後日談 -後編-

夜間勤務を終えて、朝方に家へと帰って来た。
玄関のロックを解除し、静まり返った廊下を進んで誰もいないリビングへ入る。フライトジャケットをソファに放り投げると、大きく伸びをしてバスルームへと向かった。

軍服を脱ぎ捨て、朝日の中でシャワーを浴びる。ヒゲを剃り、酷い癖っ毛頭をトニックシャンプーで洗い流してスッキリした。バスタブには浸からずにさっと切り上げ、フカフカのバスタオルに筋肉質な身体を包み込む。疲労から一気に眠気が襲って来た。

タオルから、お日様の匂いがした。きっとまた少佐が留守の間に来てくれたのだろう。溜まりっ放しの汚れ物を洗濯して、天気の良い日に庭で干してくれるのだ。最近のシティの秋空は機嫌が良く、からりと晴れた高気圧が珍しく続いている。

部屋を見渡せば、どこも綺麗に整っている。勿論輝も部屋掃除はするが、そこまで綺麗好きという訳ではない。少佐が休暇のたびに訪ねて来てくれるお陰である。
輝はバスタオルを腰に巻くと、そのままキッチンに歩いて行きフリッジに手を掛ける。扉を開けば、こちらも中はキレイに整理されていて簡単な食材も買い込んであった。輝はボトルビールを手に取り栓を捻る。小気味好い音と共に手元に白い泡が溢れた。

静かに、家の中を見回す。
何となく自分とは違う息遣いを感じる。最近はそれが自分にとっての日常になりつつある。その事を、改めて考えてみた。
いつからか、自分の生活の中に一人の女性が入り込んでいる。今までこうした経験は無かった。
別に頼み込んで来てもらっている訳ではない。しかし、拒否する訳でもない。当然嫌では無かったし、ほんの少し特別な関係なのだという事も理解している。

裸に腰タオルのままソファへと腰掛ける。
ボトルビールに口を付けながらTVのリモコンスイッチを押す。けたたましい音声と共に、朝の情報番組が午前8時を告げていた。見慣れた顔のキャスターが「Goodmorning Vietnam!」と笑えないジョークを飛ばしている。
輝は窓の外に目を向ける。明るい朝の日差しがブラインド越しに室内へ差し込まれている。この不規則なサイクルの生活にももう慣れた。後は身体が睡眠を欲するがままに、ベッドで死んだように眠りこけるだけだ。

二口目のビールを口に付けると、TVから聞き慣れた音楽が流れて来た。反射的に顔を向ける。いつも夢見ていた、あの子の笑顔が画面いっぱいに弾けていた。
輝は目を細めてTV画面を見つめる。地方公演のプロモーション映像らしい。今、彼女は世界中を回って各地でコンサートを開いているそうだ。
彼女のこと、最近は詳しく知らない。知ろうとすれば、忘れかけた胸のキズが再び抉り出されるだけだから。


友達だと思ってたから…


浅はかな片想い。でも、自分にとっては精一杯の恋愛だった。しかしそれではダメなのだと思い知った辛く幼い、さほど遠くない過去の記憶。
部屋には明るい歌声が響き渡る。しかし正反対に輝の心は失恋した当時に引き戻されて、急激に塞ぎ込んで行く。
飲みかけのボトルビールをテーブルに置くと、輝はTVも消さずにベッドルームへと消えた。
シーツは、やはりお日様の匂いがした。


その日、輝は未沙と洗濯物を干す夢を見た。
延々と続く緑の草原に、真っ白なシーツの海が遥か彼方まで波を打って広がっている。
燦々と照り輝く太陽の下、輝と未沙は汗を拭いながら楽しそうに洗濯物を干していた。
たわいない会話を交わしながら。
どこまでも、いつまでも干していた。




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日常に溶け込んでる。
イイなぁ。
輝くん!
こんないい女性、他にいないぜ。
現実を鑑みても、返す返す羨ましいです。

色々な匂い

匂いの記憶って、何時迄も覚えてますよね。特に洗濯物やお布団のお日様の匂いって、穏やかな日常を思い起こしますよね。

友達だと…
といった後の輝の敬礼シーン。かっこいいですよねー。
あの時の表情や立ち姿は一端の軍人でした。少年から青年に進み出た感じがしました。で、去って行く彼を追うミンメイ…心の奥深くに後悔の芽ができたのかな。
と今は思ってます。

No title

やっぱり輝にとって、あの失恋は痛いですよね。
痛みは、どうやって解決したのかなー自分はー、とか考えてしまいました。

痛い輝にとっては、ふかふかのシーツは癒しですね。
ちょっと未沙の事も気になってしまいますね。

Re: これが「後日談」ですか

お耽美なお話かどうかは分かりませんが( ̄∀ ̄;)
TV版の一部と二部の間の話なので、どうしても輝と未沙の関係は微妙なままなんですよね〜。
この後、悪名高いデートすっぽかしとかが待ってる訳ですものねw
くわばらくわばら…

Re: タイトルなし

若い男の子が惚れてしまうのは、家庭的な子より刺激的な女のコなんでしょう( ̄▽ ̄)

> 日常に溶け込んでる。
> イイなぁ。
> 輝くん!
> こんないい女性、他にいないぜ。
> 現実を鑑みても、返す返す羨ましいです。

Re: 色々な匂い

そうそう!匂いって記憶に直結しますよね〜。
お日様の匂い、好きだな〜(*´∀`*)

…でもあのお布団の匂いって、本当は紫外線で死んだダニの死骸やホコリの匂いなんですよね…( ̄∀ ̄;)

27話は大好きです!
あの切ない感じが…びえりとしては切なさこそマクロスの魅力なんですううう〜゚(゚ノ∀`゚)゚。



> 匂いの記憶って、何時迄も覚えてますよね。特に洗濯物やお布団のお日様の匂いって、穏やかな日常を思い起こしますよね。
>
> 友達だと…
> といった後の輝の敬礼シーン。かっこいいですよねー。
> あの時の表情や立ち姿は一端の軍人でした。少年から青年に進み出た感じがしました。で、去って行く彼を追うミンメイ…心の奥深くに後悔の芽ができたのかな。
> と今は思ってます。

Re: No title

時間以外無いですよね〜。あとは熱中出来る何かを見つけて誤魔化すくらいしか〜。


> やっぱり輝にとって、あの失恋は痛いですよね。
> 痛みは、どうやって解決したのかなー自分はー、とか考えてしまいました。
>
> 痛い輝にとっては、ふかふかのシーツは癒しですね。
> ちょっと未沙の事も気になってしまいますね。
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