『いい天気だね』 目次

地球からの脱出を目論むゼントラーディ残党と、それを阻止しようとするマクロス陣営との戦い。最終章。

だって空が青いから。


  1 その部屋は薄暗く、

  2 原色の派手な装飾に

  3 「これも持って生まれた星なのかも知れんな」

  4 現れた意外な顔を前に、

  5 本当に参ったよ

  6 アキラはゆっくりと、元の丸椅子に戻った。

  7 先に視線を逸らしたのはアキラの方だった。

  8 シティをカムジンが襲った災厄の日。

  9 「文化の為に人を殺すのか」

 10 10月17日金曜日。

 11 ヴァーミリオン作戦はひとまず成功と言える成果を残した。

 12 マクロス指令センターの長である未沙の部屋は、

 13 キム・キャビロフは元々、マクロスの艦内管制担当だった。

 14 未沙は走った。

 15 未沙は口元を両手で覆い、

 16 「…あなた、自分の立場が分かってるの?」

 17 「中佐〜、ショックですう〜」

 18 秘書室からインターフォンが入った。

 19 「…どういう意味でしょう?」

 20 感動の抱擁の後は、仕事の話だ。

 21 情報部のニカ・チェーホフ少佐に出会った。

 22 「…どういうつもり?」

 23 ニカ・チェーホフには2つ年上の姉がいた。

 24 こんな卑怯な手を使ってくるとは思わなかった。

 25 チェーホフの心は、期待に弾んだ。

 26 マクロス指令センターの町崎健一曹長は

 27 気絶から目覚めたチェーホフに、

 28 突然の長期欠勤。

 29 呼び出したかった相手は、

 30 衝撃の新曲発表記者会見から8日。

 31 「大変だったね、もう体、いいの?」

 32 黒塗りの高級車から降り立ち、

 33 「…で?」

 34 収録を終えたミンメイは、

 35 「こ、こんな事許されないぜ」

 36 アフリカ行きの便は、早朝6時の出発だった。

 37 「君は行かなくていいのかい?」

 38 ジューバー基地はとても小さな基地だが、一応滑走路はあった。

 39 軍病院のエントランスホールで、Dr.ベコーに会った。

 40 早瀬未沙の日記(11月15日〜3月31日の抜粋)

 41 いい天気だね

 42 「いい天気だね」 校了にあてて



スポンサーサイト

テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

その部屋は薄暗く、

その部屋は薄暗く、窓にかかる浅いカーテンは全て閉じられていた。
カタカタと音だけのエアコンは余計に蒸し暑さを増長させているかの様で、不快指数を上げるのに一役買っている。
窓の外は、平和な昼下がりの午後といったところだろうか。いまの室内の温湿度はいかばかりだろう。

目を覚ました時、全身の痛みと痺れ、痒みに吐き気に寒気に倦怠感と、とにかく自分が酷い状態にある事だけは理解できた。それ以外はまったく分からない。身動きが出来ないのは、身体中に巻かれたギプスっぽい白い塊のせいだけなのだろうか。

あまり清潔とは言えないシーツに、何か匂いのする枕カバー。
ベッド脇には、小さなサイドテーブルの上に黒ずんだバナナが二本皿に乗っていた。馬鹿でかいハエが我が物顔でたかっている。

それより何より、ここは暑い。寝ているだけで、全身から汗が噴き出てくる。頭が痒くて気持ち悪かった。足も痒い。顔も脂っぽくて、きっと自分はいま相当臭いんじゃないだろうか。

腕に点滴をされていたが、口の中はカラカラで、乾いた唇はひび割れて痛かった。


窓の外では子供たちの遊ぶ声が聞こえる。あれは何語だろうか。
脂でベタベタにテカる癖っ毛を枕に擦り付け、首を左右に回して室内を確認しようとした。凄く痛い。
これはきっと首ギックリをやっているに違いない。戦闘機乗りの職業病だ。心当たりはあの体当たりの時だった。

