HAPPY BIRTHDAY MINMAY at Monday.

「シュークリーム?」

小首を傾げてそう聞いて来るミンメイの様子が可愛らしくて、僕は思わず胸をときめかせてしまった。
イカンイカン、僕は自分の頭をコツンと小突く。お前は彼女のマネージャーだぞ。あの“人類の救世主”リン・ミンメイの栄誉ある担当マネージャーなんだ。

…サブだけれど。



僕の名はローランド・カムリ。シティの芸能事務所スタジオ・イングリッドバーグマンのオフィシャルスタッフとして毎日忙しい日々を送っている。
ウチの会社は、あの宇宙戦争で人類を救った「世紀のアイドル」リン・ミンメイも所属する大手の芸能プロダクションだ。選りすぐりのスタッフが「チーム・ミンメイ」として伝説のアイドルの芸能活動を微に入り細に入りサポートしている。

オカマのチーフマネージャーを筆頭に、背がデカくて馬鹿力のスタイリスト、レズビアンの変態ダンサー、その他諸々とにかくキャラが濃くて危険で厄介な一癖も二癖もある連中ばかり。
その中で唯一の良識派であるこの僕としては、世間の枠組みから外れてしまいがちなこのアナーキーな連中をうまく正しい方向へと導いてやらねばならない使命がある。

何せミンメイと言えば人類にとってもはや伝説の存在だ。彼女に尽くすことは人類社会への貢献と言っても過言ではないだろう。そんな自分の仕事を誇りに思う今日この頃である。お母さんやりましたよ。あなたの息子はこんなに立派な大人になりました。

「あ〜、えっとね」

僕は手元の資料を確認する。タブレットの液晶画面には『The Supremes』と書いてあった。

「シュークリームじゃなくって、シュープリムス…スプリームス?かな??」

「アメリカ訛りね。これ、シュープリームスって読むんじゃない?」

ミンメイがタブレットを覗き込んで来る。僕らは今、タブレットの置かれたテーブルを挟んでそれぞれのソファに腰掛けていた。僕の正面にいるミンメイがテーブルのタブレットを覗き込むと、当然ながら下向きになる訳で…あ〜、その、胸元の辺りがほら…

今日のミンメイは私服だった。ショート丈のブラックパーカーに、ベルト&ジップのアクセントが付いたパンク調のグレンチェック柄パンツを実にカジュアルに格好良く着こなしている。
が、問題はアウターの下だ。チラリと見える対照色の白シャツは深いVネックになっていた。ちっちゃなゴールドのハート型ペンダントがぷらぷらと揺れるその向こうには、豊かな肉球によって陰影が刻まれた神秘の谷間がその雄大な光景を覗かせている。

リン・ミンメイと言えば、そのあどけないルックスや言動から子供っぽいイメージがある。しかしいつも仕事について回る僕は知っている。ミンメイの体はしっかりと女らしく発育していて、マネージャーの僕でさえグラビア撮影時などは目のやり場に困ることがチラホラあるのだ。

果たして本人にその自覚があるのかないのか。今も無遠慮に前屈みになっていて、重力に引かれた2つの双丘が織りなす美しき谷間がくっきりはっきりと…

そのあまりにも赤裸々な光景に気を取られてうっかり油断をしていたみたいだ。僕の視線に気が付いたミンメイはムッとした顔でゆっくりと身体を起こした。プーっと頬を膨らませると、ぷんとソッポを向いてしまう。

「ふ~ん。オタク、そういう人だったの。知らなかったわ、まったく」

「あ、い、いやいや違う違う」

僕は青くなって否定する。この僕はかのスタジオ・イングリッドバーグマンのオフィシャルスタッフだ。アラスカでも一、二を争う芸能事務所の一員である。
大切な商品であるタレントをそんな目で見ている訳がない。…まあ無い事もないけど。

ていうかこの子は割りといつでも無防備過ぎるのだ。股上の浅いスキニーデニムの時も平気でしゃがみ込んだりするし、豊満な胸元を強調したタイト目のニットなんかで誰彼構わず男性の二の腕にしがみついちゃったりする。そりゃ誰だって勘違いするっちゅうねん。こういう小悪魔的な所はちゃんと治して欲しいと思う。まあ僕の時は別として。

「ホ、ホラ、これだよこれ。今度歌う原曲」

僕は不祥事を誤魔化そ…じゃなくて大事な仕事の話をしようと、咳払いをしながら手元のタブレットをミンメイに差し出した。液晶画面のPLAY MUSICを押せば、タブレットのステレオスピーカーから軽快なリズムイントロが流れ始める。すぐにハリのある女性の歌声がかぶさった。


I need love, love
To ease my mind
I need to find, find someone to call mine
But mama said

You can’t hurry love
No, you just have to wait
She said love don’t come easy
It’s a game of give and take
You can’t hurry love
No, you just have to wait
You got to trust, give it time
No matter how long it takes

But how many heartaches
Must I stand before I find a love
To let me live again
Right now the only thing
That keeps me hangin’ on
When I feel my strength, yeah
It’s almost gone
I remember mama said:

You can’t hurry love
No, you just have to wait
She said love don’t come easy
It’s a game of give and take
How long must I wait
How much more can I take
Before loneliness will cause my heart
Heart to break?


黙って聞いていたミンメイがポツリと呟く。

「…音が古い」
「そりゃそうだよ、これ1960年代の曲だもの」
「なんでまた今回はこんな古い曲なの?」
「さあ?それはマイケルズに聞いてよ」

僕は「知りません」とばかりに肩を竦める。ミンメイは「ふーん」という顔をして指を伸ばし、タブレットを弄り出した。多分リリックをチェックしているんだろう。

ミンメイは今週末、アラスカ最大のビッグ・プログラム「Saturday Night Live(サタデーナイトライブ)」通称SNLに何度目かのミュージックゲストとして出演する予定だ。

SNLはその名の通り、土曜の夜に繰り広げられる生放送の番組である。毎週新鮮な時事ネタを放り込んでくるスケッチ(コメディ)&ミュージックショーで、月〜金で仕込みをして土曜日に生放送という気狂いじみたハードスケジュールを八ヶ月サイクルでこなして行く。まさにTV界の鉄人レースだ。

今日は月曜日で、明日の火曜日には総合プロデューサーのローン・マイケルズと歌の打ち合わせをしなくてはならない。
その準備として今、マイケルズから出された課題曲の確認をしているという訳だ。
事務所のミーティングルームでは、僕とミンメイがこの半世紀も昔の古臭い曲を前に頭を捻っていた。

「まあ、意図は明日聞けば良いんじゃない?取り敢えず歌合わせしとこうか」

「…うん」

ミンメイはまだ納得していない顔をしていたけれど、そこは彼女もプロだ。曲取りが始まれば真剣な表情になって自分の仕事に取り組んでいた。

…そして意識せず、たまに前屈みになる。

僕はその度に興奮を抑えるのに精一杯だった。





to be continued for Tuesday.

関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
プロフィール

びえり 

Author:びえり 
iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

最新記事
最新コメント
くせっ毛の飛行機乗り
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR