『いのちの選択を - 前編 -』 目次

過激化してゆくメガロード反対運動。人類に希望があるのは宙(そら)か大地か。

君が選ぶんだ
どっちを殺す?



  1 アラスカ、7月。

  2 娘娘の父母とは、

  3 アラスカの夏、7月。

  4 「会長が遅れているそうです」

  5 パーティは盛大だった。

  6 リン・チーリンは18歳の春に、早瀬輝と出会った。

  7 チーリンが身の上話を

  8 「…それが私と輝(アキラ)さんとの全てです」

  9 チーリンが用意してくれたタクシーに乗り込むと、

 10 「おかえりなさい!」

 11 「どう?」

 12 翌朝、ミンメイの部屋で朝食を取っていると、ボーリゾンがやって来た。

 13 シティにはユニバーシティが12校存在する。

 14 「カイフンさん、お疲れ様です」

 15 ミンメイがその日娘娘を訪れたのは、

 16 「じゃあ迎えはいらないんだね?本当に?」

 17 カイフンは、度々学生達を連れて娘娘を訪れていた。

 18 カイフンの顔を見て、最初に思ったのは

 19 輝の表情に気が付いたミンメイは、

 20 やっぱり、おじさんのチャーハンは美味しかった。

 21 「どうだろうか一条君」

 22 GCCは、7月20日に

 23 カイフンが応接室に入ると、

 24 「警察ですか、それは驚きですね」

 25 「予想より見つかるんが早かったんやないか」

 26 会わせたい人物がいると

 27 「TV討論?」

 28 「七夕かぁ、懐かしいな」

 29 その知らせを受けたのは、

 30 少女は震えていた。

 31 「コイツです、コイツ」

 32 リン・ミンメイの星間移民公表以来

 33 「そこでみんなの力を借りたい」

 34 7月20日

 35 世界最大デモの初日は、何とか無事に幕を降ろそうとしていた。

 36 見渡す限りの人の群れ、群れ。

 37 後に「7月20日の演説」と呼ばれるリン・カイフンによるアジテージは

 38 その事件が発生したのは、デモ2日目の正午くらいだった。

 39 「派手にやりはったな」

 40 ジョージ・ウィリアムスは名前だけは立派な男だとよく言われる。

 41 事件が勃発した時、輝は雑誌の取材を受けていた。

 42 覗き窓から、廊下の様子を確認する。

 43 薄暗い階段を、静かに登っていく。

 44 赤い絨毯の廊下を、チーリンは走った。

 45 9mmパラベラム弾を使用するバージョンのSIG P226は、

 46 どれだけの間、気を失っていただろうか。

 47 気を失ったチーリンをバスタオルに包み、

 48 数百人の死傷者と、千人以上の逮捕者を出した暴動の余波は

 49 「入院なんか要らないって言ったんだけどな」

 50 彼女が入ってくると、なんと言うか一瞬で病室が華やいだ。

 51 後に「血の日曜日事件」と呼ばれるこれら一連の騒動は

 52 たった3日の入院で、輝は退院した。

 53 「お帰りなさい!」

 54 「迷ってるんですか?」

 55 「ケインがミンメイ追っかけてるらしいよ」

 56 ケイン・サンダースは統合戦争前のアメリカ合衆国フェニックスの出身だ。

 57 「いいけど、輝の悪口言うならもう口きかないよ」

 58 TV討論会の前日、輝は打ち合わせの為にマクロスを訪れていた。

 59 不機嫌そうなチーリンと一緒に訪れたのは、

 60 飲み過ぎたのは、

 61 「落ち着きました?」

 62 まさかこの子とこうなるとは思わなかった。

 63 「本当に、それでいいのかね」

 64 軍とGCCとの討論番組は、

 65 「いのちの選択を」 -中書き-




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アラスカ、7月。

アラスカ、7月。

朝早くにも関わらず、ギラついた陽射しを避けるように歩く人々の中を、長髪の男性は涼しげな顔で歩いて行く。

薄手の白い麻のジャケットが風になびく。袖を半分捲り上げて、ポケットに手を入れて気取ったポーズで街を闊歩する。
リン・カイフンは、今年で26になった。マクロスで宇宙空間を旅した頃から既に5年。一貫して政府を批判し、反戦運動や難民救済活動に身を投じてきた。生き様そのものが生粋のポリティカル・アクティビストだ。

これには彼が10代の頃に世界中を旅した経験が大きな影響を与えているのだが、すでに彼にとっての思い出の地はことごとくゼントラーディ軍の手によって焼け野原にされてしまっていた。


この時代に、政府や軍隊の助けを必要としている地域はたくさんある。今のカイフンは、単に何にでも反対を叫ぶ単純な思想家もどきから、より良い世界環境を実現する為の積極的な改革者に変貌を遂げていた。
そのきっかけになったのが、政治運動団体GCC(地球十字団)にその身を投じた事だった。

中国の奥地で難民救済キャンプに居た頃、師と仰ぐ人物に出会った。かつてはベトナムの政治家だったらしいホアン老人の元で様々な事を学んだ。
そこで経験した喜びも悲しみも、カイフンがアラスカに戻って来た理由となっている。


「世界を何とかしなくてはならない」


漠然とした、それはカイフンの大きな目標だった。
そしてその為に、彼はいま力を欲していた。今の世の中を、誰かが何とかしなくてはならないのだ。
しかし誰が?どうやって?

ただ道端で「戦争反対」と叫んでいた10代の頃とはもう違う。

誰かが、何とかしなくてはならない

それが今のカイフンの戦いだった。
もう2度と、無抵抗な異星人の少女が無残な最後を迎えるような悲劇を繰り返してはならない。

アラスカの夏を、カイフンは歩いて行く。
この街を好きだ。だが、自分はこの街と戦いに来たのだ。



マクロスシティ創設以来、もっとも熱い夏が始まろうとしている。




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娘娘の父母とは、

娘娘の父母とは、戦後に喧嘩別れして以来3年ほど会っていない。

お互いにもう2度と会う事は無いと思っていた。しかし、今のカイフンには娘娘を訪れる理由が出来ていたのだ。


懐かしい町並みを歩いて行く。
サウスアタリアストリートは、マクロス艦内でカイフンが暮らした町そのものだ。ここであの宇宙戦争を生き延びた。

見慣れた街角を曲がると、いつもの場所にいつもの看板。
カイフンが幼少期を過ごした中華料理店「娘娘」。気持ち緊張して、カイフンはゆっくりと自動ドアの前に歩を進める。
聞きなれた機械の開閉音。その音が、カイフンの心を一気に幼い頃に引き戻させた。

「ごめんなさい、まだ準備中…」

カイフンの母、リン・フェイチュンは50歳を迎えた筈だが、相変わらずスレンダーで綺麗な女性だった。昔よくミンメイが自分の脚と比べてため息を吐いていたのを思い出す。

「母さん、ただいま」

カイフンはなるべくさり気なさを装った。変に意識してしまってはお互いに気まずくなるだろう。
特に母には迷惑を掛けて来た。お詫びの気持ちも込めて、優しい笑顔で素直な良い息子を演じる。
母はすぐに涙を流してカイフンを抱きしめてくれた。まず最初の関門をクリアだ。

「あなた、カイフンが、カイフンが帰って来ましたよ!」

奥に声を掛ける。何事かと驚いて見ていたアルバイトの女の子が目を丸くした。この人が「あの」リン・カイフンなのか。シティを席巻するGCC(地球十字団)の若きリーダー。十代の少年少女が憧れる次世代の救世主。

カイフンの父、リン・シャオチンは、少しだけ顔を玄関に向けたが、特に厨房から出てくる気配は無かった。
お喋りで愛想のいい父。しかし、カイフンがミンメイのマネージャーをしていた頃に2度目の大ゲンカをして別れたままだ。
あれから3年も経つ。父の怒りは溶けているだろうが、不器用な父がカイフンを許すキッカケを与えてあげなくてはならない。
カイフンは深々と頭を下げた。

「父さん、ご無沙汰しています」

「あなた、顔を見せてあげて」

母のフォローが心強い。カイフンはゆっくりと厨房に近付き、顔の見えない所で話し始めた。

「あれから世界中を回りました。たくさんの経験をして、今は貧しい人達を救う為の団体にお世話になっています。シティに住まいを定めたので、もう一度父さんと母さんの顔を見たくて帰って来ました。もし良かったらまたここで飯を食わせてください」

母のフェイチュンは涙を流しながらカイフンの肩に手を置く。

「何を言うんだい。ここはお前の家だよ。お前の部屋も、今もそのままなんだ。いつでも帰っておいで」

ねぇ、あなたと母が厨房に声を掛ける。奥からは「勝手にしろな」とだけ返事が返ってきた。
よし、最大の難関突破だ。


「食事は?朝ごはんは食べたのかい?ささ、座って座って」

勧められるままにカイフンは腰を降ろす。興味深げにジロジロとカイフンを見ながらアルバイト店員がお茶を持って来た。
カイフンは「ありがとう」と笑顔を返す。年若いアルバイトは顔を赤くして引っ込んだ。

簡単な朝食が運ばれて来る。懐かしい匂いだ。食べ物の記憶だけは、いくつになっても忘れようがない。父の味、リン家の家庭の味だ。

笑顔で円卓に座る母。父も、チラチラとこちらを覗いている。雰囲気は歓迎ムードだ。これなら最後の関門も容易そうだ。


「ところで母さん」

慎重に、さり気なさを演出してカイフンは口を開いた。

「ミンメイはどうしてるかな?元気だといいんだけれど」


彼女が度々、娘娘に滞在している事は調査済みだった。
カイフンは笑顔で母に語りかけた。




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アラスカの夏、7月。

アラスカの夏、7月。
「アルテミスの目」事件での謹慎処分も明け、一条輝は軍の広報の仕事に精を出していた。

次世代制式戦闘機にVF-4が正式採用され、セイレーンという社内コードも「ライトニングⅢ」と改められた。いま、オーテックはフル体制で量産を急いでいる。

輝はその次世代戦闘機のアピール係だ。VF-4がどんなに優れ、どれだけ活躍出来るのかをマスコミを通じて世間に伝えて行く。
「宇宙戦争の英雄」という広報部の作り出した虚像は正直違和感しか無かったが「嘘は一言もついていません」とチーリンにピシャリと言い返されて輝は黙るしか無かった。


輝の周辺環境も、大分変化していた。
アポロで未沙に指輪を返されてから2ヶ月。何度もアポロに連絡を取ろうとしたが、未沙は完全に輝を拒否していた。なりふり構わずクローディアや、果てはグローバル総司令にまで助力を乞うたが、いずれも冷たい反応だった。もしかしたら既に未沙から話が回っていたのかも知れない。
ヴァネッサやキムは当然ながら味方してくれなかった。アポロへの異動も、観光客としての渡航も拒否された。輝は孤軍奮闘したが、結局地上で独り相撲をしているだけで月日は流れ、段々と未沙を「失った」のだと言う事実を実感し始めるだけだった。


結局、輝にとって「大切な物」に気がつくのが遅かったという事になる。
あまりに身近過ぎて、その輝きの価値を忘れてしまっていたのだ。

世の中は、無くしてみて初めて分かる事ばかりだ。輝は寝る前に毎晩月を見上げる。彼女はどうしているだろう。どんな気持ちで指輪を外したのだろうか。


辛かったが、仕事に打ち込む事で色んな鬱屈したものを忘れていた。その、仕事上のパートナーであるチーリンとは以前に比べて大分いい関係になって来たと思う。

アポロから帰って以来、チーリンの態度に変化が見られたのだが、精神的に追い詰められていた輝はその変化にすぐには気がつかなかった。
「あれ、なんか優しくなったな」と感じる様になったのはつい最近の話だ。

ただ、彼女の「早瀬輝」に関する発言の真意をまだ輝は確認出来ていない。その事を聞き出そうとは思っているのだが、なかなかそうしたチャンスに巡り会えなかった。


今回のパーティーは、そのチャンスだと言えた。
オーテック主催の「ライトニングⅢ」正式採用祝賀パーティー。
シティ最大のインペリアルホテルで行われるビッグイベントで、輝はチーリンと二人きりになる機会があった。

7月1日の事である。




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「会長が遅れているそうです」

「会長が遅れているそうです」

今やマネージャー然として輝の仕事を取り仕切るリン・チーリン。
階級も一つ昇進して大尉となっていた。表向きは広報活動効果への一定の評価となっているが、VF-4の制式採用が人事に関わっているのは誰が見ても一目瞭然だった。

「ああ、そう」

ブルちゃん会長自体には大して興味のない輝は適当に返事をしたが、部屋に入って来たチーリンがいつもの軍服ではなくワインレッドのサテンパーティドレスだった事に驚く。

胸元のレースデザインと、ボタンホルターネックがなんともキュートでタイトなワンピースだ。ウェストにあしらわれたプリーツとバラのモチーフが可憐な印象を添えている。

専門的に言えば「胸の小さい人向け」の可愛らしいアメリカンスリーブなのだが、そんな彼女の苦労も当然ながら輝には分からない。ただいつもと違うその様子に目を見張るだけだ。

輝の視線に気が付いたチーリンは、少し頬を染めて顔を背けた。
ミディアムロングの艶のある黒髪が、クラシックなポンパドールにまとめられている。

「か、会長のご厚意で、ドレスをいただいたので…」

あのスケベじじぃめ。
輝は頬の垂れたブルドッグ会長の顔を思い出した。いわゆるオーテックの産業スパイとも言えるチーリンは、世界最大の軍需企業の支配者とどういう関係なのだろう。
これまでの経緯を考えると、多少は下世話な妄想を持たなくもない。
いや、さすがにそれは無いか。

「准佐も礼服、似合っておいでですよ」

話題を逸らそうと、チーリンは輝の衣装を褒めた。
相変わらずの童顔である輝が軍の礼服など着ればそれこそ七五三にしか見えないのだが、そこは新統合軍広報部。ウェストを絞れるだけ絞り、究極のスリムスタイルを作ってアダルトなシルエットを演出していた。
これらの努力のお陰でお子様扱いを免れた輝だが、特注の礼服はあまりに窮屈で正直息が詰まった。

「こんなもの、すぐ脱ぎたいよ」
「いけません、准佐はパーティーの主役の1人ですよ」
「そんなのパイロットの仕事じゃないよ。オーバーワークだ」
「パイロットではなく“英雄”のお仕事です。ホラ、さあ行きますよ」

レースの手袋を嵌めたチーリンに手を取られて、輝は立ち上がった。
今日のパーティーは政財界から軍部まで大物揃いなので「もしかして未沙も」と少し期待したのだが、チーリンから「因みに早瀬大佐は来ません」と先に“気の利いた”報告を受けていた。


「やれやれ、いつからナイフとフォークが操縦桿代わりになったんだ?」

「血生臭い戦いよりも、退屈な平和の方が何倍も価値があります。それでいいじゃありませんか」

ヒールサンダルのチーリンに背中を押されて、輝は渋々控え室を出てパーティー会場へと入っていった。




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iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

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