「ナジブ、何それ?」

「ナジブ、何それ?」

恋人のシャーリーンに声を掛けられて、ナジブ・シャリフは笑顔を向けた。

「何でもないよ、みんなにお茶淹れてくれたかい?」

シャリフは黒いナイロン製の大きなバッグを、控え室の壁際にあるテーブルの下に隠すように置いた。先ほど部屋に入って来たTV局スタッフからコソコソと渡された物だ。かなり重そうな、ゴトリとした音がした。
それをチラチラ見ながらシャーリーンは答える。

「ええ、でもイッチが全然手伝ってくれないのよ。彼女、ちょっと問題だわ」

腰に手を当ててお怒りモードだ。シャリフは「まあまあ」と彼女を宥めながらその場を離れる。
近くの仲間に、軽く目配せをした。仲間は頷くと静かにシャリフの置いた「荷物」を隠すように側に立つ。

「カイフンさんて緊張しないのかな」
「あの人が?誰の前でも緊張なんかしないわよ。誰よりも一番立派だもの」
「うん、そうだね。僕もそう思う」

シャリフは同い年のブリティッシュ系アメリカ人の彼女に微笑み掛けた。整った顔立ちに浅黒い肌。中東人独特の濃いい顔立ちがとてもセクシーなボーイフレンドに、シャーリーンは少し頬を赤くする。
シャリフはとても知的で、スマートで、紳士的で、そして優しかった。常に恋人として彼女を立て、誰に対しても親切だった。シャーリーンの自慢の彼氏。

彼をカイフンに引き合わせたのはシャーリーンだが、今では彼の方がすっかり学生運動にハマっている。いまや学生会の「カイフン親衛隊」とも言えるベイビーパンサーの中心人物だ。シャーリーンに対する周りからの扱いも随分変わった。

「あ、カイフンさんが何か言ってるわ、聞きに行きましょう」

シャーリーンに手を引かれ、シャリフは歩き出した。途中、すれ違う何人かと目配せを交わす。

「もうじきね!きっと世界を変えてくれるわ!」

「ああ、そうだね」

ナジブ・シャリフは笑顔で答える。

「もうじき、世界が変わるよ。きっといい方にね」




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