HAPPY BIRTHDAY MINMAY at Thursday.

木曜日。舞台はTV局に移り、いよいよスタジオでリハが開始される。
僕らはアラスカ中央放送局へと乗り込み、第6スタジオに通された。そこではミンメイが本番で歌うバックセットがすでに設置されている。
見たところ雰囲気はジャズバーと言った風合いだ。なるほど、ブラックミュージックと言えばこれがテンプレートになる訳か。

「曲はちゃんと聴き込んで来た?」

オカマのチーフマネージャーの質問に、ミンメイはウンと小さく頷いた。それについては大丈夫、僕が保証する。何しろ昨日は遅くまでずっと歌合せに付き合わされたからね。お陰で今日は眠たいよ。
ミンメイの入りに気が付いたディレクターが、向こうから早足で飛んで来た。50代後半のコイツは年甲斐もなくミンメイの大ファンだったはずだ。ウキウキした表情で小躍りしながらミンメイの手を取る。

「ミンメイちゃん、今日はまた一段と綺麗だねぇ!惚れ惚れするよ」
「あら、ありがとうディレクター」

ミンメイは100点満点の営業スマイルだ。しかしさらりと手を引き抜くと、相手に気づかれない様に後ろ手のままスカートでその手を拭った。ああ、女の子って怖い。

「今日は局のお偉いさんも見学に来るらしいよ!みんな君のファンなんだ」
「ホント?嬉しいわ。うんと綺麗に撮ってね」
「勿論だよ!ミンメイちゃんのためなら局中の撮影カメラを全部ここに集めて…」
「あ〜ハイハイもう行くわよ」

1人盛り上がるディレクターを押しやると、オカマのチーフマネージャーはミンメイを引っ張ってズンズンとスタジオを横切って行く。本日の主役を休憩スペースに腰掛けさせると「ああいうのは危ないからあまり近づいちゃダメよ」と小声で囁いた。

「うん、大丈夫」

朗らかに笑うミンメイ。どこまで分かっているのか良く分からないが、まあディレクター風情がこの子に手なんかだそうものなら火傷どころじゃ済まないもんな。
カメリハは終わっていたらしく、音合わせにミンメイがすぐに呼ばれた。「ハ〜イ」と可愛らしく返事をして、ミンメイはオレンジ色のレザージャケットを肩から降ろす。それをパイプ椅子に掛けるとそのままテクテクとステージへと歩いて行った。「頑張って!」と後ろから声を掛けたら「ハイハ〜イ」と手を上げて返事をしてくれる。うん、今日は機嫌が良さそうだ。

「ミンメイ、機嫌良さそうですね」
「だといいけど」

オカマのチーフマネージャーにそう言うと、少し心配そうな返事が返ってきた。僕は不思議に思ってチーフを見るが、ちょうどそこに総合プロデューサーのマイケルズが現れて会話が中断する。マイケルズは今日は玉虫色のギラギラしたジャケットを羽織っていた。完全に悪趣味なマフィアのドンだ。

「ようボーリゾン。姫は調子良さそうだな」
「本心からそう思って言ってる?」

マイケルズの挨拶をチーフは冷たくあしらう。マイケルズは鼻で息を吐くと軽く肩を竦めた。

「なんだ、姫じゃなくてこっちの機嫌が悪いのか。ゲイのくせにあの日か?」
「シュープリームスはまあいいわ。あなたの意図も分かるわよ。でもあの曲を歌わせようだなんて許さないわよ」
「だから変えたじゃないか。そう怒るなよ」

チーフは冷たい視線をアラスカ一の大物プロデューサーに投げかける。このロシア人、時たま本気で人を殺してそうな眼をするから怖いよ。でも、曲を変えたって何の事だろう。

「60年代の公民権運動を、今のゼントラーディ問題に例えようだなんてイヤらしい発想だわ」
「そうかな。根本は同じ問題だぜ」

マイケルズはドッカとパイプ椅子に腰掛けた。禁煙のスタジオで平然とタバコに火をつける。

「あの時代は黒人なんてのは犬も同然だった。女たらしの牧師さんのお陰で今は大分マシになったがな。モータウン・ミュージックはあの頃の黒人どもの希望の星だったんだよ」
「虐げられる黒人が、今のお可哀想なゼントラーディ人って訳ね。ミンメイに現代のダイアナ・ロスをやれとでも言うの?」
「その通りだ」

