僕と私の誕生日 -後編-

かろうじてその日の任務を終えた輝は、疲れた身体を引きずって這々の体で帰宅した。
今日は散々な一日だった。検査と言われてあちこちのラボを引きずり回され、パトロール任務では慣れない女の体でバルキリーを操縦し、マクロスに戻れば好奇の視線に晒される。精神的にも、肉体的にもヘトヘトになって這うように家へと帰ってきたのだ。

「災難だ…」

輝はバタリとソファに倒れ込む。本当に最悪な日だった。松木たち部下連中のイヤらしい視線が、今でもまとわりついているようで気持ち悪い。こんな経験は初めてだ。あのバカ連中、俺をあんな目で見やがって…

「シャワー浴びないとな…」

口には出すが、もはや立ち上がる気力もない。そのまま動けずじっとソファに蹲っていると、エントランスのベルが鳴らされた。力なく「勝手にどうぞ〜」と返事をするが相手に聞こえる筈もない。
少しして扉が開く音が耳に聞こえた。そういえば鍵も閉めてなかったっけ。不用心だったかなと少しだけ気になったが、入ってきたのは輝のよく見知った顔だった。

「輝…」

その声に、輝は飛び起きる。入って来たのは未沙だった。
勤務を終えてまっすぐ来たのだろう。軍服にコート姿、肩にはうっすらと雪が積もっている。

「み、未沙…」

輝の目の前に立っている未沙は、驚いたような哀しいような複雑な顔をしていた。

「本当…だったのね…女の人になったって…」
「う、うん…」

それ以後、言葉が続かない。輝はモジモジとしながら「す、座ったら?」と未沙にソファを勧めた。未沙は黙って頷くとコートを脱いで輝の隣りに腰掛ける。

「原因は…分かったの?」
「いや、まだ何も…」
「そう…」

2人は並んで下を向いてしまう。とてつもなく重い空気だ。
輝はこっそり未沙の横顔を見た。未沙はショックのせいか軽く青ざめている。それはそうだろう、つい昨日まで「彼氏」だった相手が突然「彼女」になったのだ。本当なら今日は、2人で輝の誕生日をお祝いする筈だった。それがまさか、こんな想像もしなかった出来事が起こるだなんて…

「ケーキ…」
「え?」
「慌てて来たから、ケーキ、買ってこれなかったわ…」
「そ、そう」

未沙は気丈に振る舞おうと笑顔を浮かべてみせた。しかし紫色になった唇の端が引きつって震えている。輝はとってもいたたまれない気持ちになってしまった。

「輝、私…」
「え?」

形だけでも笑っていた未沙の表情がみるみる曇る。み、未沙、もしかして怒ってるのか?

「わ、私ね…」

未沙は瞳に涙を浮かべていた。輝は心が傷む。こんな風に彼女を悲しませてしまうとは、俺って何やってるんだろう。いや、別に俺が何かした訳じゃ無いけれど。

「私、たとえあなたが女性になっても…」

突然、未沙は輝を抱きしめた。輝は驚いて目を見張る。こ、これじゃあいつもと立場が逆だ。というか俺、身体の大きさも未沙とそんなに変わらなくなっている。なんだか情けない…

「未沙…」
「輝…」

未沙はそのジェイドグリーンの瞳を閉じた。薄くて繊細な唇をゆっくりと近付けてくる。輝は一瞬躊躇したが「べ、別に恋人同士なんだから変な事じゃないだろ。俺は元々男なんだし」と心の中で言い訳して未沙の温もりを受け入れる。
しかし今夜の未沙はそれだけでは止まらない。輝の肩に手を掛けると、グッと力を入れてソファに押し倒した。

