スーデルはチェーホフの命令で、

スーデルはチェーホフの命令で、捕らわれて拘束されている兵士の戒めを解きに向かった。
今の自分は目出し帽で正体は分からない筈だ。落ち着いて、テロリスト達の間を歩いて行く。

冷静に見れば、アサルトスーツの上からでも女のスーデルの体型に気が付けただろう。ヒップラインなど、男女の違いがあからさまな部分ですぐに判断がつく筈だ。
しかしテロリスト達は興奮していた。乱入前に打った興奮剤と、グローバル総司令や早瀬大佐らとの言い争いが彼らをエキサイトさせていた。味方の様子にまで気を配れなかったのは仕方のない事と言えるだろう。

「静かに聞け」

スーデルは小声で椅子に縛られた兵士に話しかける。兵士は頭から出血してグッタリしていた。こんな死にかけを助けて意味があるのだろうか?しかし命令は命令だ。スーデルは兵士の腕を縛っているワイヤーを確認するフリをして、袖口に仕込んだ電磁ナイフでブツリと切り落とした。
暴れたのだろうか、ワイヤーで縛られていた手首は擦り切れて赤黒く血が滴っていた。

「お前の戒めを解いた。後は自分で生き残れ」

スーデルがそう囁くと、微動だにしなかった兵士は突然勢いよく立ち上がった。そのまま隣りに立っていたテロリストのリーダーを殴り倒す。

スーデルは驚いた。自分の身を守る事よりも敵を屠る事を優先するだなんて、生き残れない兵士の典型だ。なんだコイツ、と思いながらもスーデルはすぐにその場を離れる。
兵士は打ち倒した相手に何か小さく呟くと、周りが呆気に取られている間に短機関銃を奪い素早く円卓の陰に滑り込んだ。

我に帰ったテロリスト達が兵士に向けて発砲する。周辺が騒然となり、スーデルは逃げ惑う人々の中に紛れて脱出の機会を伺った。


その中で、例のヤツを発見した。
静かに、腰を低く、目立たないようにヤツは移動していた。スーデルは手にした自動小銃を握りしめる。

「ずっとお前を探していたぞ」

ピアスだらけの唇に舌舐めずりをすると、スーデルは人混みを掻き分けヤツを追い掛ける。
ヤツは円卓に向かっていた。スーデルが円卓の方を見ると、目出し帽で変装したボスのチェーホフが、グローバルに覆い被さって守るハヤセに何やら話し掛けている。

ボスは何故あのハヤセにばかり拘るんだろう?あんな女、さっさと殺してしまえば計画も楽だろうに…

するとボスがポケットから何かを取り出した。それをハヤセに押し当てようとしたところで突然胸を撃たれる。

「!」

スーデルは目を見開いた。ボスが仰向けになって倒れる。
スーデルは反射的にヤツを見た。
やはりそうだ。ヤツは床に膝立ちして拳銃を構えていた。

「やってくれたな!」

スーデルは全身が熱くなった。叫ぶと、走り回る人の海を気にせず自動小銃の引き金を引いた。
辺り一面、血の花が咲き乱れる。逃げ惑う観覧客達が次々とスーデルの凶弾に倒れた。が、ゼントラーディ人はまったく意に返さない。たくさんの無関係な一般人を巻き込んで、ターゲットをついに撃ち仕留める事に成功した。

ヤツは横っ腹に複数弾を浴びて、その身から鮮血を吹き出していた。そのままもんどり打って倒れるのを確認し、スーデルは溢れる笑みと共に標的に走り寄る。

「覚えているか、私の事を」

血の海に倒れるヤツの傍らに立ち、スーデルは目出し帽を脱ぐ。ヤツは目だけをこちらに向けると、口から血の泡を吹いて動かなくなった。スーデルは達成感と報復成功による悦楽に身を浸す。

「ざまぁ見ろ、マイクローンめ」

そう言い捨てると、スーデルはボスの方を見た。確かに胸を撃たれていた、死んだだろうか?あの男がそう簡単にくたばるとも思えないが…

ボスの方に向かって歩こうとしたスーデルの背中に、前触れもなく一発の弾丸がめり込んだ。
熱く鋭い痛みが走る。「ぐっ」と声を漏らしてスーデルは後ろを見た。

ヤツが、拳銃を構えていた。
口から血を吹きながらも、しっかりとこちらに向けられた銃口から更にもう一発が放たれる。

新たな痛みがスーデルを襲った。痛覚に限界は無いのだろうか、これでもかという激痛にまたさらに痛みが上乗せされる。
噴出する血流を滴らせ、スーデルはよろけた。そのままドウと音を立てて床に突っ伏す。

「…くそ、こいつ、くそ」

立ち上がろうとしたが、もうそんな力は残されていなかった。全身から熱量が奪われて行く。そんな馬鹿な、そんな…この私が、こんな所で…


かつてはラプラミズ直営艦隊において特殊任務に従事し「雷撃のスーデル」と恐れられた水色の髪の女は、自身が予想だにしなかった事だったが、マイクローンの支配するこの世界でいまその生涯を終えようとしていた。

21時26分の事である。




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お 思い出せない!
昔 見た西部劇で こんなシーンがあったのに ゜゜(´O`)°゜

チェン君、かっこいい!未沙さんを守ってくれたんですね。良かった…。(T ^ T)

チェン君は・・

何者だったのでしょうか・・

未沙の周りの人達も、ナカナカのキャラぞろいですよね
チェン君の正体を楽しみにしております・・

Re: タイトルなし

ジョン・ウェインかマカロニウェスタンか(^-^)/

…西部警察じゃないですよね…

> お 思い出せない!
> 昔 見た西部劇で こんなシーンがあったのに ゜゜(´O`)°゜

Re: タイトルなし

テロリスト(の格好をしたチェーホフ)が早瀬大佐を!危ない!バーン。ギャー。

結果として長期的に見れば未沙を救ってますよねwww

> チェン君、かっこいい!未沙さんを守ってくれたんですね。良かった…。(T ^ T)

Re: チェン君は・・

無口な純朴青年、しかしてその実態は…

世界に誇る紅茶ソムリエ王者だったのです!バーン!
テレビ東京のテレビチャンピオン「紅茶王」で三年連続チャンピオンの快挙!さすがやで!


因みに大食い王にも出ましたが予選落ちでした…


> 何者だったのでしょうか・・
>
> 未沙の周りの人達も、ナカナカのキャラぞろいですよね
> チェン君の正体を楽しみにしております・・
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