マイケルズは煙をフーと吐き出す。前かがみになって急に真面目な顔付きになった。

「ゼントラーディ問題を本気で捉えてるヤツなんかTV界にはいない。俺だけが本気であの宇宙人どもの事を考えてやってるんだ」
「思い上がりも甚だしいわね。たかがTV屋が政治家にでもなったつもり?」
「政治屋なんかに世の中は変えられやしないさ。俺たちメディアだけが時代を作れるんだ」
「ご高尚ですこと」

チーフはフンと鼻で強く息を吐く。そしてドリンクのペットボトルやスナック菓子が置かれたテーブルの上に何やら書類を放り投げた。あれは…楽譜だ。

「その割には、ミンメイのゴシップネタに当て込んでこんな歌を歌わせようだなんて。下品な三流ワイドショーの考えそうな事だわ」

そう言ったチーフの眼の中は赤く燃えていた。明らかに怒っている。マイケルズは言い返さずに肩をすくめるだけだ。
僕は気になってその楽譜を覗き込んだ。曲のタイトルは…『Stop! In The Name Of Love』(行かないで、愛の名のもとに)


なるほど、なんとなく分かって来た。
マイケルズはくだんのゼントラーディ人差別の問題を、かつての黒人差別になぞらえているんだ。で、60年代のアメリカの公民権運動をこのSNLでやろうとしている。だから当局に怒られたとしても、いつもゼントラーディネタをスケッチに入れ込むんだ。
当時の黒人歌手であるシュープリームスを選んだのもその為なのか。そして現代の歌姫であるミンメイに、シュープリームスのようなシンボリックな活躍を期待してる訳だ。

しかしそこはやっぱりSNL。選んだ曲が『Stop! In The Name Of Love』(行かないで、愛の名のもとに)とは。

ミンメイが軍のパイロットと何やら三角関係になっているのをまさに皮肉った選曲だ。これを今のミンメイに歌わせるのはいくら何でもちょっと酷過ぎる。チーフが怒るのも無理はない。きっと話が来た時に、チーフが突っぱねて変えさせたんだろう。

僕はマイケルズを見る。SNLのドンは批判などどこ吹く風といった感じで、涼し気な顔をしていた。まあ、こんな事でペコペコするような神経だったらこの番組を続けてなんか来れなかっただろう。茶化しているようで、彼は彼なりに世の中に問題解決のためのアプローチを発信しているのだ。やり方はゲスいけれど。
僕はチーフとマイケルズを交互に見やった。決して仲が良いという訳ではない二人だけれど、今は特に険悪な雰囲気だ。僕は巻き込まれないようにソロソロと後ずさりする。が、マイケルズに「おい、灰皿探してきてくれ」と声を掛けられてしまった。はいはい、タバコ吸うなら灰皿ぐらい自分で用意しておけよ…

「ふ〜ん」

不意に伸びてきた手がテーブルの上の楽譜を掴んだ。ハッと気が付いたオカマのチーフマネージャーは慌てて楽譜を取り上げようとしたが、その手…ミンメイの手はひょいと躱して空振りに終わる。さっさと音合わせを終えて戻って来たミンメイは、手にした楽譜をしげしげと眺めやった。

「本当はこれを私に歌わせたかったわけ?」
「違うのよミンメイ。そんなの歌わなくていいの」

チーフは優しい笑顔でミンメイを宥める。この人、本当にミンメイが好きなんだな(オカマだけれど)。
ミンメイはマイケルズを見る。マイケルズは悪びれた様子もなくミンメイに肩をすくめて見せた。

「いいわよ、歌っても」
「ミンメイ!」

チーフがミンメイの手から楽譜を取り上げた。でも、ミンメイは特に動じた様子もなくまっすぐにマイケルズの眼を見て言葉を放つ。

「それがプロデューサーのご要望なんでしょう?期待に応えるのがショー・ビジネスだわ」

「さすが俺の姫君だ」

マイケルズは満面の笑みで片膝を付き、ミンメイを崇めるような格好をする。ミンメイはそれを軽くいなすと、心配そうな表情のチーフに向き直った。

「平気よチーフ。たかが歌だもの」
「たかがって、あなた…」
「フフ、みんな気を使いすぎなのよ」

ミンメイは何でもないわとでも言いたげに笑った。それはいつも通り華やかで可愛らしい笑顔だったけれど、見ている僕の心にはほんのちょっぴり痛ましさが浮かんで消えなかった。




テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

HAPPY BIRTHDAY MINMAY at Wednesday.

