ケインはミンメイが囚われている事を知ると

ケインはミンメイが囚われている事を知ると、TV局から避難せずにコッソリ隠れてスタジオへの侵入チャンスを窺っていた。

「僕がミンメイを助ける!」

気負ってはみたものの、銃を持っている訳でもなく、潜入のスキルがある訳でもない。通路をウロウロしているうちについに銃撃戦が始まってしまった。
人の波に巻き込まれて一緒になってパニックに落ち入っていたが、ミンメイの歌声に引き込まれてふらふらとここにたどり着いた。
そしてテロリストの銃口が彼女に向けられているのを見る。体は自然に動いた。


「…わ、ワザとじゃないんだ、ワザとじゃ」

ミンメイを救おうと飛びついて抱き締めた際に、ケインの右手はしっかりと、その幼いイメージとはまったく違うミンメイのふくよかな胸を掴んでいた。
そしてまだ掴んでいる。

「…ケインくん」
「う、うん」
「その手、いつまでそうしてるの?」
「あ、ご、ゴメン!」

真っ赤になってケインは夢の丘陵から手を離す。離しても、その手には柔らかな感触がリアルに残っていて、17歳の少年は密かに勃起してしまった。

「ワザとじゃないんだ、偶然、偶然触っちゃったんだよ!」
「…ちょっと痛かったよ」

拗ねたように唇を尖らせるミンメイだが、すぐに笑顔になる。

「うっそ、助けてくれてありがとう」
「お、おう」

顔を赤らめて頷くケインだが、すぐに今の状況を思い出して表情が硬くなる。振り返ってテロリストの事を確認した。
テロリストは、一度の斉射ですっかりビビってしまったらしい。通路には自分が撃ち殺した一般市民が血を流して倒れている。悲鳴が上がり、恐怖がその場の空気を支配していた。
しかし、もうパニックにはならなかった。
人々は負傷した者を引きずり、みんなで庇いあって通路を逃げて行く。ミンメイとケインにも、数人が走り寄ってきて身体を起こしてくれた。

「ミンメイさん、逃げましょう!」
「立てますか?走りますよ」

ミンメイは嬉しかった。笑顔で「はい」と返事をすると、手を借りて立ち上がる。その時、初めてケインが怪我をしている事に気がついた。

「ケインくん、血が出てる!」
「あ、ホントだ」

ケイン自身も初めて気がついたらしい。弾丸が脇腹をかすったみたいだ。穴の空いたTシャツに血が滲んでいた。

「痛い?」
「い、痛くなんかないさ、平気だよ」

強がるケインの肩を、1人の大人が叩いた。

「い、いてて」
「見てたよ、あんた立派だな。命懸けで女の子を守るなんて」
「え、いや、そんな」

ケインは謙遜しながらも、ちらちらミンメイを見る。ミンメイはその様子が可愛らしくて思わず笑ってしまった。

「い、行くな、撃つぞ、本気だぞ」

明らかに自分のしている事に動揺しているテロリストが、震えた声で警告する。一瞬緊張した一同だが、それを庇うかの様に唐突に彼女が現れた。

「およしなさい。もう充分でしょう」

その声に、ミンメイはハッとなる。
早瀬未沙大佐。輝の元フィアンセ。
そして、いつまでも彼の心の中に影の様にその存在を残すヒト。
ミンメイは唇を噛みしめる。

早瀬大佐は堂々とテロリストに近付くと、ゆっくりと自動小銃に手を添えて銃口を降ろさせた。テロリストは益々狼狽える。

「あそこにいるのはリン・ミンメイさんよ。あなたの神は、リン・ミンメイさんを殺せと言うかしら?それがあなたの言う神の御意志なの?」

早瀬大佐はそう言うと、テロリストの腕に触れた。ドキリとしてテロリストが身震いする。

「あなたの心の神様に聞いてみなさい。そして何より、まず人として正しい行いが何なのか、それを考えてみて」

それだけ言うと、早瀬大佐はあっさりとテロリストから離れてしまった。ミンメイ達を振り向くと「さあ、皆さん行きましょう」と明るく声を掛けて来る。そして堂々と先頭を歩き、通路を引き上げて行った。
ミンメイやケインらはそれに黙って従った。

すげぇ、なんて度胸のある人なんだ

ケインはそう思って驚嘆の眼差しで早瀬大佐の後について歩いていたが、ミンメイだけは違う想いで彼女の背中を見つめていた。
その眼差しには複雑な感情と、ある種の疑惑の色がひっそりと含まれていた。


早瀬さん…もしかして…


人々は去り、残されたテロリストは呆然と立ち尽くしていたが、やがて所在無さげにその場を歩み去って行く。
そしてその数分後には強行突入した新統合軍の特殊部隊により射殺される事となる。




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