FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

新しい環境というものは

新しい環境というものは不慣れな分、過ぎる時間の流れも早く感じるものだ。

10年ぶりに帰って来たエデンは、見るもの触れるもの全てが新しかった。懐かしさなどは全然なくて、まるで異国の地のような物珍しさばかりが新たな日々に溢れている。

そんな中でエデンの連中に“地球帰り”と持て囃されるのは、良い面もあり、悪い面もあった。
良い面は、簡単に知り合いが出来たこと。放っておいても向こうから勝手に話し掛けに来てくれる。顔見知りのいない新天地での学生生活において、これほど助かるものもない。
一方の悪い面は、顔が売れ過ぎたことだ。まったく知らないヤツでも、ほぼ例外なく俺の事を知っている。この状況は冷静に考えると少し怖いくらいでもある。
お陰で悪いことの一つも出来やしない。あ、いや、勿論する気もないけれど。

「目立てて良かったじゃん」

妹の深雪が笑いながらそう言った。俺たちは今、引っ越して来たばかりの新しい家でスクールの報告会をしている所だった。

「そう言うお前はどうなんだよ」
「うん、注目の的だった」

深雪は片目を瞑り、ビッと親指を立てて見せた。
ノースポート校の中等部に通う深雪はそれなりに上手くやっているらしい。昔から要領が良い奴で、人懐っこく周囲の人間に可愛がられるタイプの娘だ。
地球のミドルスクールでは、ボーイフレンドを取っ替え引っ替えするような人気者でもあった。きっとこっちに来てもその辺は変わらないのだろう。

ふんわりと毛先が跳ねたマニッシュボブに、良く動くクリクリのどんぐり眼。小さく覗く形の良い耳が可愛らしい15歳の深雪。
兄の俺から見ても、黙っていればとても魅力的な女の子だと思う。喋ると全て台無しだが。

「で、そのライブは誰と行くの?」

ダイニングのテーブルに放り出されたくしゃくしゃのペーパーチケットを突つきながら深雪が聞いた。くりくりの黒目で俺の顔を覗き込んでいる。
俺はジロリと深雪の顔を睨んでから「オタクと」と言う。深雪はパァッと顔を輝かせたが、「行くつもりだったんだけれど」と俺が続けると半目になってムッとした。

「未成年はダメらしい。クラブだからな」
「お兄ちゃんだって未成年じゃない!」
「ハイスクール生はいいそうだ」
「なにそれズッコい!」

深雪は憤慨する。俺はギャーギャー騒ぐ深雪に肩をすくめるだけだ。
本当は、おしゃべりアビーに「そんなに治安が良くないから妹さんはやめておきなよ」と言われたのだ。「ここは地球と違うんだよ」と半笑いで言われたのが何とも忘れられない。

エデンの首都“アイランド・シティ”は決して危険な街ではない。この惑星最大の都市であり、政治経済の中心地だ。警察もちゃんといる。
が、島を丸ごと一つ都市化したこの“アイランド・シティ”は何しろ広過ぎる。これだけ大きな街となると、陽の当たる場所もあれば、当たらない影の部分も存在しているのだ。

ライブをやるクラブがある地区は、夜間女性が出歩くのには適さない場所らしい。
何でそんな所でやるんだ、と聞いたら「ホール代が安いからでしょ」と返されて納得した。まあ、痩せても枯れても我々はハイスクール生と言う事だ。

「じゃあ誰と行くのよ」

頬を膨らませてムクれている深雪に、俺はゼントラーディ人のツォフの事を話した。アビーが「用心棒がてら付き合ってあげたら?」と俺より一回り体格のデカいツォフにそう言ったのだ。

「ツォフ、音楽好きじゃん?」
「いや、パンクロックとかは興味ない」
「いいじゃん、ミンメイもパンクロックも変わんないわよ」
「いや、どう考えても違うだろ」

腕組みをしたツォフはハッキリ言う。俺はミンメイという単語に反応した。

「なんだ、ツォフはミンメイフリーク?」
「ああ、ミンメイを嫌いなゼントラーディ人はいない」

根拠のよく分からない理屈をツォフは述べる。俺は自分のタブレットを弄りながら一枚のフォト画像をみんなに見せた。

「あ、ミンメイじゃん!」

驚きの声を上げたのはアビーだった。童顔ケニーも、もちろんツォフも目を見張ってその画像を見つめる。
タブレットの画面には、俺と妹に挟まれて伝説の歌姫リン・ミンメイが微笑んでいた。

「親父が政府の仕事しててさ。ほら、ミンメイって式典とかよく出るじゃん?地球で何かのパーティに出席した時に、一緒に撮らせて貰ったんだ。3年くらい前かな?」

「スゲー」「いいなぁ」と唸る3人。ディープパープルのパーティドレスに身を包んだミンメイは、とても艶やかで美しかった。
リン・ミンメイ。現世人類で彼女の名前を知らないヤツはまずいない。かつて地球を救い、人類の希望を未来につなげた救世主だ。スクールの教科書に何度も出てくる。
そんな「生ける伝説」に会える機会なんてそうそう無い。政府の役人の息子としての役得である。この時ほど、父親の事を尊敬した日はなかった。

「彼女だけ写ってる写真もあるけど、送ろうか?」

ツォフに聞くと、ゼントラーディ人は重々しく頷いて自分のモバイルタブレットを取り出した。

「頼むよ、親友」

こうして、週末のライブのパートナーはオレンジ頭のゼントラーディ人に決まった。
取り敢えず身の危険は何とかなりそうだ。ただし、チケットその他は俺のオゴリにさせられたが。




関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 気になる~

いやいや、ただの高校生ですから(*´∀`*)
そんな大それた事件には関わりなんざございやせんよ( ̄▽ ̄)
ただの学園天国ですわオホホ

未来は…出るんでしょうか?もしやこのまま永遠に出てこないパターン…(@_@)

私も、若い頃毛先がカールしてましたw
前髪がくるんと天を向いて、バッハみたいになってましたよww

Re: No title

あ、ですです、そんな流れですね〜( ̄▽ ̄)

いまミンメイは、歌いながら世界中を旅してるので定住はしてないんです。それこそまたエデンに来るかも知れませんね。あの人のお墓がありますし。

ジジは出ますw大人しく先生をやってます^ - ^
カテゴリ
プロフィール

びえり 

Author:びえり 
iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

最新記事
最新コメント
くせっ毛の飛行機乗り
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。