『ヴァーミリオン作戦』 目次

地球からの脱出を目論むゼントラーディ残党と、それを阻止しようとするマクロス陣営との戦い。

アフリカの熱い一日。


 1  10月8日 水曜日

 2  三機のヴァーミリオンと、

 3  「大尉、よろしいですか?」

 4  入隊した理由を話すキッカケになったのは、

 5  「俺、ミンメイ好きなんですよ」

 6  ブリーフィングルームに行くと、バルトロウが食事を取っていた。

 7  フランスはほぼ全滅していた。

 8  すぐにフランスを発ってエジプトへ向かった。

 9  エジプトのアリーシュ基地に到着した一行は、

10  ヴァーミリオンの最終調整は宵の口には終わった。

11  「なんだか寝付けなくてね」

12  10月9日

13  戦闘機乗りに取って大事なテーマの一つ

14  作戦コード「モールヒル」(モグラの盛土)

15  アラスカ時間、2305

16  ショーンはヴァーミリオンパイロットとしてその名を歴史に刻んだ。

17  急降下が好きなパイロットというのは、あまりいない。

18  その報告に、アラスカのマクロス指令センターは沸き立った。

19  真っ赤に輝く炎の玉が飛び過ぎる。

20  「牙に?」

21  「慌てる前に、現状の確認を」

22  『発進までラスト20秒、貴機の健闘を祈る』

23  エジプトのアリーシュ空軍基地では、

24  マクロス指令センターは静まり返っていた。

25  ヴァーミリオンは地球の重力に引かれて落ちる。

26  「…重力異常?」

27  ワンのヴァーミリオン2が発進をコールして、少し経つ。

28  突然のコールに、誰もが顔を上げた。

29  発進の直前まで、指令センターからは

30  軍人とはなんだろう。

31  「そんなもの…」

32  人類最速の飛行機は、

33  急激なマイナスGで、臓腑が浮き上がるこの感覚。

34  ベテランの「勘」という物がある。

35  『ヴァーミリオン3、ピッチアップ成功!』

36  ヒカルは鼻血が出ているのを、

37  どのバルキリー部隊からも確認できた。

38  「ターゲットの破壊を確認」

39  最初の報告は、

40  ああ、致命的だ

41  まさか予算をケチったんじゃないだろうな…

42  その会話を思い出したのは、チェンのお陰だった。

43  ヒカルは胴体着陸の経験が無かった

44  アラスカ、マクロスシティ指令センター。

45  突然の下士官の発言は、

46  あまりの事に、誰も身動きひとつしなかった。

47  目が覚めた時、未沙はすぐに時計を確認した。

48  その日はすでに午前3時を回っていた。

49  ヒカルの家の玄関に着くと、

50  作戦名「ヴァーミリオン」

51  深夜にも関わらず、

52  一条ヒカルの日記 (7月11日〜10月8日の抜粋)

53  「本当か、それ」

54  「ヴァーミリオン作戦」 校了にあてて


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10月8日 水曜日

10月8日 水曜日
その日も、アラスカの冬空は曇っていた。


0630時
シティ郊外に新設された新統合軍基地において、超大型の航空機が三機、その巨体を駐機場から滑走路へと移しつつあった。

高高度専用輸送機ダイナソアは、いずれもその背中に漆黒のヴァーミリオンを背負っている。
これから大西洋を渡り、ヨーロッパに向かう。その先はアフリカ行きだ。


まだ薄暗い朝もやの中、それらを見送る一団が滑走路脇の連絡道路上にあった。本作戦の指揮官、早瀬未沙中佐以下、作戦本部の面々だ。
未沙は、ヒカルたち作戦チームの見送りに管制塔ではなくエプロンを選んだ。直接、彼らを送り出したかった。

アラスカの冬の朝は寒気が厳しく、コートの襟を合わせても温もりを感じられない。そんな中、ゆったり滑走路へと向かうダイナソアの後ろ姿を、未沙は敬礼で見送った。
背筋がピッと伸びている。
突き刺す様に冷たい風が、彼女の長い髪をたなびかせた。ようやく顔を出した冬の朝日に、キラキラと反射して幻想的に美しかった。