サタデー・ナイト・ライブ、通称SNLは生放送のコメディショーだ。
その週に起きた出来事を皮肉ったスケッチ(コント劇)を中心に、ニュース番組風のコーナーやゲストのトークショーなどが主なプログラムを占める。扱うネタのジャンルは多岐に渡り、政治経済事件事故、倫理ネタから不倫ゴシップまで基本的に何でもござれだ。

「ゼントラーディネタはヤバいですよ」

それでも禁忌はあるらしい。ライターの1人が手にしたA4サイズのレポート用紙を放り投げる。レポートはヒラヒラと厨を待って、ちょうど僕の前までたどり着いた。手に取ろうとしたら横から伸びた手がさっと目の前で掻っ攫う。僕は恨みがましい目を向けるが、向けられた方は知らん顔だった。
我がスタジオ・イングリッドバーグマンのチーフマネージャー。この男こそチーム・ミンメイのドン、Mr.ボーリゾン・ボギンスカヤだ。銀髪白顔のロシア人。見た目以上に性格は冷たくてドライである。その特徴的な蒼氷色の眼がさっとレポートの表面を走り、一瞬で内容を把握すると僕とは反対側の隣人にそれを手渡した。ちょっとちょっと、僕には見せないんかい。
反対側でそれを受け取ったのは「世紀のアイドル」僕らのリン・ミンメイだ。ミンメイは対象的にゆっくりとレポートを読み、少し間を置いてクスクスと笑った。たったそれだけなのに、その様子がなんとも可愛らしくてミーティングルームの誰もが思わず頬を赤らめる。

「これ以上当局を突っつくのはヤバいです。また呼び出しをくらいますよ」

先ほどのライターが同じような発言をする。SNLの打ち合わせでは良く見る顔なので多分レギュラー作家なのだろう。
しかしその対面の若そうなライターが立ち上がって反対した。どうやらこのスケッチ(コメディネタ)の作者らしい。

「政府の検閲を恐れてなにがTVマンですか!世の中を漏らさず笑い飛ばす。それこそSNLの信条でしょう?!」

なんだかリベラリストの演説みたいな言葉だった。きっとこの熱血漢な若者とはお友達にはなれないだろうなぁと僕はぼんやりそんな事を思い浮かべた。
水曜日の今日。僕らはマイケルズの個人事務所で台本の読み合わせをしに来ていた。昨日までにライター陣が上げてきた50本近いネタを今日一日で10本前後まで絞り落とす。その厳選されたネタを持って明日からのリハーサルに挑むのだ。その週の生放送2時間分のネタを決める、とっても大事なミーティングの日である。
本来ならミュージックゲストのミンメイには関係のない会議だったが、今回はミンメイも一部のスケッチに参加する事が決まっていて、そのネタ定めに我々もやって来たという訳だ。
でも、僕には素朴な疑問があった。

「なんでゼントラーディネタはダメなんです?」

当然の質問だろう。少なくとも僕はそう思った。でも隣りのロシア人…きっと寒い国に居すぎて心まで凍っているであろうチーフ・マネージャーは冷めた眼で僕を見るのだ。

「あんたそんな事も知らないの?」

「はい知りません」とはさすがに恥ずかしくて言えなかったので、僕は照れたように愛想笑いをする。チーフは薄目で僕を睨むが、そこに予想外の質問が降ってきて助かった。反対側からミンメイが「なんでダメなの?」と質問をかぶせて来たのである。チーフ・マネージャーは(因みにこの人オカマだ)途端に目尻を下げてミンメイに振り向いた。

「政府がゼントラーディ人への差別撤廃を方針に掲げてるからよ。TV報道で必要以上に彼らを貶めるような事は言っちゃいけないの」

チーフの気持ち悪い猫なで声に、ミンメイは「へー」と眼を丸くしていた。僕も知らなかった。そんな大人の事情がTVの裏にあったなんて。
実際、この世界でゼントラーディ人の犯罪事件は多い。地球での生活に馴染めずに反社会的な行動を取るゼントラーディ人も増えていると言う。かつてのテロリスト・カムジンによるシティ襲撃事件のような大規模な暴動に繋がると大変だから、人々が不安に思うのも当然だと思うけどな。

「みんな仲良くしなきゃダメって事ね」
「そうそう。身も心も仲良くしろって事ね」

チーフが言うと違う意味に聞こえてくる。僕はミンメイが手放したレポート用紙を手を伸ばしてサッと奪い取った。今度こそ内容を確認する。ふむふむ、あ、これ本当にそういう内容だったのか。
レポート用紙に書かれたネタは、性知識の無いゼントラーディ人が売春宿で大騒動を巻き起こすという物だった。まあ、こういう事件は確かに現実に起きているらしい。でも確かにゼントラーディ人にしてみれば、決して面白いネタとは言えないだろう。

「政府は人類とゼントラーディ人との融和政策を進めているもの。いずれは同化するんだからケンカなんかしてても仕方ないのよ」

チーフの言葉に、両脇の僕とミンメイはちょっとビックリする。え、って言う事はあいつらと血が混じるって事ですか…?!

「え〜っと…つまりそれって、人類がゼントラーディ人と同化するって事ですか?」
「あんたまともに質問するだけの語彙力もないのね」

僕のオウム返しに、オカマのマネージャー、つまりオカマネージャーは憐れむような目線を返して来た。いや、僕そういうの苦手なんで。

「どのみち地球人だろうとゼントラーディ人だろうと、DNA的に違いがないのは科学的に証明されているんだから。同化もなにも最初っから同じ人間同士なのよ」
「へ〜、あんなオレンジ色の髪の毛した連中がですか」
「フェオメラニンとユーメラニンの割合の違いでしょ。あんたがちょっかい掛けてるここの受付の子だって赤毛じゃない」

チーフの台詞に、周りが一斉に僕を見る。僕は「あ〜」とか「いやその」とか言って頭を掻いて誤魔化した。

「その、え〜と、同化賛成」

ミンメイがまたクスクスと笑う。ああいいさ、そうやって僕を笑い者にしていればみんな平和なんだ。

「ゼントラーディ人に肉親を殺された人は大勢いる。これはとても難しい問題なんだ」

レギュラー作家が渋い顔で話を戻す。若いライターはそれでも食い下がった。

「ホモ・サピエンスはネアンデルタールや他の原人ともDNAを交換して進化して来た。今さらゼントラーディ人だけを特別扱いする必要なんかありませんよ!」
「ここは大学の講義の場じゃないぞ」
「政治の場でもないでしょう。当局が怖くてTV屋なんか務まりませんて!」

なんか議論が白熱してきた。僕は一番奥の席に座るマイケルズを盗み見る。SNLの総指揮官は、ライター達のやり取りをニヤニヤと楽しそうに眺めているだけだ。
そう言えば聞いた事がある、マイケルズがちょくちょく総務省に呼び出しをくらってるって。アレはもしかしてこういう件が原因だったのか?だとしても、彼の顔色を見るにまったく懲りた様子は見られない。
喧々囂々のミーティングはなかなか終わりそうにない。僕は少し退屈してきて、トイレにでも行こうかと腰を浮かしかけたその時。「ハイ」と手を上げて発言を求めた者がいた。我らがアイドル、リン・ミンメイだ。

「ど、どうぞ」

レギュラー作家に促されて、ミンメイは頷く。スッと立ち上がると、僕の手元のレポート用紙をサッと奪い返した。

「このお話、シェークスピア風にアレンジしたら?」

え?と大勢の人間が反応した。ミンメイはレポート用紙をパンパンと叩き、その大きくてキラキラしたお目々で室内のみんなを見渡した。

「売春宿のお話なんかじゃなくて、ゼントラーディさんと普通の地球人女性との恋話にするのよ。それこそ『ロミオとジュリエット』みたいにしたらいいわ。ああロミオ様、あなたは何故ゼントラーディ人なの」

ミンメイは苦悩する女性を真似てポーズを取った。一同はあっけに取られる。
すると大きくド派手な拍手がバチバチと室内に響き渡った。奥の席でずっと黙って話を聞いていたマイケルズだ。

「いいな、それ!採用!!」

マイケルズは立ち上がり、モッサモサの口ひげを揺らしながらミンメイを指差した。

「そのジュリエット役、ミンメイがやれ!」

「ご用命とあらば」

ミンメイはハーフスカートの両端をつまむと、優雅に一礼して見せる。まるで本当に中世のお姫様になったみたいな、美しい仕草だった。

こうして、ミンメイが出演するスケッチはあっさりと決まった。それも彼女自身が考えたネタで。




テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

HAPPY BIRTHDAY MINMAY at Tuesday.

ローン・マイケルズはアラスカで一番有名なプロデューサーだ。
アラスカ最大のTVショー「Saturday Night LIVE」の全てを取り仕切っていて、戦前から40年以上続いているこの老舗番組の現在の顔役でもある。
一時期「マイケルズのやり方は古い」と経営陣からクビを言い渡された事がある。しかしローンのいなくなったSNLの視聴率は低迷し、結局頭を下げて現場にカンバックして貰ったという経緯がある。それ以来ずっと、土曜日23時からの2時間はこの男の独壇場となっている。

マイケルズは50代半ばの壮年男性だ。まるで鉄人レースとも称される”週刊生放送”のSNLを2年以上に渡って引っ張り続けている。合言葉は「戦後の世界に活力を」。何しろ本人が活力の塊りみたいな存在なので説得力はあると思う。今日も気力も体力も満ち満ちた顔で僕らの前に現れた。

「ようお姫様」

陽気に片手を挙げて部屋へ入って来るローン・マイケルズ。ふっさふさの口ひげに浅黒い肌。紅茶色の高そうなスーツにコーヒー色の高そうな尖った革靴。初見でどこそこのマフィアのドンだと紹介されればきっと信じてしまうだろう。アラスカ中央放送局においては今や彼を上回る大物はいない。

「なんだ、今日は機嫌悪そうだな」

ミーティングルームの一番奥の席で、不機嫌そうにモバイルフォンを弄っているミンメイ。そんな彼女にマイケルズは豪快に笑いかけた。
多くの売れっ子を排出して来たSNLの総合プロデューサーは、対面相手の心の動きを決して見逃さないという噂だ。ウチのオカマのチーフマネージャーからも「マイケルズの前では、彼の機嫌よりもミンメイの機嫌に気を配ってちょうだい」とよく言いつけられていたものだ。まあ、さっそく失敗している訳だけれども。
マイケルズの呼び掛けに、しかしミンメイは返事をしない。薄茶のティアドロップ型サングラスを掛けていて、モバイルフォンをいじりながら顔をあげようともしなかった。マイケルズは隣りの僕に視線を向ける。無言で「どうしたんだこりゃ」と聞いてくるが、原因などさっぱり分からない僕はへへへと愛想笑いを返すだけだ。マイケルズは小さく舌打ちしてズカズカとミンメイの近くまで歩いてくる。えっと、今の舌打ちってもしかして僕宛て?

「よう、プリンセス。可愛いお顔をみせてくれよ」

それはまた、ギラついたおっさんが高飛車な若い娘を口説いているかのような光景だった。しかし片方はアラスカで最高の視聴率を持つ演出家で、もう片方は人類の救世主と来たもんだ。豪華な取り合わせに僕は少し場違いな自分の立場をほんのり自覚した。
ミンメイはサングラスから上目遣いで、すぐ横に立つマイケルズを見上げる。あまり歓迎されている雰囲気でもないのは誰が見ても明らかだ。しかしこういう気難しい場面を切り抜ける術を、この大物プロデューサーは持っている。だからこそマラソンレースのような週刊生放送をトラブルなくずっと続けていられるのだろう。
マイケルズは突然片膝を着くと、大きく手を広げて目を見開いた。そして朗々と大声を張り上げる。

「おお、あの窓からこぼれる光は何だろう?!向こうは東、とすれば…ミンメイ、君は太陽だ!」

その下手くそな芝居がかった語り口調に思わず僕はプッと吹き出す。するとマイケルズにジロリと怖い目で睨まれた。
しかしミンメイもすぐにぷっと吹き出してくれたので助かった。マイケルズはニヤリと笑うとミンメイの手を取って恭しく頭上に掲げる。

「シェイクスピアだわ。第二幕ね」
「ほう、気が付くとは感心感心」
「ローンが読めって言ったんじゃない」
「そうだ。シェイクスピアは全ての演出の基本だ。何もかもが詰まってる」
「でも古典でしょ?TVでやってるのは時事ネタなのにね」
「古典に新鮮なソースを掛けるんだ。だからいつまでも飽きない旨さなのさ」

ようやく角の取れた表情のミンメイに「座っていいかい?」と尋ねるマイケルズ。ミンメイは一度軽く肩を竦めてから「ええ、どうぞ」と促した。マイケルズは余裕たっぷりの態度で席に着く。
ここはシティのビジネス街にあるマイケルズの事務所だ。SNLの企画は毎週この事務所から生み出される。
月曜にライターチームが集まりキックオフミーティング。火曜に企画会議。水曜が台本の読み合わせで、木曜にはリハーサルから一部撮影にも入る。金曜が本リハで土曜日が本番という流れだ。もちろんこれらは実働時間であって、スタッフ達の頭の中はシーズン中は24時間SNLの事でいっぱいである。ああ、僕本当にここのスタッフじゃなくて良かった。

ミンメイはミュージックゲストなので、火曜日の今日にマイケルズとの打ち合わせだ。それでこうして彼の個人事務所へやって来たのだが、ライター達のスケッチの書き上げが押しているらしく、僕とミンメイは少しだけ待たされた。でもミンメイの不機嫌はそれが原因じゃない。だってここに来る前、朝から不機嫌だったもの。

「ねえローン。なんで今度の曲はこれなの?」

ミンメイは不満そうにテーブルの上のタブレットをマイケルズに押しやる。液晶画面には本番でミンメイが歌う予定の楽譜が浮かび上がっていた。ローンは黙ってタブレットを受け取ると、口ひげを撫でながら「なんだ、イヤなのか?」と逆に聞いて来た。

「イヤじゃないけど…なんでこんな古い歌なの?」

ミンメイは唇を尖らせる。まあそりゃミンメイにだって持ち歌はあるし、若い子なんだから若い子向けの歌も歌いたいだろう。60年代のヒット曲となればミンメイも僕もこの世に生まれてさえいない。マイケルズだってガキンチョの頃だった筈だ。
しかしマイケルズは慌てず騒がずタブレットを操作する。そして画面をミンメイに向けて見せた。

「リリックは読んだか?」
「読んだわ。それが何?」
「読んだか。なら結構」

マイケルズはそれだけ言うと立ち上がった。そしてあっさりと部屋を出て行く。僕は慌てて後を追いかけた。

「え?え?打ち合わせ、そんだけ?もう終わり??」

マイケルズはゴミでも見るような目を僕に向ける。あ、いや、そういう目で見ないで。

「小僧。たまには顔を見せろとボーリゾンに言っとけ。ああ、それとミンメイ」

呼ばれて、ミンメイがゆっくりとサングラスをずらす。形の良い大粒な瞳がようやく姿を現した。
マイケルズは健康的な白い歯を見せて脂ギッシュに笑う。

「土曜日、誕生日だな。本番後のパーティー楽しみにしとけよ」

おっさんは親指をグッと立てるとそのまま廊下へと消えて行った。僕は「何も決まっていないのに」とオロオロしてしまうが、当のミンメイはサングラスを掛け直して「じゃ、帰ろ」と平然と帰り支度を始めている。

「なんだよ〜、みんなもっと真面目に仕事しようよ〜」

僕の呟きなど気にならないミンメイは「さ、帰ろ帰ろ」と真顔で僕の背中をグイグイ押した。
こうしてSNLの準備は過ぎて行くのである。




テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

HAPPY BIRTHDAY MINMAY at Monday.

「シュークリーム?」

小首を傾げてそう聞いて来るミンメイの様子が可愛らしくて、僕は思わず胸をときめかせてしまった。
イカンイカン、僕は自分の頭をコツンと小突く。お前は彼女のマネージャーだぞ。あの“人類の救世主”リン・ミンメイの栄誉ある担当マネージャーなんだ。

…サブだけれど。



僕の名はローランド・カムリ。シティの芸能事務所スタジオ・イングリッドバーグマンのオフィシャルスタッフとして毎日忙しい日々を送っている。
ウチの会社は、あの宇宙戦争で人類を救った「世紀のアイドル」リン・ミンメイも所属する大手の芸能プロダクションだ。選りすぐりのスタッフが「チーム・ミンメイ」として伝説のアイドルの芸能活動を微に入り細に入りサポートしている。

