まず、観覧客が近くにいない出入り口の監視役から狙う。

まず、観覧客が近くにいない出入り口の監視役から狙う。

輝が音を立て、そちらに注意を引かれている間にボーリゾンが後ろから絞殺具で締め上げ、物陰に引きずり込む。待ち構えていたチェーホフがナイフでトドメを刺した。

敵は人数不足からか、プロではないからか、特に二人一組になったりはしていなかった。輝達は殺した武装兵の持っていたクラシックな自動小銃AK-47カラシニコフを奪うと、観覧客の端っこにいた新統合軍兵士にコッソリ声を掛けてそれを渡す。
次の獲物も同様に仕留める。武器が増えて、それを兵士に渡す。順番に味方が増えていく。

チェーホフの『協力者』ゼントラーディ人のスーデルは、観覧席の隅に座っていた。そこから離れる際に「ついでに1人殺してきた」そうで、すでに自動小銃を一丁持っていた。

「ああ、さいですか…」

輝はセットの裏で、そのピアスだらけのゼントラーディ人女性の何気ない一言に閉口する。

「死体はちゃんとセットの下に隠した。ただし、周りの観覧客は気付いていたぞ」

「騒ぎ出さなきゃ別に構わないわ。4人いるなら二人一組でやりましょう。サクサクと、効率良くね」

人を殺す相談だと言うのに、妙に明るい調子で話し合う。
輝は、こういう事に慣れていく自分に気が付いていた。この連中と自分にはもはや大した違いはない。両手は血に塗れ、殺される前に殺す事を考える野獣の様な思考を持つ。

でも構わないさ

自分にとって大切な物があった時に、それを全力で守るには力が必要だ。こうした力もきっとそれに役立っていると思う。

きっといい死に方はしないだろうな

輝は苦笑した。かつて尊敬するロイ・フォッカーに対して「人殺し」と非難した幼い自分を思い出す。

「何笑ってんの輝、行くわよ」

ボーリゾンが輝の肩を叩いた。「ああ」と答えてかつての戦友の顔を見る。
この男も、フォッカー繋がりの人物だ。マクロスに乗っていた旧スカル大隊時代の噂では、フォッカーに本気で惚れていたらしい。実際のところは分からないが、フォッカーの死後、彼はマクロスを降りてしまった。つまりそういう事なのだろうか。

いつか2人で飲みながら、フォッカー先輩の話でもしよう

輝はそう思ってボーリゾンに笑いかけた。それに気付いたボーリゾンは「だから何笑ってんのよ、気持ち悪い」と輝の癖っ毛頭を引っ叩く。

「いて、酷えな」
「ボケッとしてるからよ。さぁ急いで」
「へいへい」

輝は歩き出そうとして何かに躓いた。

「おっと、何だよ」

足元を見る。
人が寝転がっていた。一人ではない。複数人が脚を投げ出して床に転がされている。
後ろから去り際のスーデルが声を掛けた。

「さっき奴らが入って来た時に殺された者達だな。運がなかったんだろう」

確かに、横たわる人々は皆血塗れだった。可哀想に。10人以上はいるだろうか。ハゲたドデカいおっさんから若い女性まで様々だ。
輝は目を逸らそうとして、しかしある事に気が付いてしまった。


その軍服姿は、とても綺麗な髪をしていた。
ミディアムロングの艶やかな黒髪。服の上からでも分かる位スレンダーなスタイル。
白い肌。

ダメだ

細い指に、綺麗な爪。週に一度はお手入れにネイルサロンに行くと自慢していた。

ダメだ、そんな

ヒールの高いベージュの靴は、彼女のお気に入りだった。
靴は百足以上持っているらしい。「脚が自慢だから」と何かの時に言われた気がする。

そんなの、そんなのって…


つい30分ほど前に最後に交わした会話は「トイレに行ってくる」だった。



リン・チーリンは、変わり果てた姿でスタジオの床に転がされていた。




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チーリンが…。(T ^ T)

