輝が捕まってしまったのを確認すると

輝が捕まってしまったのを確認すると、チェーホフとボーリゾンはすぐに作戦を変更した。

「彼はどうしたんだい?」
「知らないわ、知り合いでも死んでたんじゃない?」

スーデルを加えた3人は、始末したテロリストから衣服を剥がし、それに着替える。
兵士に渡した自動小銃も返して貰った。目出し帽をかぶり、テロリストの一員のフリをしてそのまま知らん顔で円卓に近付く。
彼らは素人の様だった。特にフォーメーションも何もない。適当な配置と役割分担だけで行動しているように見える。定期的な人数確認さえしていなかった。

見ると、捕まった輝が椅子に縛られている。頭から出血していた。放っておくと良くなさそうだ。

「どうする?」
「ゼントラーディの子に輝のワイヤーを外させて。後は自分で何とかするでしょう。私はミンメイを、あなたは早瀬大佐を」
「相手の数を減らしてからの方が良くないかい?」
「その間に輝が殺されちゃうわ。いいから急いで」

ボーリゾンは正直、輝については自業自得で見捨てていこうかと思っていたが、彼に何かあれば確実にミンメイが悲しい想いをする事になる。
それに輝にはまだ役割りがあった。ここで死んでしまわれては困るのだ。


円卓ではかなり揉めていた。激しい口論が続いている。その中に、ミンメイの姿もあった。

お願い、大人しくしてて

ボーリゾンは歯噛みをする。3人はバラバラになってさり気なく円卓に近づこうとしたが、周りのテロリスト達はいきなり観覧客を床に引きずり倒し、1人を射殺した。注意しながら見ていると、今度はリーダー格の男がミンメイや早瀬大佐に銃口を向けて何やら脅している。ボーリゾンは早足でミンメイの背後に回った。

「さあ選べ早瀬大佐!」
「私が!私が死ぬから輝を放して!」

テロリストはミンメイと輝を天秤に掛け、早瀬大佐にどちらかを選ばせようとしていた。とてつもなく悪趣味だ。ボーリゾンの腹の底に重く熱いものがとぐろを巻く。

「間違うんじゃない…人類に必要なのはどちらか…答えは一つしか無いじゃないか…君は頭のいい子だろう…?」
「いや!私でいい、私でいいから!」

輝は自分を犠牲にミンメイを助けようとしている。ミンメイは泣いてそれを拒否していた。
ボーリゾンは円卓の周辺を見回す。15m以内に7人。そのうち3人は味方だ。範囲外には8人が確認できる。

やっぱりチェーホフの言う通り、もう少し人数を削っておいた方が良かったかしら

そうも思ったが、ボーリゾンはとにかくミンメイが心配で仕方がなかった。こうして彼女の側にいれば何とかなるだろう。最悪、他の全員を見捨てて自分とミンメイだけでも助かればいい。その為にはとにかく彼女の近くにいなくてはならない。

「やだ!輝死んじゃやだ!」

突然、ミンメイが走り寄ろうとする。テロリストの格好をしたボーリゾンは慌てて抱え込んでそれを止めた。

「放して!輝ー!放して!」

腕の中で泣き叫ぶミンメイ。ボーリゾンは胸が痛む。思わず耳元で囁いてしまった。

「ミンメイ、落ち着きなさい。必ず助けるから」

ミンメイは驚いた顔で目出し帽のボーリゾンを見る。小さな声で「…チーフ?」と聞いてきた。

「そうよ、でも今は内緒よ」

目出し帽の中からウィンクしてみせる。ミンメイは強張った顔で小さく頷いた。
テロリスト共を見ると、なんとグローバル総司令を撃ってしまった。ミンメイがビクリと身をすくませる。ボーリゾンは安心させる為に強く彼女を抱き締めた。

テロリストはかなり感情的になっているようだ。
まったく、総司令といい、早瀬大佐といい、みんな黙っていられないタチなのね、適当に話を合わせておけば時間を稼げるのに…

カイフンはミンメイを救おうと一生懸命だ。それはそれでいいけれど、あのクソ男もそのまま殺されちゃえばいいのにとボーリゾンは願った。しかし目出し帽を取り素顔を晒したテロリストのリーダーは、どうやらカイフンの顔見知りらしかった。

とんだ茶番だわ
身内で好き勝手喧嘩してるだけじゃない

ボーリゾンは出口を確認する。どさくさに紛れてこのまま出て行けるタイミングを計っていた。チェーホフもあのゼントラーディ女も捨てて行こう。ついでにここで死んでくれればなおラッキーだ。

しかし、なかなか思惑通りにはいかないものだ。顔を晒したリーダー格の男が、輝の頭に銃を突き付けるとミンメイが黙っていられなかった。

「わ、私を殺してもいいから、輝は助けて…」

小さな声で、怯えながら訴えを口にする。カイフンが我慢出来ずに声を震わせた。

「ミンメイ!馬鹿な事を言うな!」
「だってヤだもん!輝死ぬのヤだもん!」

お願いだから黙っていて

ボーリゾンは焦る。ミンメイも所詮まだ十代の子供だ。感情が先走って冷静な判断など出来ないだろう。

ボーリゾンは暴れるミンメイを大人しくさせようとしているフリをして、出口の方へジリジリ後退し出した。
このままミンメイを抱えて走って逃げるか?あの出口に立つテロリストは撃ち殺すとして、チェーホフやゼントラーディ女は援護してくれるだろうか。
いや、チェーホフの事だ、恐らく自分同様早瀬大佐を助ける事しか考えていないだろう。むしろこちらを囮に使うかも知れない。

迷っていると、チャンスが訪れた。
スーデルによって拘束を解かれた輝がいきなりテロリストのリーダーを殴り倒した。見事な一発だ。

坊やめ、気絶したフリをしてやがったわね

ボーリゾンはニヤリと笑った。
小柄なミンメイを脇に抱え込むと、そのまま芸能事務所スタジオ・イングリッド・バーグマンのチーフマネージャーは出口に向かって走り出した。

21時18分の事である。




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非公開コメント

おっ!とんずら(笑)
最高にして 最強

Re: タイトルなし

昔よくやったゲームの技に「とんずら」ってあったな…

とんずら……

豚面?

> おっ!とんずら(笑)
> 最高にして 最強

拍手コメントありがとうございます!

ボリの場合、考えてるのがシンプルですからね〜。余計な迷いが無いですね。

お、よくお分かりで。そういうトコ気になさってくださると嬉しいですw
だってミンメイですものねw

いつの間にストーカー応援派になられたんですか( ̄∀ ̄;)
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Author:びえり 
iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

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