警戒しつつ、未沙は通路を進んで行く。

警戒しつつ、未沙は通路を進んで行く。

エレベーターホールに辿り着いたが、エレベーターはエマージェンシーモードになって動いていなかった。すぐ横の非常階段はドアノブをワイヤーとチェーンで固定されている。恐らくテロリストグループによるものだろう。

他に出口があるだろうか。未沙はフロア案内を探した。運良くホールの目立つところにフロアの見取り図があるのを発見する。図面を完璧に記憶すると、未沙は地上階へ繋がる階段へ向かってまた歩き出した。

まだこの地下階には、スタジオに居た以外にもテロリストが残っている。先ほど遭遇した者もそうだが、コントロールルームで放送をジャックしていた連中も健在の筈だ。油断は出来ない。

未沙が記憶を辿って通路を進んで行くと、ところどころに死体が転がっていた。服装から観覧客なのだろうが、撃たれた様子もない。パニックに巻き込まれて犠牲になってしまったのかも知れない。

「可哀想に…」

自分の状況を棚に上げ、未沙は彼らを哀れに思った。人生はいつ何が起こるか分からない。今日この日、こんな恐ろしい目に合うなどと誰が予想し得ただろうか。みんな、今日の日を楽しみに朝家を出てきたに違いない。


「こんな時代、お互いにいつ死ぬか分からない」


彼との昔の約束が、ふと口をついて出た。


「…だから、今を精一杯生きよう」


未沙は両手で優しく自分の下腹部を撫でる。


…この子を、幸せにしてください…


人の死によって、自分とこの子は生かされている。人間は他人の命を吸って生きる生き物だ。誰もこの輪廻からは逃れられない。


輝…


厳しい顔つきで歩く未沙の耳に、遠くに聞こえる歌声が流れてきた。とても懐かしい、郷愁の念を思い起こさせるその歌声。

「…ミンメイさんだわ…!」

歌っているのは賛美歌だ。宗教に興味のない未沙にも聞き覚えのある曲だった。

「なんで?…どうして歌なんか…」

未沙は不思議に思って、声の聞こえる方に歩き始める。敵もそちらに向かうかも知れないという危機感があったが、とにかく状況が知りたかった。

通路を進んで行くと、やはりテロリストの黒いアサルトスーツが目に入る。未沙は緊張するが、向こうはこちらに気が付いていない。かなりテンパっている様だ。もしかしたらさっき護衛官を撃った男かも知れない…

「リン・ミンメイだ!」

テロリストは叫ぶと銃を構えた。やはりミンメイが歌っていたのだ。お陰で敵を引き寄せてしまった。

「お前ら、逃げるつもりか!神の御意志に逆らうのか!」

いけない、このままではまた犠牲者が出てしまう。しかし今の自分は丸腰で味方もいない。やれる事と言ったら話し合う事だけだ。しかし、果たしてこんな状況であの男を説得出来るだろうか?

出来るかどうかじゃない、やるかやらないかだわ

未沙は唾を飲み込むと、腹を据えて声を絞り出そうとした。しかし、それより一瞬早くテロリストは引き金を引いてしまった。

ジュノーTV本社の地下階で、悲しい銃声が鳴り響いた。




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