No title

生と死の境目って、ちょっとしたことのようで、いろんな流れからにじみ出てくるんだね

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Pearl-White Eve

後編が始まる時、チーリンが死ぬと分かっていましたが、
生き残る可能性を文面にて追っていました。
数話前に駄目だと分かり落ち込んでいました。

感情移入が出来たキャラクター「リン・チーリン」を生んでくれて、
ありがとうございました。

しばらく旅に出ます。

表題の曲、ちょっと早いですけど良い曲です。

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Re: タイトルなし

(´・ω・`)


> チーリンが…。(T ^ T)

Re: No title

いつどうなるかなんて、誰にも分からないですよね。
例えそれに繋がる運命が見え隠れしていても、きっと気付けないと思います。


> 生と死の境目って、ちょっとしたことのようで、いろんな流れからにじみ出てくるんだね

Re: 死

ううん、まさにおっしゃる通りですね。
死ってとても身近なものだし、すぐ目の前に落ちてたりするんですよね。麻痺して気が付かないだけで。

日本のメディアはそういうの電波に乗せないですね。それだけ平和だっていうのもあるのかな。

魔界村ワロタwでも納得。

Re: Pearl-White Eve

旅立ちはフリージアですね…

早く帰って来てくださいまし。残念ながらチーは居なくなってしまいましたが、まだ未沙さんはじめみんなが戦っていますから。

pearl white eve 素敵ですよね。
実は夏ですが最近ずっとnorth windとか風立ちぬのアルバムを聞いています。
聖子ちゃんの歌は透明感があって、夏でも冬の歌に聞き入っちゃいますね。


> 後編が始まる時、チーリンが死ぬと分かっていましたが、
> 生き残る可能性を文面にて追っていました。
> 数話前に駄目だと分かり落ち込んでいました。
>
> 感情移入が出来たキャラクター「リン・チーリン」を生んでくれて、
> ありがとうございました。
>
> しばらく旅に出ます。
>
> 表題の曲、ちょっと早いですけど良い曲です。

Re: ( ;∀;)

まわる〜ま〜わる〜よ時代〜はまわる〜
よろ〜こび〜かなしみくりかえ〜ええし〜
今日は〜た〜おれ〜た〜たび〜びとたち〜も〜

思わず中島みゆきを口ずさんでしまいました。

日本て平和だからテロで死ぬ事なんてまず無いですけれど、日本以外の地球上の国って、突然の理不尽な暴力で命を落としたりしますから怖いし悲しいですね。

輝ちゃんの愛、綺麗に実を結ぶといいんですが、やっぱり時代なりの苦難があるとは思います。
戦争って嫌ですね。終わってからも治安の悪化とか、不平不満分子とか、ずっと影響を残していくんです。

Re: あの時

そうですね、姿が見えなかった時はもう…ですね。

他の方も書いてましたが、誰が死に、誰が生きるかなんて運次第、おっしゃる通り紙一重なんだと思います。
みんな生き残ってこれたのは能動的な理由と受動的な理由との積み重ねなんですよね。

チーのことそんな風に仰っていただけるととても嬉しいです。私も書いてて楽しいチーでした。
アポロ帰還後は二人の仲も変化してましたし、その可能性は充分あったと思います。
ガブ覚えててくれたんですね、あの子も書いてて凄く楽しかったです。儚い命でしたが。

最後のご質問はこの章を終わりまで見ていただく事でご返答の代わりとさせて下さいませ。

拍手コメントありがとうございます!

その組み合わせは意外でしたw
成る程、言われてみればその通りですね。

おお、コートニーとそうやってまたやり合うのは面白いですね!
もう実現はしないですけれど…
ネタとしては凄くいいなぁ、それ書きたかったなぁ。

輝ちゃん応援よろしくお願いします〜
(`・ω・́)ゝ
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Author:びえり 
iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

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