オカマのチーフマネージャーを筆頭に、背がデカくて馬鹿力のスタイリスト、レズビアンの変態ダンサー、その他諸々とにかくキャラが濃くて危険で厄介な一癖も二癖もある連中ばかり。
その中で唯一の良識派であるこの僕としては、世間の枠組みから外れてしまいがちなこのアナーキーな連中をうまく正しい方向へと導いてやらねばならない使命がある。

何せミンメイと言えば人類にとってもはや伝説の存在だ。彼女に尽くすことは人類社会への貢献と言っても過言ではないだろう。そんな自分の仕事を誇りに思う今日この頃である。お母さんやりましたよ。あなたの息子はこんなに立派な大人になりました。

「あ〜、えっとね」

僕は手元の資料を確認する。タブレットの液晶画面には『The Supremes』と書いてあった。

「シュークリームじゃなくって、シュープリムス…スプリームス?かな??」

「アメリカ訛りね。これ、シュープリームスって読むんじゃない?」

ミンメイがタブレットを覗き込んで来る。僕らは今、タブレットの置かれたテーブルを挟んでそれぞれのソファに腰掛けていた。僕の正面にいるミンメイがテーブルのタブレットを覗き込むと、当然ながら下向きになる訳で…あ〜、その、胸元の辺りがほら…

今日のミンメイは私服だった。ショート丈のブラックパーカーに、ベルト&ジップのアクセントが付いたパンク調のグレンチェック柄パンツを実にカジュアルに格好良く着こなしている。
が、問題はアウターの下だ。チラリと見える対照色の白シャツは深いVネックになっていた。ちっちゃなゴールドのハート型ペンダントがぷらぷらと揺れるその向こうには、豊かな肉球によって陰影が刻まれた神秘の谷間がその雄大な光景を覗かせている。

リン・ミンメイと言えば、そのあどけないルックスや言動から子供っぽいイメージがある。しかしいつも仕事について回る僕は知っている。ミンメイの体はしっかりと女らしく発育していて、マネージャーの僕でさえグラビア撮影時などは目のやり場に困ることがチラホラあるのだ。

果たして本人にその自覚があるのかないのか。今も無遠慮に前屈みになっていて、重力に引かれた2つの双丘が織りなす美しき谷間がくっきりはっきりと…

そのあまりにも赤裸々な光景に気を取られてうっかり油断をしていたみたいだ。僕の視線に気が付いたミンメイはムッとした顔でゆっくりと身体を起こした。プーっと頬を膨らませると、ぷんとソッポを向いてしまう。

「ふ~ん。オタク、そういう人だったの。知らなかったわ、まったく」

「あ、い、いやいや違う違う」

僕は青くなって否定する。この僕はかのスタジオ・イングリッドバーグマンのオフィシャルスタッフだ。アラスカでも一、二を争う芸能事務所の一員である。
大切な商品であるタレントをそんな目で見ている訳がない。…まあ無い事もないけど。

ていうかこの子は割りといつでも無防備過ぎるのだ。股上の浅いスキニーデニムの時も平気でしゃがみ込んだりするし、豊満な胸元を強調したタイト目のニットなんかで誰彼構わず男性の二の腕にしがみついちゃったりする。そりゃ誰だって勘違いするっちゅうねん。こういう小悪魔的な所はちゃんと治して欲しいと思う。まあ僕の時は別として。

「ホ、ホラ、これだよこれ。今度歌う原曲」

僕は不祥事を誤魔化そ…じゃなくて大事な仕事の話をしようと、咳払いをしながら手元のタブレットをミンメイに差し出した。液晶画面のPLAY MUSICを押せば、タブレットのステレオスピーカーから軽快なリズムイントロが流れ始める。すぐにハリのある女性の歌声がかぶさった。


I need love, love
To ease my mind
I need to find, find someone to call mine
But mama said

You can’t hurry love
No, you just have to wait
She said love don’t come easy
It’s a game of give and take
You can’t hurry love
No, you just have to wait
You got to trust, give it time
No matter how long it takes

But how many heartaches
Must I stand before I find a love
To let me live again
Right now the only thing
That keeps me hangin’ on
When I feel my strength, yeah
It’s almost gone
I remember mama said:

You can’t hurry love
No, you just have to wait
She said love don’t come easy
It’s a game of give and take
How long must I wait
How much more can I take
Before loneliness will cause my heart
Heart to break?


