チョコと僕らの水曜日 4

輝は放課後の校舎でマックスを探し出すと、女生徒から預けられたチョコレートを手渡した。
当然のように隣りにいたミリアには無茶苦茶睨まれたが、マックスは「ありがとうございますと伝えてください」と堂々と受け取ってくれた。高校生のくせにティアドロップ型のサングラスなんかをしているキザ野郎だが、こいつのこういう所は俺でも惚れる。

「先輩もミンメイちゃんから貰いました?」

マックスの一言に、輝は怪訝な顔をした。

「は?ミンメイがくれる訳ないだろ」
「あれ?おかしいな」

マックスははてと顎に手をあてる。そのマックスの脇腹をミリアが肘で突付いた。

「なんだ?どうした?」
「あ、いえ、何でもないです」

マックスはニコリと笑う。その横で、いつもの様に無表情なミリアが「そうすると一条先輩はチョコレートなしか」と呟いた。輝は思わずムッとなる。

「おいおい、誰がチョコなしだって…」

言いかけた輝の肩をポンと肩を叩く者がいた。振り向くとそこには、巨体の男子が涙を流しながら立っている。

「ですよね!一条先輩!お、俺も、俺もゼロなんですぅぅ〜」
「か、柿崎?!」

厳つい四角顔に眉なしの三白眼。見た目だけなら立派なヤンキーの柿崎速雄は、マックスと同じ1年生の後輩だ。何故か最近輝はコイツに妙に慕われていて、それが微妙に気に掛かっている所だった。

もしかしてだが、俺はコイツに同類と思われているのだろうか?こいつは今、「ですよね」と言いやがった。つまり、コイツは俺のことをチョコなしの0個、“0の人間”だと思っているという訳だ。

はっきり言って心外である。俺だって決してイケメンという訳ではないが、お前クラスまで落ちぶれたくはない。
輝はそう思いながら冷たく柿崎を突き放した。

「柿崎、お前と一緒にすんな」
「ええ〜!先輩そりゃ酷いっスよ!」
「俺とお前、どちらかとキスしなくちゃならないような状況になったとしたら、きっと女子は『あなたの方がマシよ!』とか言って俺とキスをするに違いない」
「?何すかそれ??」
「いや、何でもない」

俺は咳払いをしながら、ポケットに隠していた赤い箱を取り出す。緑のリボンが掛かったその小箱を見て、その場の3人は目を丸くした。

「え、先輩がチョコ…⁈」
「どうだマックス、恐れ入ったか」
「それはどこで買ったのだ」
「…ミリア、お前顔しか良い所無いよな」
「そんな!先輩!!」
「そういう訳だ柿崎。悪いな」

輝は得意満面になると、「じゃあな」と肩で風を切って廊下を歩き出した。その後ろ姿をマックス、ミリア、ハンカチを噛む柿崎の3人が呆然と見送る。

「マックス、あれはミンメイのあげた物では無いのか」

ミリアがマックスに耳打ちする。東ヨーロッパ・スラヴ系のミリア・ファリーナは細身の超美人だ。まるでスーパーモデルのようなスタイルをしていて、日本の学生服を着ているとまるでコスプレをしているようにさえ見えた。
そのミリアの言葉に、マックスは不安そうに頷く。

「うん、多分違うと思うよ。…さて、どうしたものか」

思案顔のマックスなどに気付かず、人生で初めて貰った「バレンタインのチョコレート」に浮かれた輝は、鼻歌を唄いながら家路を急ぐのだった。




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おっと、これは!

プチ修羅場の予感がします!
次回も楽しみ。

Re: おっと、これは!

なかなか進まずすみませんε-(´∀`; )
お仕事が忙しくて。いや、ありがたい事なんですが(;^ω^)


> プチ修羅場の予感がします!
> 次回も楽しみ。
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iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

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