「え?未沙、ちょ、ちょっとちょっと?」

輝は慌てる。彼女を押し倒すのはいつも自分の役目だったが、まさか自分が押し倒される日が来るとは思わなかった。しかも今の自分は女の身だ。のしかかって来る未沙を押しのける力さえない。
未沙はゆっくり輝の首筋に吸い付くと、柔らかな唇を輝の柔肌に這わせる。まさかの彼女からの愛撫。しかも、き、気持ちいい。なんだコレ。
突然の事に輝が驚いている内に、未沙の手は輝の襟元に掛けられた。手際よく上着を剥ぎ取ると、アンダーシャツの上から輝の胸の膨らみに手を掛ける。

「うわ、ちょっと未沙まってちょっと」
「フフ、輝…」

未沙は怪しい笑みを浮かべた。見れば、目が完全にイっちゃっている。輝は未沙の突然の変貌ぶりが怖くて身を縮こまらせた。そんな様子が可愛かったのか、未沙は両腕を伸ばすと輝のくせっ毛頭を抱き寄せ、よしよしと幼子をあやすように優しく撫でた。

「怖がらなくていいわ。全部私に任せて…」
「ま、任せてって、な、なにを?」
「フフフ、お姉さまって呼んでいいのよ」
「み、未沙〜?!!」

固まる輝のアンダーシャツをめくり上げて、緊張に尖った乳房の先端にキスをする。輝は生まれて初めてその身を襲う感触に頭の中が真っ白になった。攻めるのは大好きだが、攻められるのは初めての体験だ。まして自分は女の体で…

「み、未沙、待って待って!なんか怖いよ未沙」
「平気よ輝…ハアハア、大人しく観念なさい」

鼻息も荒く、瞳に興奮の色を浮かべた未沙が迫って来る。輝はもはやヘビに睨まれたカエルの状態だ。
未沙の手が輝のアンダーパンツに掛かったかと思えば、鮮やかに一瞬で脱がされて宙に舞う。あられもない姿となった輝に、もはや抗う力は残されていなかった。

「き、キャ〜!」

小娘のように情けない声を上げる輝。未沙はそんな恋人の様子にむしろ益々興奮の色を隠せない。

「いっただっきま〜す」
「お、犯される〜!」

「いや〜!!」と涙目で叫んだところで、輝は唐突に目が覚めた。
ガバッと勢い良くベッドから飛び起きる。ハアハアと荒い息遣い。全身汗ぐっしょりで、両手は細かく震えていた。

「あ、あれ?ゆ、夢か…」

なんて酷い夢なんだ。輝はまだ心臓がバクバク言っているのを自覚する。自分の体を確認すると、胸はペッタンコだし、股間には…ある。いつものヤツが、ちゃんと居る。
恐怖のせいか小さく萎びてしまっているけれど、ソイツは確かに輝の股間にキチンとぶら下がっていた。
ホッと安堵のため息を吐く。良かった、俺は男だ。なんつーくだらない夢を見ていたんだ俺は。

隣りを見れば、いつものライトブラウンのロングヘアーが静かにベッドで眠っている。そうだ、昨夜は俺の誕生日で、未沙と二人きりのパーティーをしたのだった。ちょっと調子に乗って飲み過ぎてしまったらしい。まさかこんな訳の分からない夢を見るだなんて…

「夢で良かった…」

心からそう口にする。しかし思い返すと、ちょっとだけ惜しい気もした。怖いもの見たさというか、どうせなら未沙とのレズビアン・セックスも試しに経験してみたかったかも。しかもあの未沙が攻めだなんて…。
夢だと分かった途端に気が大きくなる。イヤイヤないわ〜とそんな考えを一笑に伏しながら、輝は朝日に照らされる恋人の髪を指で梳いた。

「未沙」

耳元に囁く。

「お寝坊さん、もう朝ですよ。あんまり寝てるとオオカミに食べられちゃうぞ」

輝の言葉に、未沙はムクリと反応する。さて、寝起きの姫君におはようのキスをしようか。そのあとはやっぱり自分が押し倒して、また昨夜の熱い夜の再開を…あ、勃って来ちゃった。