ヒリヒリする舌を動かして、青年は弱々しく、しかしふてぶてしく声を発した。

「…水飲みて〜」

それが、3日ぶりに目を覚ました一条ヒカル大尉の、最初の一言だった。




テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

原色の派手な装飾に

原色の派手な装飾にまったく似つかわしくない陰気な空気が、薄ら寒いパーティールームを支配していた。

大勢の大人が、たった1人の少女の様子を気にかけて、デザイニングチェアで顔を覆って泣いているその子の周りに群がっている。


スタジオ・イングリッド・バーグマンco,ltd。
世紀のアイドル、リン・ミンメイが所属し、幅広いTVタレントを数多く抱える大手芸能プロダクションのひとつだ。ミンメイを獲得したのを皮切りに、最近ミュージシャンの売り出しに力を注いでいる。

その本社。マクロスシティにおける流行の発信地シュヴァンニュストリートの一角に構えた8階建ての立派なビルの最上階で、リン・ミンメイの新曲発表のお祝いと、バースデーパーティーを兼ねた大掛かりなイベントが開かれる…はずだった。

いま、パーティー会場は陰鬱な空気に支配され、静まり返った室内には主役であるミンメイのすすり泣く声だけが聞こえている。
事務所のスタッフ、役員、マネージャー、所属タレント、モデル、仲の良いミュージシャン、ファンクラブの代表や後援会の面子などが、いかんともしがたいその現実を前に困り果て、普段は勝気な少女の変わり果てた姿に戸惑いと憐れみの表情を投げかけていた。


事件は今日の正午に起こった。
ミンメイの新曲発表記者会見。その場に、彼女のスキャンダルをスクープしたばかりのIN TOUCHの下世話な記者が現れた。
嫌な予感がしたが、ここまでとは思わなかった。記者は、とんでもない爆弾を置いていったのだ。

「一条ヒカル大尉が、昨日アフリカで戦死したって話‼︎」

絶望の色をありありと浮かべた18歳の少女の顔を、照らし続けるフラッシュの嵐。
マネージャーはこの時ほど、芸能記者が腐った人間どもの集まりだと感じた事は無かった。

マネージャーはすぐにミンメイを車に押し込み、ここに帰ってきた。車の中でずっと下を向いて震えているこの小さな少女を、どう元気付ければいいのか皆目見当もつかない。

心配した社長や営業部長もすぐに会社に戻って来たが、誰が来たところで同じことだ。
下衆な三文雑誌のIN TOUCHだが、ミンメイと元カレをスクープしたその実力通り、ここまで大々的に言い切るからにはウラを取っているのだろう。
マネージャーは部屋の隅で、念のため携帯電話から古い知り合いの番号を呼び出した。

…出ない。

嫌な悪寒に背筋を侵されながら、別の番号をタップする。

こっちも出ない。諦めて切ろうとしたら、反応があった。慌てて耳に当てる。

『…どういう風の吹きまわしだ、ボーリゾン』
「チャベス、ちょっと聞きたいんだけれど」

3年ぶりの会話にも冷たい対応、そしてそれを意に返さないマネージャーのマイペースな態度。

「ヒカル坊やが死んだって本当?」
『なんでお前がそれを知ってる』

特別驚いた風でもないかつての戦友の言葉に、マネージャーは目の前が真っ暗になった。

「うそ…童貞はあたしが奪ってあげる約束だったのに…」
『地獄に落ちろ。
それはともかく、ヒカルは死んだと決まった訳じゃない』

いつも感情をあまり表さない戦闘機パイロット、「クリスチャン」ことチャベス・ビラノバは、いつも通りの声色で故ロイ・フォッカー麾下の旧スカル大隊仲間だった「オカマのボリ」ことボーリゾン・ボギンスカヤに語りかけた。

『ヒカルはまだ見つかってない。撃墜されたが、まだ見つかってないんだ』
「…そう」
『軍属を離れたお前が、今さら奴に何の用だ?ケツの穴でも痒くなったか』
「…ミンメイよ」

ボーリゾンの出した名前で、大方のあらすじは理解できたらしい。黙り込むチャベスに、涙声のオカマが言葉を続ける。

「可哀想に、大勢の前でその事実を知らされたの。あんな酷い仕打ち、許せないわ」
『そういう世界なんだろ?好きで選んだのなら甘えるな。忙しい、切るぞ』
「あ、待って」

ボーリゾンは見えない電話の相手にしなを作った。

「久しぶりなのに素っ気ないわ。愛してるくらい言えないの?バカ」

電話はすぐ切れた。ボーリゾンはため息と共に、重い足取りでミンメイが泣きはらすパーティールームへと戻っていった。




テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

「これも持って生まれた星なのかも知れんな」

「彼女には気の毒やが、これも持って生まれた星なのかも知れんな」

そう、よく分からない感想を漏らしたのはスタジオ・イングリッド・バーグマンのヒゲの社長だ。

「戦争で2人の娘を亡くしてな、君を見ると思い出すんや」

を殺し文句に、色んなタレントを口説き落として事務所を急成長させた人物だ。
雰囲気が町会長さんによく似ている、とミンメイに言われたが、誰のこっちゃと不思議がるだけだった。


社長の言う通り、あまりにも劇的すぎる1日だった。
ミンメイ初の作詞曲、しかも内容は自分自身の失恋実体験。その新曲発表の当日にぶつけてきたIN TOUCHのスキャンダル。そしてそのお相手の戦死報道。
条件として見れば、新曲の大ヒットは間違いない。ミンメイも、リアルな悲劇のヒロインとして更に多くの同情票を獲得出来るだろう。

だが、それを進んでやりたいと言う人間が、今のこのパーティー会場にいなかった。
人として、というのもあるし、まず何より、スタッフに愛されるこの天真爛漫な少女を守ってあげたいという空気が大勢を占めていたのだ。

「その、なんとか大尉が死んだってのは間違いないのか?」

ミンメイに聞こえないように、部屋の隅っこでヒソヒソと役員の1人がマネージャーに話しかける。
マネージャーの、元軍人という経歴を知っている人物は少ない。マネージャーは黙って首を振ると、ゆっくりとスタッフに囲まれるミンメイの元へ向かった。

「ミンメイ」

優しく声をかけ、肩に手を置いた。18歳の少女は、俯いて顔を両手で覆ったまま身じろぎひとつしない。デザイニングチェアの横で、心配そうな顔をしているセカンドマネージャーに目で合図をしながら、チーフマネージャーの旧スカル大隊員「オカマのボリ」ことボーリゾン元准尉は語りかける。

「昔の知り合いに、彼のこと聞いたわ」

ボーリゾンが手を置いたミンメイの細い肩が、ビクッと小さく反応した。ボーリゾンは優しく続ける。

「彼ね、行方不明なんですって」

ミンメイが顔をあげた。
大きくつぶらな瞳が真っ赤だ。目の下が腫れている。こんな小さな子供でも、女なのだとボーリゾンは強く感じた。

「…まだ死んだと決まった訳じゃないの」

「ヒカル生きてるの?」

震える声でミンメイが小さく聞いてきた。ボーリゾンはゆっくり首を振った。

「分からない。いまはまだ分からないのよ」

適当な誤魔化しで煙に巻くのは、彼女に対して誠実じゃないと思った。ボーリゾンは現実主義者らしく、いま分かっている事を彼女に告げるだけだ。あとは全力で励まし、彼女の立ち直りをフォローするしかない。

「…私、ヒカルが戦いから帰ってきた時に、もう行かないでって言ったの。
こんなツラい想いをしたくないからって。彼の為に歌も辞めるつもりだった。
…でも、ヒカルは戦いを選んだ。私を置いて戦争に行ってしまったわ…」

