MCC -3-

今年26歳を迎えるケイト・アップトンが航宙士を目指したのは、人類初の移民艦に乗って『未知なる新世界への挑戦』を果たしたい…などという高尚な理由がある訳では、特に無かった。

単に付き合っている同じ軍属の彼氏が、メガロードへの配属を下命されたからだ。

人類初の星間移民艦メガロードは、ブリタイ率いるゼントラーディ艦隊が地球へ襲来するずっと前から、月面アポロ基地において建造が進められていた。ケイトの恋人は星間移民計画の重要ポストに抜擢され、まだ建造途中にあったメガロードへの乗艦が早い段階で決まっていたのである。

「一緒に宇宙へ来てくれるかい?」

優男の腕枕で囁かれたケイトは「もちろんよ」と微笑んで、翌朝すぐさま移民艦への志願を申し出た。

ハッキリとした顔立ちで、ぷっくりとした唇とボリューミーなブロンドヘアがセクシーさを際立たせている。軍服のシャツでは隠しきれない胸元が豊かな丘を形作り、基地内の通路を歩くたびに男性職員が残らず彼女を振り向いた。
その容姿から方々で噂にあがる事の多いケイトだが、士官学校を上位で卒業するなど軍人としても職務優秀な人材だった。なのでどこでも好きなポジションを選べたが、星図を読み取る航宙士の仕事にロマンティックなものを感じてこれに狙いを定める。

それがケイトが航宙士養成課程へ進んだ理由だった。元々、大層な動機などカケラもなかったのである。
実際に学んでみて、航宙士の仕事はそんなヤワな代物では無かった訳だが、年末に愛する彼氏からプロポーズを受けて浮かれていたケイトにとって、その程度の障壁などなんら問題にもならなかった。


「いいなぁケイト先輩。宇宙に行けて」

そんな彼女を先輩と慕うジン・ティエン曹長は、同じ航宙士養成課程にある後輩下士官だった。
183cmと女性としてはかなり上背がある。腰まであるスーパーストレートな漆黒の髪を頭の後ろで束ね、くりくりとした黒い瞳をキョロキョロと動かしている。
まだ駆け出しの士官候補生で、19歳と非常に若い。幼い顔立ちやあどけない仕草から、軍人と言うよりはまるで学生のような風貌をしていた。

小さな頃から星々の写真や神秘的な宇宙の映像を見るのが大好きで、可愛らしいお人形よりも父親の望遠鏡に噛り付いては夜空を見上げているような変わった子供だった。
お気に入りはX線を反射して赤紫に輝くマゼラン星雲だ。

「あなたもきっと行けるわよ」

ケイトは艶やかな笑みを浮かべてウィンクしてみせる。ケイト自身は栄光ある移民第一陣に参加が決まり、配属先も希望通りとなり、恋人との幸せな未来も約束されていて、人生に何の不満もない状態だった。
こんな時、人は他人に優しくなれるものだ。ケイトは慰めるように歳下の下士官の肩を叩いた。

「次の移民艦か、その次の次くらいにはね」

「やだ〜、そんなの何年も先じゃないですか〜」

ティエンはムスッと膨れる。そんな様子が面白くて、ケイトは背高のっぽな後輩のアタマを、腕を伸ばしてヨシヨシと撫でてあげた。

「仕方ないわ、メガロードの定員は決まってるのよ。こればっかりは競争だから」

多少嗜める意味も込めてケイトはそう言葉にする。私は実力で新造艦での航宙士の地位を手に入れた。それが欲しい者がいれば、この私に勝って奪い取るしか方法はないのだ。

背の高い中国娘はシュンとなる。ケイトは嫌味のない笑みを浮かべてティエンの広い背中を撫でてあげた。後ろで結んだ長い黒髪がツヤツヤと若々しく輝いている。

しかしこの子といい、メガロードの艦長になる予定の早瀬大佐といい、今のアラスカにはチャイニーズ系が多過ぎる。あのリン・ミンメイだってそうだ。
ケイトは周りを見回して、フロア内にいるアジア系の人数の多さに思わず鼻で息を吐いた。何でも戦前は人類65億人に対してチャイナ系民族は13億人いたらしい。実に世界の5人に1人がチャイニーズだったという計算だ。何という恐ろしい繁殖力だろうか。まるでネズミかプレーリードッグの様だ。
このままでは戦後のアラスカはチャイニーズによって占領されてしまうかも知れない。

正確には早瀬大佐は日本人だし、リン・ミンメイは日本と中国のハーフなのだが、ゲルマン系アメリカ人のケイトにはその区別は難しかった。
ケイトには北京と東京の区別も付かなかったし、何より典型的な南部白人の例に漏れず、彼女らに対して少なからず偏見の目を持っていた。それは蔑みであり、恐怖であり、憐れみであった。
勿論、そんな様子はおくびにも出さなかったが。

「さあ、行きましょう。MCCでの研修の時間だわ」

ケイトは腕時計を確認する。そろそろ19時近い。今夜はマクロス指令センターにおいて、シミュレータを使用した訓練をする予定になっている。
乗艦予定のメガロードが、MCCの三層構造システムを基本設計として流用していたからだ。

しょぼくれるティエンの背中を押しながらケイトは歩き出す。その進む先に、小柄なアジア人の女性士官が歩いて来るのが見えた。
あれは確か…MCCのセクション2統括官をしている人物だ。襟の中尉の階級章が通路の電灯を受けて輝いている。

ティエンとケイトは上官に敬礼をして道を譲った。相手は軽く敬礼を返して足早に通り過ぎて行く。
ショートカットのボーイッシュなアジア人。名前は何と言ったか…キミーだかキムだか。きっと彼女もチャイニーズに違いない。

心中はともかく、ケイトはあちこちに居るチャイニーズ(とケイトには見えている)に対して友好的に振舞いながらMCCを目指した。




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Re: No title

なにしろ「超時空」がマクロスですからね〜( ̄▽ ̄)
フォールド航行の場合、出現先は未来になってる筈だから、現在の状況だけ分かっててもダメなんですよね。この座標にフォールドすると3日間経過します。で、三日後にはこの座標に流星群が差し掛りますなんてなったら自殺行為ですから(;^ω^)

そうです、虹の彼方にでスター・アタックの座標読みをしてた航宙士の子です^ - ^ さすが、よく覚えてらっしゃいましたね!

裏ページのパスは変わってないと思うんですが…え〜と何だったかしら( ̄∀ ̄;)
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