『早瀬の血』 目次

地球からの脱出を目論むゼントラーディ残党と、それを阻止しようとするマクロス陣営との戦い。

早瀬未沙とその一族の物語。


 1 早瀬の家は、代々優れた軍人を排出してきた名家だ。

 2 「おお未沙、何年ぶりだろうか」

 3 親族たちと未沙は食事を済ませた。

 4 9月に入って、緯度の高いマクロスシティは早くも肌寒くなってきていた。

 5 艦長を引き受けた話は、未沙がヒカルに別れを告げるつもりで彼の家を訪れた時に伝えた。

 6 男と女は、身体を重ねた後だった。

 7 幕僚幹部会議は朝8時から始まった。

 8 未沙はその日、珍しくスカーフを巻いていた。

 9 スカーフ姿の未沙を見たキムがニヤニヤしながら挨拶してきた。

10 「何しろ地球人ですからな」

11 マイストロフ准将がかつての敵、ブリタイに声を掛けた。

12 未沙の手を握って、クローディアが心配そうに聞いてくる。

13 ドアの両脇に女性士官が立っていた。

14 その件は、情報の漏洩を忌避して極秘扱いとなった。

15 「遼子さん…」

16 未沙の顔が緊張に張り詰める。

17 未沙は倒れていた。

18 室内の明かりは消されていた。

19 マクシミリアンの日記 (8月30日〜10月13日の抜粋)

20 マクロス指令センターの朝は早い。

21 「早瀬の血」校了にあてて



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ジャンル : アニメ・コミック

早瀬の家は、代々優れた軍人を排出してきた名家だ。

早瀬の家は、代々優れた軍人を排出してきた名家だ。
その歴史は100年にも及び、それぞれの時代において政治的軍事的に世の中へ広く影響を及ぼしてきた。

歴史に詳しい従兄弟によると、早瀬の姓は岡山県を中心に栄えた古代史族なのだという。そんな昔の話にまったく興味はなかったが、自分の血縁が世の中に貢献してきたというのは、幼い未沙にとって頰が紅潮するくらい誇り高い事だった。

本家の父には、自分しか子供がいなかったため、親戚中こぞって未沙を可愛がってくれた。
自分が特別な存在のような気がして、幼い頃の未沙は早瀬の家が好きだった。大人達の思惑まではよく分からなかったが、未沙にとってはみんな優しい親戚のおじさんおばさんだったのだ。

なので、男児に恵まれない父や母の苦しみを理解出来たのは、随分大人になってからだ。

未沙には、年の離れた仲の良い大好きな従兄が5人いた。
早瀬の分家の男達は、当然の様に皆軍人だった。優しく頼もしいお従兄さま達。
ライバーの存在が無ければ、戦争が無ければ、ひょっとしてこの中の1人と縁談を組まされていたかも知れない。
成長した未沙を見て、その美しさに従兄たちは心打たれたものだった。

5人の従兄のうち、統合戦争で2人、その後の星間戦争で2人が亡くなった。
母を病で、反発していた父も星間戦争で失った未沙は、早瀬本家の唯一の生き残りとなり、数少なくなった一門の将来を背負う事を期待された。
士官養成所を出た頃から、父への反発もあり早瀬家と距離を置き始めた未沙自身は、もはや家名に縛られる事を厭うていたが、なんの力もない残された早瀬姓の人々を見捨てるには、彼女は情が深すぎた。

未沙にとって、早瀬の血は歩んできた人生の半分以上を占めていたのだ。



「こんな格好で御免なさいね」

新統合軍の中枢、マクロス指令センターの中で未沙のその格好は確かに浮いていた。
丈の短い黒い上着に黒いタイトスカート、襟から覗く白いシャツはほんのりパール調に輝いている。

「黒は女を美しくみせる」とは昔の言葉らしいが、なるほど見慣れた士官用の制服以上にこの日の未沙は艶めかしく、センター内の男性スタッフの視線を独占していた。

「い、いえ、あの、むしろ光栄です」

普段とは違う上官の可憐な?装いに、オペレーターの町崎健一はドギマギして見当違いの返事をしていた。
未沙の背後から後光が差しているようで、とても目を合わせられない。

「なあに、それ」

未沙がクスクスと笑う。
そんな様子まで、指令センターの他の男性スタッフがチラチラ覗き見ているのを、航空管制主任のシャミーがぷりぷりと湯気を立てて怒っていた。

「やぁね、男連中ったら。
中佐を見て鼻の下伸ばしちゃって」
「まぁ、中佐の無自覚な色気も問題だけどねー」

シャミーの怒気を受けて、隣りのキムが頬杖をついて応えた。
女のキムから見ても、最近の早瀬中佐の大人の色気は凄い。
別に元から美人だったが、あの一条大尉と付き合いだしてからは女に磨きがかかりまくりだ。恋とはこうまで人を変えるものなのか。

「私も素敵な恋がしたい…」

ため息混じりにキムが呟く。シャミーがなにそれ、と不思議そうにキムを見やった。

未沙は本当なら、今日は非番だった。
早瀬の家の法事に出席する為に、フォーマルウェアで出掛けた矢先に指令センターから呼び出されたのだ。
現場で判断しかねる案件だったので、未沙が顔を出してくれてセンタースタッフとしては助かったのだが、普段とは違う未沙の淑やかな出で立ちに、主に男性スタッフの挙動不審振りが目立っていた。
キムは「お前らの恋仇はあの一条ヒカルだぞ!」と、一人一人怒鳴りつけてやろうかと思った。

「じゃあ、あとはお願いね」

町崎の肩をポンと叩き、未沙は指令センターを後にした。町崎が嬉しそうにデレデレしているのが我慢出来ずに、キムとシャミーは後ろから椅子を蹴り飛ばす。
指令センターに、椅子の倒れる音と可哀想な町崎の悲鳴が木霊した。


軍関係者の多かった早瀬の家では、地球上の人類のほとんどが死に絶えた星間戦争の後でも、月面アポロ基地に居て難を逃れた親族たちがまだ結構残っていた。
マクロスシティに程近いヨークシティでは、難を逃れた日本人が多く生活を営んでいて、早瀬の家の墓もそこにある。もちろん、墓標だけで中身はない。
今日が誰かの命日というワケではないけれど、立て続いた戦争で多くの命を失った遺族達が一堂に会する日として大叔父が呼び掛けたのだ。
父母の墓前に立つ機会を、忙しさにかまけて作れなかった未沙はこの日、非番を調整して向かっていた。

飛行機でものの一時間もかからず、ヨークシティに降り立った。よく整備された空港だったが、角角には銃を携帯した軍服が目立つ。
まだ世の中は治安維持の力を必要としている。悲しい事実だが、自分達が必要とされている以上は力の限り働くしかない。
未沙は心の中で敬礼して兵士の前を通り過ぎた。

初夏の日差しの中、タクシーに揺られて目的の墓地を目指す。
ヨークシティの郊外に位置する巨大な墓地園は多くの軍関係者が眠っていた。
車窓から外の景色を眺めると、意外に樹木が多いことに驚く。再生計画がうまく行っている証拠だ。この様子なら、あと数年で以前の世界に近い景観を取り戻せるかも知れない。

「たまには外に出てみないとダメね」

司令部でデータとばかり睨めっこしている日常を思う。未沙はいま、この外の世界の新しい刺激の数々を楽しんでいた。
しかし車が墓地園に入ると、居並ぶ十字架の多さに気が重く沈んでゆく。
ほとんどは戦争で亡くなった犠牲者の墓標だ。その大半は早瀬の家と同じく中身のない墓標だろう。
ボドル基幹艦隊の砲撃で、地球上の町々は一瞬にして蒸発してしまった。墓に入れる遺体などない。

軍属、民間人、政治家、子供、老人、家族、恋人たち…
様々な人の魂がここに祀られている。
未沙の父と母も…

「しっかりしなきゃ」

不意に涙が滲んできて、未沙は自分に驚いて叱りつけるように声を出した。
運転手が怪訝そうな顔をしたのがミラー越しに見えたが、特に声を掛けてきたりはしなかった。

車は墓地園の高台に向かっていく。
そこには、早瀬の家の者たちがすでに集まって未沙の到着を待っていたのである。




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「おお未沙、何年ぶりだろうか」

「おお未沙、何年ぶりだろうか」

車を降り立った未沙を、和装の大叔父が迎えてくれた。
墓地園の中でも眺めのいい高台にある、早瀬の墓。墓碑にはたくさんの名前が書いてあるが、1番新しいところに父と母の名前が並んでいる。