ミンメイは肩を震わせる。
ボーリゾンはしっかりとその肩を抱きしめた。

「軍人ってみんなそうよ。馬鹿ばっかりなの。
…私もね、好きな人がいたの。戦闘機パイロットよ」

ミンメイがマネージャーの顔を見る。ボーリゾンは微笑んだ。

「死んじゃったわ。不死身だなんて威張ってたクセに、あっさりと。
しかも、最後は女の部屋で息を引き取ったのよ、許せないでしょ?」

ボーリゾンは笑った。周りは、笑っていいのかどうか反応に困っていた。ミンメイはボーリゾンの話に耳を傾けている。

「ずっと憧れてた人なの。…無理矢理にでも、唇を奪ってやれば良かった。後悔ばっかりよ」

「…それ、男の人?」

ミンメイの質問に、ボーリゾンは笑顔だった。

「どうかしらね?
さぁ、これをお飲みなさい」

セカンドマネージャーが持ってきた温かなココアを受け取り、ミンメイの手に持たせた。ミンメイはコクリと頷いて一口含む。

ボーリゾンは可愛い我が子を見るような目で、ミンメイの髪をすいてあげる。彼女は、こうされるのが好きだった。幼い頃、母親によくされていたらしい。可愛がられるのに慣れている少女らしく、触れられる事に喜びを感じるのだろう。

落ち着きを見せるミンメイの様子に、周りもホッとした様子だ。
安堵の輪が広がる中で、ボーリゾンは密かに心の中で怒りが渦巻いていた。

あの記者…許せないわ…




テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

現れた意外な顔を前に、

現れた意外な顔を前に、ヒカルは微妙な表情をした。

「そんな顔をしてくれるな、一条君」

やけに親しげに、早瀬アキラは白い歯を見せた。このクソ蒸し暑い部屋でも、ピシッと軍服を着こなして涼しげな様子だ。ホント、未沙にソックリだとヒカルは思った。


ベッドに横たわるヒカルは、満身創痍の傷だらけだった。本人には見えないが、顔も擦り傷、アザだらけだ。両脚ともに簡易ギプスが当てられ、右手は使い古しの白い包帯でグルグル巻きになっている。
かろうじて左手だけが自由だったが、そこも指がいくつか裂傷を負ってカサブタになっていた。

身体を起こそうにも、痛みが走って身動き出来ない。その様子に気付いたアキラは、右手をあげてヒカルを制した。

「よしたまえ、アバラが6本折れている。
まったく、君のタフさには呆れるよ。死んでて不思議じゃないぞ」

アキラはヒカルのベッドをリクライニングさせて、上半身だけ起こしてくれた。自分は足側に丸椅子を置いてそこに座る。
ヒカルは寝たきりだったせいで、上半身を起こしただけで軽い貧血になった。
顔をしかめるのを見てアキラが笑う。

「ハハ、生きてる証拠さ。
君をあの飛行機から助け出した時は、息があるだけで奇跡だと思ったよ。
大した腕だ、あんな酷い所によく不時着させたね。それとも運かな?」

「…それはどうも」

痛みが酷く、不機嫌そうにヒカルは応じた。とても相手に気を使う程の余裕を持てそうにない。多分骨折による発熱もあるだろう。話をするだけでかなりキツかった。
しかし、アキラは遠慮する様子がない。

「しかし凄い新兵器だなあれは。
何と言う戦闘機なんだ?レーダーで捉えた次の瞬間には、戦艦は破壊されていたよ。まったく、参った」

「…ヴァーミリオンですよ。大佐、作戦に参加してなかったんですね」

ヒカルの言葉に、一瞬怪訝そうな顔をするアキラ。すぐに何か思い当たったようだ。

「…なるほど、君は何も聞かされていないんだな。
未沙も言わなかったのか」

「?」

ヒカルは訝しげに目を細める。
アキラは朗らかに笑った。本当に、いけ好かないくらい爽やかな軍人だ。

「君が破壊した戦艦はな、私の船だったんだ。
私が新しいゼントラーディ軍の指揮官なんだよ」

「…なんですって?」

ヒカルは耳を疑った。アキラは、悪びれもせずに笑顔で話していた。




テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

カテゴリ
プロフィール

びえり 

Author:びえり 
iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

最新記事
最新コメント
くせっ毛の飛行機乗り
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR