スノー・ウォーズ 3

「なんだ輝ぅ、お前知らなかったのか」

ヒョロヒョロと飛んでくる雪玉を避けながら、スカル大隊長のロイ・フォッカーが野太い声を上げた。
所々に造られた雪壁やパーク内のベンチ等に身を隠し、周囲の警戒を怠らない。そしてその足元では、癖っ毛を揺らしながらせっせと輝が攻撃用の雪玉を作っている。

「早瀬は意外に人気があってな、“氷の姫”なんてアダ名で呼ばれたりしてる。あのツンケンした所が逆に良いんだとよ。変わってるよな」

日に焼けた色黒な顔をサッと木の幹に隠す。一瞬遅れて雪玉が木にぶつかって四散した。フォッカーは手にしていた雪玉を構え直し、狙いすまして撃ち返す。少し離れた所でギャーと男の悲鳴が上がった。

「因みにタイトルの事は気にするな」
「え、何です?」
「いやこっちの話」

フォッカーはんんっと咳払いをする。

「お前と早瀬くらい仲が良ければ、当然知ってるもんだと思ってたがなあ」
「仲なんか良くありませんよ!」

輝は作りたての雪玉をポンポンとフォッカーに渡す。フォッカーは器用にそれらを捌きながらヒョイヒョイと新たに数人の犠牲者を生み出した。

この雪上のバトルロワイアルにおいて、チーム戦は大切な要素だ。大会実行委員のキム・キャビロフ中尉が肩をカクカクさせながら「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをして貰います」という不思議な挨拶で始まったこの情け無用の戦いは、文字通り「雪玉が当たったら負け」という一発勝負である。
特に「徒党を組んではいけない」ともルールに書いて無かったので、開始と同時に輝はレーサー時代からの先輩であるフォッカーに肩を叩かれていた。

「ん?そうか、俺はてっきりお前らはもうデキてるもんだと思ってたぞ!ガハハハ」

更に二、三人を葬りながらフォッカーは陽気に笑う。輝は頬を赤くしながら立ち上がって反論した。

「そ、そんな事してませんよ!何であんなオバさんなんかに…」
「そうか?早瀬も良く見ると器量好しだぞ」

今度はフォッカーが座って雪玉を作り始める。輝は木立の間から警戒して辺りをキョロキョロと見回した。

「そりゃあ口は悪いし、態度はデカいし、細かいし口うるさいしいつも怒ってるし…ん〜、お前よくあんな女に惚れたな」

「ほ、惚れてませんて!」

輝は肩を上げて大きく振りかぶる。ちょっと距離が遠過ぎたのか雪玉はターゲットの2メーターほど左に着弾した。相手は驚いて逃げて行く。

「俺には、心に決めた人が居るんです!」
「ミンメイか?振られたろ?」

あっさりと返されて、輝はガクリと項垂れる。フォッカーが慌てて輝の背中をバンバンと叩いた。

「元気出せ、輝ぅ!今度とって置きのいい所に連れてってやるから。な?
可愛い子ちゃん抱いて出すもん出しゃあ失恋の痛みなんざ…」

話の途中で、不意に輝は突き飛ばされる。そのままドサリと雪の上に倒れこんだ。
驚きつつも顔にかかる雪を払いのけ、文句を言おうとフォッカーを見上げたら…女遊びの大好きな色黒の先輩は被弾していた。輝を庇ったのだ。

「せ、先輩⁈」
「ふ…輝も幸せな奴だ。腕の立つ部下を持って…」
「先輩〜!」

輝はハッとなって木立の向こうを見る。木陰に揺れるマット調のミディアムヘア。素早い動き。
間違いない、あの“天才”野郎だ…!

「くっそぉ〜!」

輝は両手に雪玉を抱えて走り出す。左右からワラワラと敵が出現するが、ほとんど画面から見切れているレベルで輝とマックスに撃ち斃された。

「マックス、よくもやったな!」
「どうしたんです、一条君。急に臆病風吹かせちゃって」
「なにぃ!」

手玉の切れた二人は一斉にしゃがみ込み、雪玉を作り始める。一個、二個、三個。それはまるで荒野の決闘。早打ち自慢のガンマンが、互いのスキルを競っているかの様であった。

「マックス!」
「隊長、これだけは負けられない!」
「お〜い、隊長、マックス〜」

二人は同時に立ち上がり、雪玉を放った。ちょうどそこへ現れた柿崎が両側から雪玉を受けて「うわぁ!」とか何とか言いながら轟沈する。

「マックス、お前ヤル気無かったんじゃないのかよ⁈」
「隊長こそ、何でそんなに優勝したいんですか!?」
「な、何でって、そりゃ…」

言われて、輝はスタート前の事を思い出す。未沙にキスして告白すると言い出した町崎に、驚きながらも笑ってしまった。町崎なんかをあの未沙が相手にする筈はない。でも、告白の結果はどうあれ、この雪合戦で誰かが優勝したら、未沙が他の男にキスされるって可能性が…

改めてその事実に気がついた輝の耳に入って来る周囲のざわめき。

「早瀬中佐が…」
「あの氷の美姫の唇に…」
「絶対に手の届かない相手だからこそ…」
「キスして罵られたい…」

何故だか輝は、心の中が激しくザワついた。無性に胸の中を搔き乱したくなる不思議な衝動。
そして、あの時の事を思い出す。
ゼントラーディ艦隊に囚われの身となり、敵の総帥の前でしてみせた未沙との初めてのキス。
任務での、キス。

あの唇が。
高潔で清廉な、誰にも媚びないあの未沙の唇が、どこの誰とも分からぬ男に奪われようとしている…

「だ、ダメだ、そんなの…」
「?隊長、何がダメなんです?」

マックスに聞かれて、ハッと我に帰る輝。

「あ、いや、何でもないんだ、何でも。ハハハ」
「さぁ、隊長!マックス!いよいよ始まりだ、準備はOK?!」

柿崎に促され、輝はスタート地点に着く。ふと気になって隣りの柿崎に向き直った。

「なあ柿崎、お前、誰にキスするのか決めたのか?」
「う〜ん」

柿崎はニヤニヤしながら顎に手を置いた。

「まだ迷っとりますが、早瀬中佐なんか良いですね。前に隊長だけキスしてて、あん時俺はお預けでしたから!」

ニカッと笑う柿崎。その屈託のない笑顔に、輝は思わず柿崎の足を思い切り踏んづけていた。




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非公開コメント

輝の敵が多すぎる…(^◇^;)

頑張れ輝‼︎
絶対未沙の唇死守して、任務以外のKissだ‼︎

気にしません。

はい。タイトルのことは気にしません。
先輩の登場は大歓迎です。

そうですよね〜。柿崎はキスもステーキもお預けですものね。
柿崎、いい人で終わっちゃってますものね〜ぇ。少しはいいおもいしたいよね。

No title

あ、番号になった。
長く続けてください(^-^)

No title

びえりさんのお話面白いです。ちょとずつ小ネタが入っていて1つずつ心の中でつっこみながら読ませていただきました。マックスくんと柿崎くんは映画のパロディなんですね。

Re: タイトルなし

良く考えたら、任務以外のキスってTVでは描写ないですよね〜。

なんか戦後くらいに押し倒してそうなのに…

> 輝の敵が多すぎる…(^◇^;)
>
> 頑張れ輝‼︎
> 絶対未沙の唇死守して、任務以外のKissだ‼︎

Re: 気にしません。

komesaさんに言われて、柿崎が幸せになるお話を考えてみました…



まったく想像がつきませんwww
柿崎の幸せ話募集中www


> はい。タイトルのことは気にしません。
> 先輩の登場は大歓迎です。
>
> そうですよね〜。柿崎はキスもステーキもお預けですものね。
> 柿崎、いい人で終わっちゃってますものね〜ぇ。少しはいいおもいしたいよね。

Re: No title

雪合戦で引っ張るのは限界ですwww

michyさんの今のお話楽しみ〜^ - ^


> あ、番号になった。
> 長く続けてください(^-^)

Re: No title

ありがとうございます〜^ - ^

柿崎はやっぱり出オチがデフォルトです( ̄▽ ̄)
映画のマックスって嫌な奴ですよねw

小ネタは続きます…


> びえりさんのお話面白いです。ちょとずつ小ネタが入っていて1つずつ心の中でつっこみながら読ませていただきました。マックスくんと柿崎くんは映画のパロディなんですね。
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iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

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