「大叔父様、ご無沙汰しております」

未沙は丁寧にお辞儀をした。それを合図にしたかの様に、親戚達が次々と未沙の周りに集まって声を掛けてくる。

「未沙ちゃん!また綺麗になったね」
「伯父さん、遅くなってすみません。シティで急用が出来たものですから」
「未沙さんがお忙しいのはよく分かっていますわ、お気にされないで」

こんな親族との世俗的なやり取りが今は心地良い。日常の自分とはまた違った面が自然に出てくるから不思議だ。

「未沙お姉ちゃんだ!」

不意に叫び声が聞こえたかと思うと、何かが未沙の足元にぶつかって来た。
見れば、まだ小さな男の子…未沙の従弟の早瀬優太だった。

「あら優ちゃん!
大きくなったわね、驚いたわ!」

赤子の頃、未沙が子守りをした事もある男の子だ。1年以上会っていなかったが、男の子の成長とは早いもので、もう身長が頭一つ分は伸びているだろう。

「優太は本当に未沙ちゃんが好きねぇ」

優太の母親がからかうように言うと、男の子はムキになったように拳をあげて言い返した。

「お姉ちゃんは、優太のお嫁さんになるんだよ!」

唐突なプロポーズに、その場の親戚一同はドッと笑い出す。男の子は真剣そのものだったが、悪いとは思いつつ未沙もつい笑ってしまった。

「お姉ちゃんは僕と結婚するんだ!」
「優太、未沙ちゃんはあんたと違って大人なのよ」

優太の母が呆れた子ねぇと息子を小突くが、男の子は未沙から離れなかった。

「そうね、優ちゃんがもっと大きくなったらまたプロポーズしてちょうだい」

未沙が優しく頭を撫でてあげると、男の子は嬉しそうに約束だよ!と叫んで走り去っていった。耳まで真っ赤にしていたのがとても可愛らしい。

「ゴメンね未沙ちゃん、優太のやつあなたに会えるの凄く楽しみにしてたのよ」
「いいえ叔母さま、とっても光栄ですわ」

笑いを含みながら未沙が応えると、叔母さまは興味津々といった様子でこういった場では慣例的な質問を繰り出す。

「ところで、未沙ちゃんはもういい人は居たりするの?」
「やだ、何言ってるんですか」

未沙が赤くなるのを確認して、親族のおば様連中が根掘り葉掘り聞き出そうと迫ってくる。
未沙はタジタジになりながらも集中砲火をなんとかかわして、父母の墓前まで退避してきた。

早瀬の墓の前では、未沙より少し年上の女性が、座り込んで静かに手を合わせていた。その後ろ姿を見た時に、美沙は急に胃が重くなるのを感じた。

「遼子さん…」

早瀬遼子は立ち上がると、未沙の方を振り向きもせずに行ってしまった。一瞬呼び止めようかと思った未沙だったが、上げかけた右手の肩に、別の手が置かれてそれを制した。

「気にすることは無い、放っておきなさい」
「アキラ従兄さん…」

未沙の、10歳上の従兄が静かにそこに立っていた。
かつて未沙がまだ小さかった頃、いつも優しくしてくれた大好きな5人の従兄。2人は統合戦争で、もう2人は星間戦争で亡くなってしまった。早瀬アキラは、未沙にとって最後の従兄だ。

「陽一の事はお前に責任は無いんだ。気に病むのはやめなさい」
「…はい」

未沙は辛そうに目を伏せた。
統合戦争で戦死した早瀬陽一は、アキラと同い年の未沙の従兄の一人だ。あと少しで戦争が終わるという時に、反政府ゲリラの自爆テロに巻き込まれて亡くなった。
未沙が17歳の時だった。
遺品の中に、未沙に当てた手紙がみつかった。机の奥に大事にしまってあった事から、実際に出すつもりはなかったのかも知れない。その内容は、美しく成長してゆく年若な従妹への抑えきれない想いが綴られていた。