そう思って顔を近づけた輝の動きがピタリと止まる。笑顔は凍りつき、両の目は驚愕に見開かれた。

「あ、おはよう輝。早いんだな」

顔を起こした未沙の顔には…うっすらと青いヒゲが生えていた。

「まったく、昨日あんなに激しかったからまだ眠いぜ。このドスケベが」

笑いながら体を起こす未沙。野太い声に、蠢く喉仏。その胸は真っ平らで、逞しく発達した大胸筋がピクピクと蠢いていた。

「もう、朝っぱらからこんなに元気にしやがって!」

ギュッと輝のソレを握りしめる未沙。その手は太くてゴツかった。輝はキュッと玉が縮み上がるのを感じる。未沙はニタリと笑うと、白い歯を朝日に輝かせた。

「さあ、可愛がってやるぜ、ダーリン(はーと)」

「う、う、う、嘘だ〜!!!」

絶望の叫びをあげる輝。
そしてその瞬間目が覚めた。

「嘘だ、うそ…え……あれ?」

輝は泣きながら跳ね起きた。

「ゆ……夢か〜………」

お、恐ろしい夢だった。まるでこの世の終わりかと思った…

ハッとなって横を見る。隣りには、いつものライトブラウンのロングヘアーがスヤスヤと眠っている。
輝はゴクリと唾を飲み込んだ。

「み、未沙…?」

声を掛けるが反応はない。輝は恐る恐る手を伸ばすと、ゆっくりとベッドクロスをめくった。

するとそこには…





僕と私の誕生日 おわり


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やぁ、お久しぶりでございます。

楽しく読ませていただきました。
エンドレスですね^_^
なんか、ジョジョの第5部の
ラストを思い出しました。
ゴールドエクスペリエンス レクイエムの能力。終わりが無いのが終わりみたいな。
あ、ジョジョはご存知です?

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うふふ♪

鼻血出そうでした。乙女の輝、ありがとうございます‼︎(//∇//)

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Re: え!

BL…と言っていいのかどうか…(;´∀`)

Re: やぁ、お久しぶりでございます。

どうもどうも( ´∀`)

ジョジョは知ってます!…が、詳しくはないです(;^ω^)
映画は壮絶にコケちゃったみたいですね。やっぱ邦画って駄目ですね…

あれってプロデューサーに実権が無いからダメなんでしょうね~。
その点、シン・ゴジラは総監督の権力が凄くて外野の声を一切聞かなかったらしいですからね。

「このアイドルを使ってください!」
「お断りします」
「この歌を挿入歌にしてください!」
「お断りします」
「ヒロインはこうで!主役はこうで!こんな感じで仲間が死んで!」
「お断りします」

やっぱり監督が広告代理店のいいなりじゃあ良い映画は撮れないですよね~


> 楽しく読ませていただきました。
> エンドレスですね^_^
> なんか、ジョジョの第5部の
> ラストを思い出しました。
> ゴールドエクスペリエンス レクイエムの能力。終わりが無いのが終わりみたいな。
> あ、ジョジョはご存知です?

Re: ブラボー!

はい!
波乱万丈の男、一条輝の活躍(?)をどうぞ今後ともお楽しみ(?)に!
( ̄▽ ̄)

Re: うふふ♪

もっと卑猥なお話にも出来そうで、ちょっと怖いです…(ノ´∀`*)


> 鼻血出そうでした。乙女の輝、ありがとうございます‼︎(//∇//)

Re: おっ!これはもしや❗️

ヒロシです…じゃない、びえりです。

コートニー好きですねwもう差し上げますので、オリジナルでお話考えちゃってくださいましw
よく考えると、輝の誕生日話って初めて書いたな~

あ、私も初代しか知らないんですよ。その後もシリーズが沢山出ているのは分かるんですが…もうね、年がね…そもそもM2層向けに作ってないですしね…

映画館で観たらまた迫力が違うんでしょうね~。いいなあ、行ってみたいけれどちょっと抵抗がw
やっぱりヒソヒソこっそりやってる位が丁度良いですw

今日は少し暖かいですが、今週半ばからグッと気温も下がりそうで憂鬱ですわ~(;´∀`)

お絵かきしたくなりました!

女の子輝くん、お姉さま未沙さん、いいなぁ。久しぶりにお絵かきしてみたくなりました( *´艸`)ウフフ
男未沙さんは…いやぁぁぁ!!(゜ロ゜ノ)ノ

あ、後編ところどころ「未紗」になってらっしゃいますよー。

Re: お絵かきしたくなりました!

お、ありがとうございます。気が付かなかった…( ̄∀ ̄;)

chachaさん絵描けるんですか!いいな〜^ - ^
私も描けるようになってみたいですわ〜。そしたらミンメイばっか描いてるでしょうがww

男未沙…意外にハマっちゃうかも知れませんよ…フフフ…
男未沙が女輝に壁ドン…

「輝、キスさせろよ」
「え、だ、ダメだよ未沙…」
「うるせえな、目ぇ閉じてろよ」
「あ、だ、ダメ…」
以下自粛


> 女の子輝くん、お姉さま未沙さん、いいなぁ。久しぶりにお絵かきしてみたくなりました( *´艸`)ウフフ
> 男未沙さんは…いやぁぁぁ!!(゜ロ゜ノ)ノ
>
> あ、後編ところどころ「未紗」になってらっしゃいますよー。

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Re: 寒さに負けるな❗️

お、何かスポーツされていらっしいますか??びえりも昔やってたので今でも筋トレ大好きなんです^ - ^
ただ有酸素運動はしなくなってるので、筋肉は維持出来ても体力はかなり落ちてそう…ヤバいです( ̄∀ ̄;)

雪は場所によっては溶けないですね〜。新宿大ガードの日陰部分なんかはかなりの間雪が残ってますw

アラスカはずっと雪が積もってますけど、マクロスだとその辺は描かれてないですものね〜。自分のSSではなるべくリアルにしたかったので、融雪用の温泉水が道路に薄く流れてる設定にしました( ̄▽ ̄)
なので未沙さんには遠慮なくブーツで走って頂ければと思いますww

それは良く分かりませんが、前に大阪の人が言っていたのが「大阪にも梅田とか難波とかいくつか大都会はある。でも東京は新宿とか渋谷とか六本木とか池袋とか銀座とか、どの駅を降りても大都会ばっかり」というのが印象に残ってますかね〜(´・ω・`)

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Re: なるほど❗️その手があったとはね❗️

おお〜ウェイトトレしてらしたんですね!
私もダンベルは今でもやります。昔、パンクラスの道場に通っていたので筋肉大好きマンですw
体脂肪一桁は凄い!さすがにそこまでのクオリティは経験がないです(;´∀`)
しかし硬い筋肉とは…ある意味、裸でも防御力高いという事では…w

あ、融雪用の温水が流れてるのは本編でも何度か出て来るシーンなんですよ。まあどうでもいい描写なので誰も(私も)覚えていませんが(;´∀`)ただ、街中が硫黄臭くなるんちゃうかという欠点が…w温泉街みたいで情緒がありますね〜( ´∀`)

東京の家賃は確かに高いですね〜。前に駐車場代が3万かかるって言ったら「うちの方なら人間の家賃だよ」と呆れられました(;´∀`)逆に3万で住める家ってどんなだ…
大阪良いですよね^^仕事で行った時、食事が安くて美味しかったです。都内も美味しい食事はあるけれど、お金を出せばって感じですね。安いのは不味いですw

たしかに、「愛・おぼえていますか」というタイトルだけ見たら男だけで行く映画じゃないですねwそれは盲点でしたww娘さんさすがですw
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