ほんの数時間前まで、ヒカルに愛されていた身体中に、まだ彼の感触が残っている。仮眠を取って、朝5時には2人で玄関を出た。

行ってきます、とヒカル。
行ってらっしゃい、と未沙。

2人にはそれで充分だった。


ダイナソアは定刻通りにアラスカの灰色の空へと飛び立った。
三人の、若きパイロット達を乗せて。


ショーン・シーブック少尉 18歳
ワン・ハイジェン少尉 23歳
一条ヒカル大尉 20歳


北極圏からの冷たい風に吹かれながら、アスファルトの上で、未沙はいつまでもいつまでも、昇りゆく朝日の向こうに消えゆく彼らを見送っていた。



いよいよヴァーミリオン作戦が始まる。




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三機のヴァーミリオンと、

三機のヴァーミリオンと、三人のパイロットを、三機のダイナソアが運ぶ。

一条ヒカルは、ダイナソアの客室の窓から、変わり映えのしない景色をボンヤリと眺めていた。

昨夜はかなり遅くまで、未沙とベッドで戯れた。幸せな時間だった。男として英気を貰ったと思う。

未沙は最初、今日は危ない日だからと身体を重ねるのを拒否した。ヒカルが半ば強引に迫ってベッドに連れ込んだカタチだ。
でも、未沙もそれ程嫌がっていなかったと思う。本当に嫌なら未沙はキチンと言う性格だ。あれは、押せば落ちるのを自分でも分かっている顔だった。

…もし出来てたらどうなるだろう…

昨夜は興奮のあまり、考えなしに欲望の丈をあらん限り未沙にぶち撒けた。冷静になって考えると、彼女に対して誠実じゃなかったんじゃないかと今更ながら思う。

意外と細かい事まで気にする、とは本来ズボラなヒカルをよく知る人に言われる言葉だが、これが細かい事なのかどうか若さに溢れるヒカルにはよく分からなかった。


睡眠時間が少なかったので、この移動中に寝るつもりだったが、いざとなると目が冴えて眠れない。
最初の目的地、フランス・トゥールーズ基地まではあと5時間もあった。

どれだけ見ても、窓の外は延々と同じ景色だ。黒い水面の連続に、正直ヒカルは退屈していた。

丁度そんな時だ。
ショーン・シーブック少尉と、ワン・ハイジェン少尉がヒカルの部屋のドアをノックしたのは。


眼下の大西洋は、果てしなく暗いブルーだった。




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「大尉、よろしいですか?」

「大尉、よろしいですか?」

相変わらず明るい笑顔のショーンと、軍人らしい軍人のワンの2人。

若者三人が揃うと、戦場に向かうというよりもクラブにナンパでもしに行く様な軽いノリがあった。

パイロット各員には、贅沢にも個室が充てがわれていたのだが、皆退屈していたらしい。これだけデカい飛行機なのだから部屋くらい余ってるんじゃないかと思って探検してみたら、ダイナソアには居住スペースは殆どなく、9割以上が貨物スペースだった。

ショーンがインスタントコーヒーを淹れてくれる。ありがとう、とヒカルはそれを受け取った。益々目が冴えてしまいそうだが、このままでもしばらく眠れないだろう。

「ショーンは昨日はどうしてたんだ」

作戦前夜は、戦闘機パイロットの習慣として「会いたい人に会う」というのがマクロス時代からの通例だった。
つまり、家族や恋人などに今のうちに会っておけという昔からの習わしなのだが、ショーンのその辺の事情をヒカルは良く知らなかった。

「俺すか?家で酒飲んで寝ました」

あっけらかんとショーンは笑った。
ニッと歯を見せる仕草がなんとも可愛らしい。コイツは人懐っこさもマックス並みだ。

「なんだ、女にプレゼントを買ってたじゃないか」

ヒカルは意外に思ってそう言った。ショーンならモテそうだ。実際若手女子のオペレーター達には彼の笑顔は人気がある。
ショーンはおどけて肩をすくめた。

「誕生日プレゼント、渡したんですがね。無口な子でして」

「まあ、じっくり行けよ」

自身も大した恋愛経験など無いクセに、ヒカルは先輩風を吹かせてそう言った。目下、自分は恋人と万事うまくいっている。それは男として自信を深める要因ともなっていた。

「ワンはどうしてたんだ」

ヒカルは、3つ年上の部下を見た。みんな年齢は近いので、気兼ねしなくていいのが良かった。

「自分は、家族と過ごしました」

ショーンと比べて静かな笑顔でワンが答える。
ワン・ハイジェンの家族はマクロスに乗艦していたので、星間戦争を生き残っていた。ワンは3年前まで上海で大学生をしていた。南アタリア島には、家族でバカンスに来ていてフォールド事件に巻き込まれたのだ。ワンは星間戦争勃発後に入隊した派で、ヒカルの後輩にあたる。

「父母と弟妹が、送り出してくれました。一族の名を高める事を期待されています」

ワンの顔は誇らしげだ。
ショーンといいワンといい、立身出世に興味のある若者が多いな、とヒカルは舌を巻いた。
振り返って、自分は何もそういう事を考えて来なかった。
昔、初めて部下を付けられた時も、むしろ迷惑に思ったくらいだ。いちパイロットという立場が最も気が楽だった。

その点、未沙は偉いと思う。あんな軍の中枢にいて、部下もたくさんだ。指令センターのボスだって?とてもヒカルには真似できない。くわばらくわばら。

「大尉はどうなんです?彼女いるんでしょう?」

ショーンがニヤニヤしながら聞いてくる。松木の話では、自分と未沙は例の一件以来、結構噂になっているらしい。
コイツらがどこまで知っているのか分からないが、とりあえずヒカルはとぼけておいた。

「まぁ、いるようないないような」
「何すかそれ」

ショーンはガッカリした顔だ。ワンも苦笑する。
まぁ、そのうちな、と適当に答えた。

3人は、たわいも無い会話を交わしていた。とても楽しかった。




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入隊した理由を話すキッカケになったのは、

3人が入隊した理由を話すキッカケになったのは、ヒカルの昔話からだった。

「ずっとエアアクロの大会荒らしをしててな、七回トロフィーを貰ったよ」

ヒカルにとって、今でも自慢だ。
誰の力も借りずに世界を旅し、実力で奪い取った栄光の証。過去の自分を褒めたいくらいだ。

その後、エアアクロチームの先輩だったロイ・フォッカーに呼ばれて、マクロスの進宙式にやって来てフォールド事件に巻き込まれる。
ミンメイと出会い、未沙と知り合い、軍人になった。
「ミンメイの為に入隊した」という処は話さなかった。


「俺は、田舎が嫌だったんです」

ショーンは肩をすくめて話し出した。どうもあの仕草はクセになっているみたいだ。表情だけは明るい。

「テネシー州ってのは田舎も田舎、100年前と同じ車が走ってるような恐ろしい所です。
あそこだけ時間が止まってたんじゃないかな」

ちょっとオーバーだったが、アメリカ人らしいものの例えにヒカルは笑った。ショーンの笑顔は青空の様に朗らかで、話していていつも気持ちのいい若者だ。

「そんな閉鎖的な町を出たかったんですけど、町の若者には2つしか選択肢がなくて。軍人になるか、ギャングになるか」

見捨てられた田舎町など、どこもそんなものだ。軍隊を拒否すれば、罪を犯しながら自分の居場所を探すほかない。
ショーンは軍人を選んで良かった、と今では思っている。だって、ギャングだったら今頃みんなと共に地球で焼かれていただろう。あいつらきっとバチが当たったんだ。

「俺は出世して、立派な将軍になりたいんです」

ショーンの立身出世志向は有名だ。人付き合いの上手い彼の、唯一鼻に付く弱点とも言えた。

「みんなそれぞれ違いますね」

戦前は学生だったワンは、感慨深げに呟いた。
彼の家は上海近郊の地主で、子供の頃から英才教育を受けてきたボンボンだった。
超難関の上海交通大学に合格し、政府系企業のインターンをしながら、外資系の融資を受けて学生起業にも成功した。
大学の長期休みを利用して、家族と共に南アタリア島の進宙式を見に来たのがその後の人生を決める。

「私は、自分たちビッグチャイナの優位性を証明したい」

ワンは真面目な顔で語る。

「かつて中国は、最大の人口国家でした。世界中の五人に一人が中国人だったんです。
過去の歴史を見ても、様々な文化は中国が発祥です。それはそうですよね、それだけ中国人が居たんですから」

なんか妙な事になってきた。これは歴史の授業か?ヒカルは微妙な顔をする。

「しかし、いま中国はありません。地球が焼かれた日、偉大な中華も運命を共にしたのです。
でも」

ワンは二人を見つめた。

「中国の遺伝子はまだ確かに残っている。この私の身に。
だから、私は中国と、家族と、自分の名誉の為に戦って、自らの優秀さを証明せねばならないのです」

「お前は充分優秀だよ」

ヒカルは笑ったが、ワンは笑わなかった。その代わりに、ヒカルにとっては久し振りの「もう聞きなれた話題」を真顔で振って来たのだ。

「一条隊長は、あのリン・ミンメイとも付き合っていたと聞いています。
彼女も、半分は中国人です。チャイナの血が、歌で人類を救った」

ショーンが真っ先に反応した。

「え⁉︎ 隊長マジですか!」

ヒカルは、もう本当に言い飽きたいつもの定番セリフを、極々自然に口から吐いた。
つい一昨日、ミンメイに会った事には触れなかった。

「そんなワケ無いでしょ、ただの知り合いだよ」




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