黙って聞いていたミンメイがポツリと呟く。

「…音が古い」
「そりゃそうだよ、これ1960年代の曲だもの」
「なんでまた今回はこんな古い曲なの?」
「さあ?それはマイケルズに聞いてよ」

僕は「知りません」とばかりに肩を竦める。ミンメイは「ふーん」という顔をして指を伸ばし、タブレットを弄り出した。多分リリックをチェックしているんだろう。

ミンメイは今週末、アラスカ最大のビッグ・プログラム「Saturday Night Live(サタデーナイトライブ)」通称SNLに何度目かのミュージックゲストとして出演する予定だ。

SNLはその名の通り、土曜の夜に繰り広げられる生放送の番組である。毎週新鮮な時事ネタを放り込んでくるスケッチ(コメディ)&ミュージックショーで、月〜金で仕込みをして土曜日に生放送という気狂いじみたハードスケジュールを八ヶ月サイクルでこなして行く。まさにTV界の鉄人レースだ。

今日は月曜日で、明日の火曜日には総合プロデューサーのローン・マイケルズと歌の打ち合わせをしなくてはならない。
その準備として今、マイケルズから出された課題曲の確認をしているという訳だ。
事務所のミーティングルームでは、僕とミンメイがこの半世紀も昔の古臭い曲を前に頭を捻っていた。

「まあ、意図は明日聞けば良いんじゃない?取り敢えず歌合わせしとこうか」

「…うん」

ミンメイはまだ納得していない顔をしていたけれど、そこは彼女もプロだ。曲取りが始まれば真剣な表情になって自分の仕事に取り組んでいた。

…そして意識せず、たまに前屈みになる。

僕はその度に興奮を抑えるのに精一杯だった。





to be continued for Tuesday.

テーマ : 懐かしいアニメ作品
ジャンル : アニメ・コミック

Future Funk

あ、どうもびえりです(´・ω・`)
毎日ほそぼそと生きています。

皆さんは「Future Funk」というジャンルをご存知でしょうか?
最近【soundcloud】を中心に流行しつつある新しい音楽です。

簡単に言うと、80年代シティ・ポップの雰囲気でディスコ・サウンドを再現したようなオリジナルミックスなんですが、ミックスしているのがほとんど外国人(アメリカ・韓国など)なのに日本語の曲がやたらと多いんです。

PVに使われるのも80~90年代のアニメーションが多くて、びえりのようなアラフォー世代には見覚えのある映像がちらほらと(*´∀`*)



輝…じゃない、ひかるちゃん



みんなジャパニメーション好きなんですね~
クラシックな作品ばかりというのがまた、当時の空気感へのリスペクトを感じられて気持ち良いですね(*´ω`*)
ちょいバブル風味も混じっていたりしますがwびえりの場合バブルはちょっと終わるのが早すぎました(ジュリアナでスカート覗きたかった)


色んなミキサーがいる中で、特にびえりがお気に入りなのがこの「Classic FUNK no Music」さんです。
動画のチョイスもびえり好みですし、もしかしたら年代も近いのかな~なんて思います。




ある意味バブリーなダーティペア。このユリはTV版とは違うらしいです。なんのこっちゃ




これは何だか分からん。バックトラックは宇多田輝…じゃないヒカルのFINAL DISTANCEですね。




こういうの本当に時代のセンスを感じますね。




びえり少年の憧れのマドンナでした(*´ω`*)




これは特に切なくておススメ!長いので作業用BGMなどにピッタリです( ̄▽ ̄)




ちなみに「マクロスMACROSS 82-99」さんというFuture Funkで有名なDJもいらっしゃいます。

macross-main1.jpg
FROM MEXICO


来日インタビューの様子


残念ながら、名前と違ってマクロスの曲は特にやってないです(;´∀`)
誰かそういうの好きな方、是非流行りに乗って「私の彼はパイロット」をミックスしていただけませんかヾ(*´∀`*)ノ

soundcloud】へのミンメイソング☆彡のアップ、お待ちしてま~す!




テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

カテゴリ
プロフィール

びえり 

Author:びえり 
iPhoneで書いているので「輝」と打てません

FC2の機能がよく分からないので、何か変だったら教えてください(´・ω・`)

最新記事
最新コメント
くせっ毛の飛行機乗り
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR