけ笑みを漏らした。

「あなたのそういう懐古主義、本当はあまり好きじゃないの」

それだけ言い残して、蒼氷色の瞳の男は部屋を出て行った。
残された銀縁眼鏡の男は、静かに両手をデスクの上に組んで考え事に浸っていた。




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一条輝が郊外のコテージを引き払い、

一条輝が郊外のコテージを引き払い、ラカンダアベニューの自宅へ戻ってきたのは、未沙のシャトルを見送って3日後の事だった。

数ヶ月振りにも関わらず綺麗に整えられた家の中を見て、月面で奮闘しているであろうフィアンセの顔を思い浮かべる。
誰も居ない間にも、忙しい合間を縫って彼女が掃除しに来てくれていたに違いない。一体、彼女の時間管理術とはどうなっているのだろうか。

無駄な空間の多かったコテージと違って、久し振りの間取りに幾分手狭さを感じてしまうのは贅沢な話だ。これでも軍の独身者としてはかなり優遇された住宅事情と言える。
未だ軍務への復帰は遠く、自宅に帰ったとしても特にやる事もない輝はソファに身を投げてTVを付けた。広報部の仕事を引き受けたが、リン・チーリンからはあの後何の連絡もない。貰っている次のスケジュールはまだ一週間も先だった。

タブレットでキュレーションサイト巡りをしていたが、すぐに飽きて輝は散歩に出掛けた。
外出にはまだ杖とサングラスが手放せなかった。


シティの街路樹の間を進む人々は、春の木漏れ日に目を細めている。輝は特にあてもなく暖かな陽気の中を歩き続け、気がつけば馴染み深いマクロスレイクのほとりまで来ていた。
巨大な宇宙要塞を見上げる。
かつては戦友だったこの先進文明の遺物も、今は輝にとっては遠い過去の存在だった。
もし自分が軍部を離れる事があったなら、毎日こんな気持ちでマクロスを見上げる事になるのだろうか。それとも、2度とこの鉄くれを拝まなくて済むようにどこか遠くの街にでも旅立ってしまうかも知れない。

そんな夢想を馬鹿らしいと思えるのは、小春日和のお陰だろう。これがアラスカ特有の灰色の冬だったとしたら、もっと気分が滅入っていたかもしれない。
事実、アラスカの冬は戦前も戦後も自殺者が後を絶たない死の季節だという事は、今では割りと広く知られていた。


湖畔のベンチに腰掛けて、午後の陽を照り返す湖の水面を見ていたら携帯が震えた。画面に浮き出た名前は後輩のマックスだった。輝は通話をタップする。

「おう、マックス」
『先輩、いま暇でしょう?』
「ふつう暇ですかって聞かないか?」
『手続きを省いたんですよ。良かったらこれから飲みに行きませんか?』
「なんだ、藪から棒に」
『実は僕、今日早上がりだったんですが、ミリアが仲良くなった子達と女子会をやるんだってコミリアを連れて出て行っちゃって。男同士寂しく慰め合いません?』
「言っとくけどそういう趣味はないぞ」
『僕もです。じゃ、1時間後にフーターズで』

通話はすぐに切れた。輝は苦笑する。
マックスの話がどこまで本当かは分からない。シティに帰ってきてすぐのタイミングの良さからして、輝に気を使ってくれたのかも知れない。
相変わらずいい奴だ。俺と違って。

「フーターズって…結構遠いぞ」

輝はぶつくさ言いながらも、笑顔で杖をついてベンチを立った。





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シティの流行発信地、シュヴァンニュアベニュー。

シティの流行発信地、シュヴァンニュアベニュー。立ち並ぶデザイナーズビルの中に、若者向けのテナントがひしめく。
路面である1階は熾烈な競争を勝ち抜いた有名店が、2階は喫茶店や美容室が、3階以上はネイルやまつエクなどの簡易ビジネスかビンテージアイテムを扱う専門店など個性的な店舗が顔をのぞかせる。

戦前のニューヨーク、マンハッタン五番街をモデルに作られたこの東西に延びる通りは、シティにおいてもっとも活気にあふれたエリアと言っていい。
人口が減ったなんて嘘なんじゃないか、と思えるほどの人の波でごった返している。みなオシャレで、洗練されていて、華やかだったりシックだったり、色使いが独特だったりアーバンだったり、とにかく通り過ぎる人々を眺めているだけでも楽しく時間を潰せる街だった。


幼い頃から男所帯で暮らしてきた一条輝にとって、早瀬未沙というパートナーがいない限りファッションについて面倒を見てくれる役割りが存在しない。本人もまったくそういうものに興味がない。下手をすると穴の開いたジャージ姿でウロウロしていたりするので(未沙が青ざめて悲鳴を上げたので最近は自重している)とにかく今のシーズンはこれを着てとクローゼットの一部を指定されて、その中から適当に取り出して出掛けている。
シンプルでクセのない組み合わせは、童顔の輝には下手をすると学生に見えてしまいそうだったが、今は彼のまとう不機嫌なオーラが若干大人びた雰囲気を作り出していた。

「先輩!こっちこっち」

タクシーを降りてお目当ての店に入ると、すぐにマックスが輝を見つけて声を上げた。
輝は軽く片手で応え、ゆっくりと席に向かう。

「遅かったじゃないですか、先に始めてましたよ」
「お前、なんで軍服じゃないんだ」
「あんな野暮ったいもの、今日はなしなし!楽しく飲みましょう」

上機嫌なのは既に2〜3杯あおっているからか。マックスはウェイトレスを呼び止めて勝手に輝の分までオーダーしている。イケメンのマックスはここでも女の子達にウケが良かった。

フーターズはその際どいウェイトレスの衣装が話題の店だ。席について接客する訳では無いが、立ち止まって世間話程度なら楽しめる。健康的なお色気をテーマにしているので、軽いノリで若い男性客が訪れる敷居の低い店だった。
軍のパイロット連中もよく通っている。

もちろん、女性を連れて入るタイプの店では無い。

「もう杖、いらないんじゃないですか?」
「そう思うんだけれど、無いと無いでちょっと不安でな」
「ああ、その気持ち分かります。僕もアイウェアが無いと落ち着きません」
「お前のはカッコつけじゃないか」

輝とマックスは笑った。男同士、戦友同士。爽やかなお色気を肴に、2人は時間を忘れてくだらない会話とアルコールを楽しんだ。

「そういえば、例の移民艦の事なんですけど」
「ん?メガロードの事か?」

マックスがフィッシュフライを千切りながら遊んでいる。

「防空隊の大隊長、凄腕らしいですね。僕のいる地球防衛艦隊予備軍まで噂が聞こえてきますよ」
「義眼の少佐ってやつか」

輝は思わず唸る。その噂は自分も聞いた事があった。顔中傷痕だらけの男で、一部で「スカーフェイス」というアダ名で呼ばれている。かつて左眼を戦闘で失い戦闘機乗りを引退したものの、最近ゼントラーディの技術により復活した古いエースパイロットの話だ。

「統合戦争の英雄らしいですが、今のVF-1にも余裕で対応してるらしいです」
「どんな奴なんだろうな、見てみたいけど」
「あ、僕もしかしたら今度会えるかも」

マックスはブリタイ提督率いる地球防衛艦隊の防空大隊長に内定している。秋には輝より一足先に少佐に昇進する予定だ。

「確かメガロード防空大隊も、いま地球防衛艦隊で訓練してる筈ですよ。来月僕も上にあがるんで、その時会えるかな」
「…みんな忙しいんだな」

輝の腹の底にいる、暗くて重いものがムクリと頭をもたげた。それを敏感に感じ取って、マックスはさり気なく話題を変える。

「先輩、この後カラオケでも行きます?スカッとしましょうよ」
「何が悲しくて男2人でカラオケなんて行かなくちゃならないんだ」
「じゃあ男女4人ならいいでしょう?」

マックスは、フーターズのウェイトレスの中から髪の長い子と短い子を選んで声を掛けた。
ハンサム(ミンメイ談)でソフトな物腰でセクシーな声のマックスに誘われて2人は割りとあっさりOKをくれる。
マックスの、自然に溢れ出る堂々とした男としての自信の様なものが、彼女達のお眼鏡に叶ったのかも知れない。

「あの子達、もうじきバイト終わるらしいですよ。さあ、行きましょう!」
「…お前ってなんでも天才だな」

呆れながらも、輝の口角は上がっていた。




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輝達は地下クラブに来ていた。

結局、女の子達の希望で輝達は地下クラブに来ていた。
ハウスからトランスまで一部に熱狂的なファンを持つ、シュヴァンニュでも名の知れたアンダーグラウンドなクラブだった。入り口のバウンサーは輝の3倍くらい大きな刺青だらけの大男だったが、妙に愛想が良く、気持ち悪いくらいニコニコと輝達を通してくれた。

中に入ると、スタッフを捉まえてマックスが宇宙軍のIDカードでVIPルームをゲットする。「お前、そんな事に使ってるのか」と目を丸くする輝にマックスはウィンクで応えた。
輝は踊ろうと思えば踊れたが、少し遠慮して高座のVIPルームでくつろぐ事にした。マックスと女の子2人は楽しそうに下のフロアではしゃいでいる。

こういう空気も久し振りだ。
男連中でつるんでいた頃は輝もそれなりに遊ぶ事もあったが、未沙と連れ添う様になってからはそっち方面は大分付き合いも悪くなった。未沙と一緒にいる方が楽しいし、その方が輝にとって自然な事になっていたからだ。

強めのカクテルをあおって、ボンヤリと眼下のフロアを眺めていると、人ごみの中でふと目が合う人物がいた。
あれ?と思った瞬間にその姿は消えていたので、それが誰だったかまでは良く分からない。ただ、酷く懐かしい印象だけが残った。

「ねぇ、踊りましょうよ!」

短髪の方の女の子が輝の腕を引っ張った。輝は「う、うん」とそのままホールへと連れられて行く。杖無しで歩いていたが、特に問題は無さそうだった。

轟音と煌めくカクテルライト。薄いホワイトブルーを基調にしたレーザービームの雨に、足元から響いてくる音の振動が自然と輝の身体をリズムに揺らせている。
女の子達は積極的に輝に体を寄せてきた。正直悪い気はしない。正面で明るく笑いながら弾けるように踊る彼女はとてもチャーミングで、変に色気が先行していない所も感じが良い。だがまだかなり若そうだ。

「きみ、いくつ⁉︎」

輝はショートヘアの彼女の耳元で声を上げる。大音量の中、何とか聞き取れた様で、今度は彼女が輝の耳元で叫んだ。

「あててみて‼︎」

こういうの面倒くさいな、とは思いつつも、輝はうーんと頭を捻ってみる。フーターズの衣装も良かったが、今の格好もなかなかに扇情的だ。
ゴールドラメのショットパンツに、白いチューブトップがブラックライトで青く幻想的に光っている。ちょっと、いや結構胸がある。目の前で柔らかく揺れる様は、多分本人も意識してやっているのかも知れない。

「…19?20?」

「ブブー!17でしたー‼︎」

ショートカットの下でにこやかに笑う。
マヂか、と輝は鼻白んだ。ここに来てからカクテルをあおりまくっているがまだ未成年じゃないか。

そんなのダメだろう、まだ子供だぞ。
ちょっとだけ古臭い大人の考えが頭に浮かび、注意をしてやろうと思ったが気配を察したマックスに肘で小突かれた。

しばらくの間、なんだかんだと楽しい時間を過ごした。久し振りにいろんな事を忘れて無になれた気がする。
振り返ればネチネチとつまらない感情に囚われていた自分が勿体無い気がしていた。こんなほんの少しの事で心持ちまで変わるなんて、人間て単純だ。
そう思いながらも今日は連れ出してくれたマックスに感謝だ。ある意味、未沙と離れて1人になれたお陰かも知れない。

「ねぇ、この後どうする⁉︎」

シンセサイザーノイズの嵐の中、ショートヘアの女の子は、明らかに「そういうつもり」で誘いを待っている感じだ。壁際で輝の腕を抱え込んで寄り添ってくる。大きめな胸が輝の二の腕を包んだ。露出した肌が紅く上気している。結構酔っていた。

間違いなくお持ち帰りコースだったが、輝は微笑んで女の子の頭を撫でる。

「君と友達を送って帰って寝るよ。良かったらまた遊ぼう」

傷つけないように言ったつもりだったが、彼女は不満そうだった。え?帰るの?と意外そうな顔になる。輝は腕時計を見る。未沙にプレゼントされた物はヴァーミリオン作戦で墜落した時に壊れてしまった。今しているのは取り敢えずのよく分からない代物だ。

「ホラ、もう日付変わってるよ」
「いいじゃない、朝まで踊ろう⁈」
「ママが門限にうるさくてさ」

嘘でしょ⁉︎と女の子は目を剥いた。輝は笑いながら彼女の肩を抱き、VIPルームに戻って行く。
マックスとロングヘアの女の子と合流し、ぎゃあぎゃあ騒ぐ2人をタクシーに押し込むと、深夜のシュヴァンニュアベニューを男2人でトボトボ歩いた。輝の杖を突く音が人気の減った通りに響く。

「今日、ありがとな」
「いいえ、こちらこそ」
「誰かに何か言われたか?」
「そんな事ないですが、松木には相談されました」
「…あのお節介が」
「大分気にしてましたよ、失言しましたって」
「…いや、いいんだ。あいつはあいつなりに考えてくれたんだろ」

戦闘機を降りたらどうか、という松木の言葉を、輝は全力で跳ね除けた。あれ以来友人に会っていない。でも、向こうはずっと気に掛けてくれていた様だ。

少しずつ冷静に周りを振り返れる様になっている。自分が浄化されていく気がした。

「じゃあ、僕もここで」
「ああ、ミリアによろしく」

マックスと別れて、輝は1人ゆっくりと帰り道を歩む。春とはいえアラスカの夜はまだ肌寒い。
灯りの切れない街並みを眺めながらノンビリとしていると、首筋がチリチリとひりつき、強烈な人の気配に立ち止まった。
輝は目を凝らす。張り詰めた空気をまとった影が、細い路地から輝を見ていた。酔いが覚めて、全身の毛穴が締まるのを感じる。

ちょっと不用心過ぎたかな?

輝は丸腰だ。杖を突いていて走れないのは丸わかりで、襲われたら逃げるのも難しい。
負ける気はしないが、刃物でも持ち出されたら厄介だ。
輝は災難を避けて人気のある明るい方へ歩こうとしたら、脇から「久し振り」と不意に声を掛けられた。記憶がとても古過ぎて、咄嗟には誰だか思い出せなかった位だ。

「…ボリ?ボーリゾン・ボギンスカヤ准尉⁈」

「あたしの事、忘れてなくて嬉しいわ」

旧スカル大隊の生き残り、「オカマのボリ」ことボーリゾンのアゴの青い笑顔に、懐かしさと共に違う意味での危険を回記して輝は表情を引きつらせた。




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びえり 

Author:びえり 
iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

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