手紙を開けたのは妻の遼子だった。彼女はもういなくなってしまった夫ではなく、まだ少女に過ぎなかった未沙をなじった。
そこから親族に手紙の内容が知られてしまう。父との確執以上に、未沙が早瀬の家から遠ざかった原因の一つとなった。

未沙にとって、陽一は優しいお兄さんだった。自分が恋愛対象として見られているとはまるで思わなかった。

「陽一は馬鹿だったが、お前の事を大事に思っていた。それだけ忘れなければいい」

未沙は悲しそうに頷くと、墓標の前にしゃがみ込んで手を合わせた。
父と、母と、陽一従兄さんの魂が救われますように。

そんな未沙の後ろ姿を、アキラは静かにじっと見つめていた。




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親族たちと未沙は食事を済ませた。

大叔父の手配してくれたヨークシティの日本食レストランで、親族たちと未沙は食事を済ませた。
あまり長居はしたくなかったが、しつこく勧められて少しだけアルコールも口にした。

「未沙はいまマクロスの指令本部だったな」

同じ軍属のアキラが、気づかって未沙を連れ出してくれる。ウェイターにタクシーを頼むと、待っている間に店の入り口で短い立ち話をした。

「毎日忙しいかい?」
「ええ、でも優秀なスタッフが集まっているからとても助かってるわ」

未沙はそう答えたが、幾人かの顔を思い浮かべて、ちょっと話を盛ってしまった事を否定出来ないとも思った。

「アキラ従兄さんは?いまどちらにいるの」
「アフリカだ。南アフリカのアビントン空軍基地にいる」
「随分遠いわね」
「なぁに、今の時代、世界中飛行機でひとっ飛びさ」

笑っていたアキラがふいに真面目な顔になった。

「未沙はいま幸せかい?」

少し驚いたが、笑顔で未沙は答えた。

「ええ、とても」
「好きな人がいるんだね?」
「…ええ」
「軍人か?」

未沙は小さく頷く。
ちょっと恥ずかしかったが、おばさん連中には言えなかった事も、アキラ従兄さんには素直に言えた。

「やっぱり未沙は、紗紀子おばさんより、隆司おじさんの血を引いてるな」

アキラはまた優しく微笑むと、未沙から視線を外してとうとうと話し出した。

「君は隆司おじさんの件で随分苦労しただろうけれど、もうそれも忘れろ。
自分の幸せの為なら、早瀬の名前を捨てたっていいんだぞ。遠慮なんかするな」
「…アキラ従兄さん?」

父親の名前を出されて、未沙は不思議そうにアキラを見た。アキラ従兄さんは、何故こんな事を言い出したのだろう。

「タクシーが来たな」

アキラが立ち上がる。未沙もそれに続いた。

「それと…遼子だが」

歩きながらアキラが話し続ける。

「許してやってくれ。アレは弱い女だ」

未沙はどう答えていいかわからず、はいとだけ返事をした。


「また会いましょう」

タクシーに乗り込んだ未沙は、窓を開けて仲良しの従兄に笑顔を向ける。優しく笑い返したアキラが、最後に未沙に質問をした。

「名前、なんて言うんだい?」

先程の話の続きだと分かった未沙は、頬を染めて答えた。

「一条…ヒカルっていうの。今度従兄さんに紹介するわ」
「楽しみにしてるよ」

手を振って、未沙は去っていった。早瀬アキラはそれを見届けると、ポケットに手を突っ込んで静かにその名を呟いた。

「一条…ヒカルか」




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9月に入って、緯度の高いマクロスシティは早くも肌寒くなってきていた。

「というワケで、君のお従兄さんに会ったよ」

9月に入って、緯度の高いマクロスシティは早くも肌寒くなってきていた。
久し振りに早めに勤務を終えた未沙は、クローディアと待ち合わせてシティの高級繁華街へと繰り出している。

フォッカーと付き合う様になってから、強目の酒を好むようになったクローディアが「一緒にどう、美味しいんだから」と聞いたこともないお酒を勧めてきた。
そこまでお酒に強い未沙ではなかったが、クローディアの勧めと冒険心とで試してみたら結構イケた。
ヒカルに言ったらどう思うだろう?強いお酒を飲む女は嫌いだろうか?

そんな事をボンヤリ考えていたら、当のヒカルから携帯に着信が入った。
未沙がドキドキしながら電話に出ると、出張先の中米でヒカルがアキラ従兄さんと会ったというのだ。
何でも、中米で開かれている戦闘機の技術研修会に南アフリカ方面軍のチームを引率してきたらしい。
ヒカルは技術研修の監督官として現地に赴いているので、アキラ従兄さんの部下達をしごきまくってやるよ、とうそぶいていた。

「良かったわ。同じ軍属だし、今度紹介するつもりだったの」
「しかしイケ好かないなぁ。
あの人、自分の正体ワザと明かさないで『未沙は元気か』だなんて言うんだぜ。まったく、俺はてっきり…」
「てっきり、なぁに?」

未沙は悪戯っぽくクスクス笑った。

「まさかあなた、アキラ従兄さんにヤキモチ焼いたの?」
「そ、そんなんじゃない!ただちょっと…」
「ただちょっと?」

未沙は楽しそうに聞き返した。
置いてけぼりのクローディアが、2人の会話を漏れ聞いて肩をすくめる。
きっと電話の向こうの坊やは耳まで真っ赤に違いない。

「もういいじゃないか、そんな事よりこっちは暑いよ」

ヒカルが強引に話を切り替えた。子供のような反応に、未沙も意地悪はこの位にしてヒカルの話を聞いてあげる。

「シティはもう寒いんじゃないか?風邪なんかひくなよ」
「…ありがとう」

ヒカルの優しい言葉に、未沙はじんわりと心が満たされるのを感じた。
昔のぶっきらぼうなヒカルと違って、最近は未沙のことを気遣う言動が増えた気がする。
彼の中で、未沙との関係も日々少しずつ変わっているのかもしれない。それとも単に彼が大人になっただけだろうか。
何にしても、未沙は幸せだった。

「じゃあまた電話するよ」
「うん、私も」
「しばらくお預けだね」
「…お預け?」
「セックス」
「…バカ!」

パッと顔を赤らめて、未沙は携帯を切った。こういう子供っぽいところはやっぱり治らないみたいだ。

「仲良いのねー」

当てられっぱなしのクローディアが、頬杖をついて半目でゴチる。
ヒカルとの会話に夢中で、途中からクローディアの存在をすっかり忘れていた未沙は、今までの会話を聞かれていた事を思い出してボッと顔から火を吹いた。

「いつまでも子供っぽくて、嫌になっちゃうわ」

強がってみせるが、先程までの嬉しそうな様子からして説得力がない。クローディアはやれやれといった感じでため息を一つついた。

「アキラさんて、従兄弟?」
「ええ、南アフリカのアビントン空軍基地にいるの。いまヒカルと同じサンサルバドルに来てるんですって」
「へー、そう」

クローディアは意味ありげな視線で未沙を見やる。

「親戚のお従兄さんに紹介だなんて、いよいよご親族も公認のカップルね」
「そ、そんなつもりじゃないけど…」

嬉しそうに否定する未沙に、ちょっとだけ真面目な顔をしてクローディアが続けた。

「でもあなた達、そろそろ結論を出してもいい頃じゃないかしら」
「やだ、なぁに突然」
「だってあなた、移民船の話、受けたんでしょう?」

その瞬間、未沙の表情が固まる。
クローディアは構わず続けた。

「一条君はその事知ってるんでしょう?
ちゃんと話をしてるの?」
「…うん」

未沙は急にしぼんだスポンジの様になってしまった。先程までのはしゃぎっぷりが嘘のようだ。

「不器用なあなた達の事だから心配なのよ。後悔だけはして欲しくないわ」

フォッカーの件もある。クローディアに言われると心の底から沁みた。
ただ、未沙には未沙の考え、気持ちがあった。その事を、どう言葉に表したらいいのか…
今はそれだけがもどかしい現実だった。




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